アダグラシブはKRASG12C変異がんに有望

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCO の見解

「今回のKRYSTAL-1試験の単群第1/2相試験のデータから、治療歴のある膵臓がんまたは胆道がん患者において、adagrasib
アダグラシブ)は奏効率および無増悪生存期間において有望であり、治療耐性も良好であることが示唆されました。この第1/2相試験は、より多くのサンプル数で検証する必要があります」。
- Cathy Eng医師(FACP, FASCO, ASCO消化器がん専門家)


KRASG12C変異がん患者において、KRASG12Cを標的とする経口薬アダグラシブ [adagrasib](販売名:Krazati、Mirati Therapeutics社)は有効な治療薬となる可能性があるとの研究結果が、 米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズの2023年4月セッションで発表される。

KRASは、細胞増殖を制御するタンパク質を作る遺伝子で、がんの原因となることが知られている遺伝子の中で、最も高い頻度で変異する一つである。この遺伝子に変異(つまりエラー)が生じると、細胞は制御を失って増殖し、がんの増殖や転移につながる。典型的なKRAS変異であるG12C(KRASG12C)は、膵臓がんの2%、胆道がんの1%にみられる。非小細胞肺がん以外のKRASG12C変異固形がんに対して承認されている標的治療薬は、今のところない。

第1/2相KRYSTAL-1試験では、膵管腺がん、胆道がん、その他の消化管がん、非消化管がんを含むKRASG12C変異固形がん患者63人にアダグラシブが投与された。測定可能な病変を有する患者57人において、全奏効率は35.1%、病勢コントロール率は86%、奏効期間中央値は5.3カ月、無増悪生存期間中央値は7.4カ月、全生存期間中央値は14カ月であった。膵管腺がん患者21人においては、全奏効率33.3%、病勢コントロール率81.0%、無増悪生存期間中央値5.4カ月、全生存期間中央値8カ月であった。胆道がん患者12人においては、全奏効率41.7%、病勢コントロール率91.7%、無増悪生存期間中央値8.6カ月、全生存期間中央値15.1カ月であった。約97%の患者に治療関連の有害事象が生じ、グレード3の事象は25.4%、グレード4の事象は1.6%の患者に認められた。グレード5の事象は発生しなかった。

研究者らは、腫瘍増殖の原因となる変異を特定し、患者にとって最適な治療法を医師が決定するためのバイオマーカー検査が重要であると記している。

「本試験は、アダグラシブが膵臓がんや胆道がんを含む幅広いKRASG12C変異腫瘍に対して臨床効果があることを示し、標準治療がない患者や、標準治療を希望しなかった患者において奏効率は35%でした」と、本試験の筆頭著者であるShubham Pant医師(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)は述べる。

  • 監訳 後藤 悌(呼吸器内科/国立がん研究センター)
  • 翻訳担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2023/04/19

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