ナブパクリタキセルとゲムシタビンの併用で進行膵臓癌患者生存期間が継続的に改善

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進行膵臓癌を対象にしたMPACT試験の解析更新

治療歴のない転移性膵臓癌患者に対するナブパクリタキセル(アブラキサン)とゲムシタビン(ジェムザール)の併用療法を調査する転移性膵臓腺癌臨床試験(MPACT試験)の追跡調査結果が、米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会(シカゴ)で報告された。本試験の当初の結果は、 New England Journal of Medicine誌にて報告されている。

膵臓癌は癌の中でも死亡率が高く、米国では毎年約43,000人が膵臓癌と診断され、37,000人近い患者が死亡している。また膵臓癌は早期発見が難しく、病期が進んだ段階での治療は非常に難しい。

ゲムシタビンは、ここ最近、進行膵臓癌の標準化学療法剤となっている。ナブパクリタキセルは広く使用されている抗癌剤パクリタキセル(タキソール)の新しい製剤で、ヒトタンパク質であるアルブミンとパクリタキセルを結合させ、微粒子化したものである。この形態により薬剤が癌細胞に直接届きやすくなり、副作用が軽減する。

本試験では転移性膵臓癌患者861人を、ナブパクリタキセルとゲムシタビンを併用する群とゲムシタビンを単独で投与する群とに無作為に割り付けた。主要評価項目は全生存期間とした。試験の結果、全生存期間の中央値は、ナブパクリタキセル+ゲムシタビン併用投与群で8.5カ月、ゲムシタビン単独投与群で6.7カ月であった。

さらにナブパクリタキセルは長期生存率も改善するとみられる。1年経過した時点での患者生存率はゲムシタビン単独投与群の22%に対して、ナブパクリタキセル+ゲムシタビン併用投与群では35%であり、1年生存率は59%上昇したことになる。2年経過した時点での生存率は、ゲムシタビン単独投与群の4%に対して、併用投与群では9%であり、ナブパクリタキセルにより2年生存率は倍増した。今回の追加解析から、ナブパクリタキセル+ゲムシタビン併用投与群はゲムシタビン単独投与群と比較すると、全生存期間が最大で3.5年改善したことが示された。

ナブパクリタキセルにより無増悪生存期間の中央値も改善し、ナブパクリタキセル+ゲムシタビン併用投与群で5.5カ月、ゲムシタビン単独投与群で3.7カ月であった。腫瘍縮小に対する全奏効率はナブパクリタキセル+ゲムシタビン併用投与群で23%、ゲムシタビン単独投与群で7%であった。

ナブパクリタキセルは忍容性が高いが、末梢神経障害(手足の指のしびれ)の発現率が有意に高く、ナブパクリタキセル+ゲムシタビン併用投与群では17%、ゲムシタビン単独投与群では1%以下であった。このため、患者の8%がナブパクリタキセルの使用を中止し、10%が投与量減量となった。さらに、ナブパクリタキセル+ゲムシタビン併用投与群では好中球減少症と倦怠感の発現率が高くなり、それぞれ38%(ゲムシタビン単独投与群27%)、17%(ゲムシタビン単独投与群7%)であった。

ナブパクリタキセルとゲムシタビンの併用で、転移性膵臓癌患者の全生存期間、無増悪生存期間、奏効率が有意に向上したが、末梢神経障害と骨髄抑制の発現率は上昇したと研究チームは結論づけた。

参考文献:
1. Goldstein D, El-Maraghi RH, Hammel P, et al. Analyses of updated overall survival (OS) and prognostic effect of neutrophil-to-lymphocyte ratio (NLR) and CA 19-9 from the phase III MPACT study of nab-paclitaxel (nab-P) plus gemcitabine (Gem) versus Gem for patients (pts) with metastatic pancreatic cancer (PC). J Clin Oncol 32:5s, 2014 (suppl; abstr 4027)
2. Von Hoff DD, Ervin T, Arena FP, et al. Increased survival in pancreatic cancer with nab-paclitaxel plus gemcitabine. New England Journal of Medicine. 2013; 369(18): 1691-703.


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翻訳担当者 鶴田京子

監修 畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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