50歳未満の成人における膵臓がんに関する知識ギャップ
50歳未満の膵臓がん罹患率は上昇しているが、ほとんどの人が、膵臓がんは高齢者だけが罹患する病気であり、そのリスクを減らすためにできることは何もないと思い込んでいることが、オハイオ州立大学総合がんセンター アーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所(OSUCCC-James)が実施した新しい調査によりわかった。
今回の調査では、回答者に膵臓がんの危険因子について尋ねた。50歳未満の成人の半数以上(53%)は、この病気の初期徴候や症状に気づかないと答え、3分の1以上(37%)は、膵臓がんのリスクを減らすためにできることはないと考えている。また、3分の1以上(33%)は、膵臓がんのリスクがあるのは高齢者だけであると考えている。
「しかし、膵がんの罹患率は毎年約1%ずつ上昇しており、40歳代の罹患率が非常に高くなっています。これは懸念すべき傾向であり、原因を解明するため研究が必要です」と同がんセンターの分子発がん化学予防プログラム共同リーダーであるZobeida Cruz-Monserrate博士は言う。
変えられる危険因子と変えられない危険因子
Cruz-Monserrate氏によると、膵臓がんのリスクを減らすには、健康的な体重を維持することから始められるという。国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所によれば、アメリカ人の3人に1人は太りすぎで、5人に2人以上は臨床的に肥満である。肥満だけで、膵臓がんの生涯リスクは20%増加する。
一方で、BRCA遺伝子、リンチ症候群などを含む遺伝リスク(家族を通じて受け継がれる遺伝子マーカー)と関連する膵臓がんは、アメリカがん協会(ACS)によると、わずか10%であると推定される。
「自分の遺伝子は変えられませんが、ライフスタイルは変えられます。ほとんどの人にとって、肥満は自分の力で変えられるものです。また、肥満は2型糖尿病やその他のがん、心血管系疾患のリスクも高めます」とCruz-Monserrate氏は言う。
ACSの推計によると、2024年には66,000人以上のアメリカ人が膵臓がんと診断され、5年生存に達するのは13%未満である。
膵臓がんの生涯リスクを低下させると考えられているその他の調節可能な生活習慣因子には、アルコール摂取の制限または禁止、定期的な適度な運動、赤肉や加工肉を制限した植物ベースの食事などがある。
調査回答者の半数以上(54%)が、膵がん検診を受けるべきかどうかを判断するのに、遺伝子検査が役立つことを知っていた。
スクリーニング、予防、治療の研究
オハイオ州立大学(OSUCCC-James)では、膵嚢胞の低侵襲なスクリーニングなど、膵臓がんの早期徴候をスクリーニングする方法の開発や、糖尿病や慢性膵炎と膵臓がんリスクの関連の解明といった研究を進めている。
しかし、研究によって明らかになるのを待たずとも、生活習慣要因を変えるための行動、特に健康的な体重を維持すること、そして家族歴を理解することがリスク低減の鍵であるとCruz-Monserrate氏は言う。
「この病気は多くの場合サイレントキラーであり、治療が困難な段階に進行するまで自覚症状がありません。私たちは、この病気をより効果的に予防、診断、治療するための研究を積極的に続けていかなければなりません」と、肥満に関連した膵臓がんの予防や、膵臓がんや膵炎の発症に対する運動の影響について研究を行っているCruz-Monserrate氏は語った。
OSUCCC-Jamesにおける膵がんおよび研究についての詳細は、cancer.osu.eduまたは1-800-293-5066まで。
調査方法
この調査はSSRSのOpinion Panel Omnibusプラットフォームで実施された。SSRS Opinion Panel Omnibusは、全国規模の月2回の確率調査である。データ収集は2024年10月4日から10月7日まで、1,004人の回答者を対象に実施された。調査はウェブ(n=974)と電話(n=30)で行われ、英語で実施された。
全回答者の誤差はの範囲は95%信頼水準で±3.5%ポイント、すべてのSSRS Opinion Panel Omnibusのデータは、18歳以上の米国成人を対象として加重平均されている。
- 監修 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
- 記事担当者 平沢沙枝
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- 原文掲載日 2024/10/31
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