代謝物測定による新規診断検査法が膵臓癌の早期発見につながる可能性

•この検査法には患者の血中の特定の代謝物濃度の測定が必要
• 新規診断検査法は高い感度および特異性を示す

網羅的な代謝物の解析(メタボローム解析)と呼ばれる新しい科学技術を用いた診断検査が、膵臓癌を早期に検出して患者の予後を改善する、安全で簡便なスクリーニング法となる可能性がある。

研究者らによる、膵臓癌の診断法としてのメタボローム解析の有用性を検討し、新しい手法として検証した試験結果が、米国癌学会(AACR)誌であるCancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionに掲載された。

「外科手術は膵臓癌の根治治療ではありますが、80%以上の患者では、発見時にはすでに切除不可能な局所進行性腫瘍または転移性腫瘍となっています」。と神戸大学大学院医学研究科准教授病因病態解析学分野長の吉田優医師は述べた。「従来から用いられている血液検査や、画像診断、内視鏡による検査は膵臓癌のスクリーニングおよび早期発見には適さず、膵臓癌の新しいスクリーニング法、診断法が早急に求められています」。

研究者らは、ガスクロマトグラフィー/質量分析法を用いて、膵臓癌患者、慢性膵炎患者、および健康被験者の血中代謝物の濃度を測定した。膵臓癌患者43人および健康被験者42人を初回測定対象群に、また膵臓癌患者42人、健康被験者41人を検証用測定対象群に無作為に割り付けた。慢性膵炎患者23人はすべて検証用測定対象群に割り付けた。

初回測定対象群から得られた代謝物の網羅的分析により、膵臓癌患者と健康被験者の血中で18種類の代謝物の濃度に有意差が認められた。膵臓癌の予測診断法を開発するために、4種類の代謝物濃度を評価し、さらに検討した。初回測定対象群においては、86%の感度および88.1%の特異度が得られた。検証用測定対象群により、再測定したところ、慢性膵炎も含めた患者全体において、この診断法は71.4%の感度および78.1%の特異度を示した。

「この血清メタボローム解析を用いた診断的手法は、従来の腫瘍マーカーに比べ精度が高く、特に慢性膵炎患者も含む対象群における膵臓癌患者の診断において精度が高いです」と吉田氏は述べた。「この安全で簡便なスクリーニング法となる、新規の診断手法が、癌を早期発見し、切除が可能で、治癒が見込めることにより、膵臓癌患者の予後を改善することが期待されます」。

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翻訳担当者 古屋千恵

監修 辻村信一(獣医学/農学博士/メディカルライター)

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