ジェムザール+アバスチン併用は進行膵臓癌の生存期間を改善しない

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分子標的治療薬であるアバスチン (一般名:ベバシズマブ) を化学療法薬であるジェムザール (一般名:ゲムシタビン) に追加投与しても進行膵臓癌の生存期間を改善しないことが、第3相臨床試験の結果により分かった。この臨床試験の結果は、Journal of Clinical Oncology誌のなかで報告された。[1]

膵臓癌は致死率の高いタイプの癌であり、米国では毎年約43,000人が診断され、 37,000人以上が死亡している。進行期に診断されることが多いことから、早期発見・治療のためのアプローチの改善が研究における重要な優先事項となっている。

ジェムザールは単独または他薬剤と併用して使用され、進行膵臓癌に対する化学療法の標準治療薬として現在使用されている。アバスチンは分子標的治療薬であり、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)として知られるタンパク質を阻害する。VEGFは血管新生において重要な役割を担っている。 これまでに行われた第2相試験の結果では、 ジェムザールとアバスチンの併用が進行膵臓癌において有効である可能性が示されていた。 [2]

今回行われた第3相臨床試験では、両薬剤の併用が進行膵臓癌患者の生存期間を改善するかについて、さらなる研究が行われたかたちだ。同臨床試験には進行膵臓癌に対して未治療の患者が参加した。治療サイクルは28日間で、各治療サイクル中3回にわたり全患者にジェムザールが投与された。その上で、ひとつの治療群には各治療サイクル中2回に分けてアバスチンを投与、 もうひとつの治療群にはプラセボを投与した。癌が悪化したり、許容できない副作用が表れた際には、治療を中止した。同治療を受けた患者は535人。

この第3相臨床試験の結果は以下のようなものであった。

・アバスチンを投与された患者とプラセボを投与された患者を比較しても生存期間中央値の改善はみられず、どちらの治療群もおよそ6カ月まで生存した。
・ 無増悪生存期間中央値は、アバスチン群でほぼ4カ月、プラセボ群でほぼ3カ月であった。
・全奏効率は、アバスチンを投与された患者で13% 、プラセボを投与された患者で10% であった。
・両群ともに副作用は類似していた。ただし、アバスチン投与群のみに高血圧と蛋白尿 (尿中の過剰な血清蛋白質) の割合の増加が認められた。

第2相臨床試験ではジェムザールへのアバスチンの追加投与が進行膵臓癌の生存期間を改善する可能性があると示唆されていた。しかし、今回の第3相臨床試験の結果から、ジェムザール+アバスチン併用による生存期間の改善は無いと結論づけられた。

参考文献:
[1] Kindler HL, Niedzwiecki D, Hollis D, et al. Gemcitabine plus bevacizumab compared with gemcitabine plus placebo in patients with advanced pancreatic cancer: Phase III trial of the Cancer and Leukemia Group B (CALGB 80303). Journal of Clinical Oncology [early online publication]. July 6, 2010.

[2] Kindler HL, Friberg G, Singh DA, et al. Phase II trial of bevacizumab plus gemcitabine in patients with advanced pancreatic cancer. Journal of Clinical Oncology. 2005 Nov 1;23(31):8033-40.


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翻訳担当者 内田彩香

監修 野長瀬祥兼(工学/医学)

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