FDAが進行膵臓がんの治療にイリノテカンリポソーム注射剤を承認

米国食品医薬品局(FDA)ニュース

米国食品医薬品局(FDA)は本日、ゲムシタビンベース化学療法の治療歴がある進行(転移)膵臓がん患者の治療を目的として、フルオロウラシル+ロイコボリンとの併用下でのイリノテカンリポソーム注射剤(商品名:Onivyde)の使用を承認した。

米国国立がん研究所(NCI)によれば、2015年に米国では48,960人が新たに膵臓がんと診断され、ほぼ同数の人(40,560人)が膵臓がんで死亡すると推測される。膵臓がんは早期診断が難しく、特に、がんが他の部位へ広がり(転移性疾患)、腫瘍部分を手術で除去できない場合には治療選択肢は限られる。

FDA医薬品評価研究センター血液腫瘍製品室長 のRichard Pazdur医師は、次のように話す。「薬剤申請を審査するFDAスタッフの多くは臨床医でもあるため、まだ治療法がない患者さんのために新たな治療法提供を推し進めることができた時にはひときわやりがいを感じるものです。イリノテカンリポソーム注射剤の(承認申請に対する)優先審査指定によって、患者さんは延命に役立つ薬剤をより早く利用できるようになるでしょう」。

FDAは、イリノテカンリポソーム注射剤に対して優先審査とオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定を認めた。優先審査は、承認されれば、深刻な状態にある患者の治療の安全性または有効性に顕著な改善をもたらすと思われる薬剤の承認申請に対して認められる。オーファンドラッグ指定は、希少疾患用医薬品の研究開発の支援や促進を目的として、税額控除、審査費用免除、オーファンドラッグ独占権資格などの優遇策を提供する。

イリノテカンリポソーム注射剤の有効性は、化学療法剤ゲムシタビン単剤またはゲムシタビンベース療法を受けた後でがんが増殖した転移性膵臓腺がん患者417人の3群ランダム化非盲検試験によって実証された。この試験の目的は、イリノテカンリポソーム注射剤+フルオロウラシル/ロイコボリン、またはイリノテカンリポソーム注射剤単剤を投与された患者において、フルオロウラシル/ロイコボリンを投与された患者と比べて生存期間が延びるかどうかを確認することであった。イリノテカンリポソーム注射剤+フルオロウラシル/ロイコボリン投与患者の全生存期間中央値は6.1カ月であったのに対して、フルオロウラシル/ロイコボリンのみを投与した患者では4.2カ月であった。イリノテカンリポソーム注射剤単剤投与患者については、フルオロウラシル/ロイコボリン投与患者と比較した生存改善は認められなかった。

さらに、イリノテカンリポソーム注射剤+フルオロウラシル/ロイコボリン投与患者は、フルオロウラシル/ロイコボリン投与患者と比較して無増悪生存期間が長かった。イリノテカンリポソーム注射剤+フルオロウラシル/ロイコボリン投与患者の中央値は3.1カ月であったのに対して、フルオロウラシル/ロイコボリン投与患者では1.5カ月であった。

イリノテカンリポソーム注射剤の安全性については、イリノテカンリポソーム注射剤+フルオロウラシル/ロイコボリン、イリノテカンリポソーム注射剤単剤、フルオロウラシル/ロイコボリンのいずれかの投与を受けた患者398人で評価した。イリノテカンリポソーム注射剤治療で最も多くみられた副作用は、下痢、疲労、嘔吐、吐き気、食欲減退、口内炎、発熱であった。イリノテカンリポソーム注射剤投与の結果、感染症と闘う細胞数の減少(リンパ球減少症、好中球減少症)を伴うこともわかった。イリノテカンリポソーム注射剤投与患者において、好中球減少症に伴う敗血症による死亡が報告されている。

イリノテカンリポソーム注射剤のラベル表示では、重篤な好中球減少症および下痢のリスクに関する枠組み警告を記載し、医療従事者に注意を喚起する。イリノテカンリポソーム注射剤は、転移性膵臓がん患者の治療に対して単剤での使用は承認されない。

イリノテカンリポソーム注射剤onivydeは、米国マサチューセッツ州ケンブリッジのMerrimack Pharmaceuticals社が販売する。

翻訳担当者 山田登志子

監修 北村裕太(内科/東京医科歯科大学医学部附属病院)

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