ジェムザールをオキサリプラチンまたはシスプラチンと組み合わせた場合、進行性膵臓癌患者の生存率が向上する
キャンサーコンサルタンツ
2006年8月
ドイツの研究者らは、エロキサチン(オキサリプラチン)またはプラチノール(シスプラチン)をジェムザール(ジェムシタビン)に加えた場合、進行性膵臓癌の無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が向上すると報告した[1]。ドイツで実施された2件のランダム化臨床試験を用いた本メタ分析の結果は、2006年米国臨床腫瘍学会の年次総会で発表された。同総会において2番目に報告されたレポートでは、進行性膵臓癌患者に対する毒性を増加されることなくアバスチン(ベバシズマブ)をジェムザールおよびエロキサチンの治療レジメンに加えることができるだろうと示唆された[2]。
ジェムザールは膵臓癌患者の標準治療である。プラチナ化合物をジェムザールに加えることで進行性膵臓癌患者の反応率、および、おそらくは全体的な結果を向上させるというエビデンスが作られつつある。エロキサチンはプラチノールまたはパラプラチン(カルボプラチン)よりも毒性が低いと考えられているため、プラチナに対して感受性がある癌においてますます評価されている。
前記参考文献の著者らは2件のランダム化臨床試験を調査し、進行性膵臓癌の治療としてエロキサチンまたはプラチノールをジェムザールに加えることの影響について評価した。各試験においてジェムザール単剤よりも2剤を併用して治療した方が、向上した治療結果が得られる傾向にあった。これら2件に試験には合計すると500人を超える患者が参加しており、それぞれの結果を組み合わせると統計的観測がより可能となった。2剤併用療法では無増悪期間の中央値が5.5ヶ月であり、単剤療法では3.6ヶ月であると報告された。一般状態の優れた患者には最もその効果があった。ECOGが定める基準である一般状態がグレード0の患者は、全生存期間の中央値が併用療法の場合で8.3ヶ月、単剤療法では6.7ヶ月だった。以上のことから、進行性膵臓癌の場合、プラチナ化合物を加えることで患者の無増悪生存期間および全生存期間が顕著に改善される、と著者らは結論付けた。
2006年米国臨床腫瘍学会においてNorth Central Cancer Treatment Group (NCCTG)に参加している研究者らは、アバスチンをジェムザールおよびエロキサチンに加える併用療法は十分耐容性があると報告した。
アバスチンは血管内皮増殖因子(VEGF)に対する組み換えヒト化モノクローナル抗体である。VEGFは腫瘍の血管新生において重要な役割を果たし、この活性を阻害することには抗腫瘍効果があると考えられている。
アバスチンの臨床試験では特に他剤と併用した場合、さまざまな腫瘍に対して効果が見られた。しかし、膵臓癌の治療にアバスチン単剤を用いることについては今まで報告がなかった。一方では、ジェムザールで治療された進行性膵臓患者にタルセバ(エルロチニブ)を加えて投与すると、治療結果が向上する可能性があると示唆するエビデンスが存在する(関連ニュースを参照)。タルセバは再発した非小細胞肺癌(NSCLC)の患者に対する治療としてFDAに承認されており、アバスチンは進行性直腸癌の治療として承認されている。タルセバは上皮成長因子受容体のチロシン・キナーゼ阻害剤であり、アバスチンは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の経路を標的とする。この年次総会後の最新抄録(late breaking abstract)では、アバスチンをジェムザールおよびエロキサチンのレジメンに毒性を増加させることなく安全に追加することができると示唆されている。このアプローチによって無増悪生存期間および全生存期間が向上するかどうかを調査することには、多くの関心が寄せられるだろう。
コメント:
以上およびその他の試験によって、ジェムザールおよびエロキサチンをアバスチンまたはタルセバのような標的生物製剤と併用して用いることは、膵臓癌患者の治療結果を向上させる可能性があると示唆されている。
参考文献 :
[1] Louvet C, Hincke A, Labianca, et al. Increased survival using platinum analog combined with gemcitabine as compared to gemcitabine single agent in advanced pancreatic cancer (APC): Pooled analysis of two randomized trials, the GERCOR/GISCAD Intergroup Study and a German Multicenter Study. Proceedings of the 42nd annual meeting of the American Society of Clinical Oncology. Atlanta, Georgia. June 2006. Abstract # 4003.
[2] Kim GP, Oberg A, Kabat B, et al. NCCTG phase II trial of bevacizumab, gemcitabine, oxaliplatin in patients with metastatic pancreatic adenocarcinoma. Proceedings of the 42nd annual meeting of the American Society of Clinical Oncology. Atlanta, Georgia. June 2006. Abstract # 4113.
*サイト注1:白金製剤とジェムザールの併用を比較したメタ解析で有意差が出なかったという発表もある。
*サイト注2: 6月27日アバスチン+ジェムザールの膵臓がんへの第3相試験が、主要エンドポイントである全生存率を達成できる見込みがなく中止された。
c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved. These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein. Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc. 本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。 Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。 |
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
膵臓がんに関連する記事
膵がん転移巣を標的とした放射線治療の追加により無増悪生存期間が延長
2024年9月9日
膵臓がん早期発見にエクソソームを用いたリキッドバイオプシーが有望
2024年5月2日
膵臓がんの治験用RNAワクチンに対する免疫応答は、臨床的有用性と相関
2024年4月17日
意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果
2024年2月19日
「運動習慣の改善や食事制限...