カルボプラチンとパクリタキセル併用が肛門管扁平上皮がんの新標準治療に

希少がん研究における国際共同研究の実現可能性をInterAACTが実証

切除不能局所再発または転移性の未治療肛門管扁平上皮がん(SCCA)患者では、これまでシスプラチン+ 5-フルオロウラシル(5-FU)による治療は、カルボプラチン+パクリタキセル毎週投与による治療と同等の奏効を示してきた。しかし、カルボプラチン+パクリタキセルによる治療を受けた患者では、より長い生存期間およびより少ない毒性が観察されたことがドイツのミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO) 2018年年次総会で報告された。

英国ロンドンのロイヤル・マースデン病院の英国国営国民医療サービス(NHS) トラスト財団法人のコンサルタントであり、腫瘍内科医のSheela Rao医師は、国際的な調査チームを代表して結果を報告した。

進行した肛門管扁平上皮がんはまれな疾患である一方で、この疾患の発生率は過去10年間に年間2%上昇してきた。さらに、この疾患の治療に関するコンセンサスが存在せず、肛門管扁平上皮がん患者の全生存期間(OS)が現在も低いままであるため、この疾患に対するさらなる医学的探究を行う必要がある。

InterAACT以前、肛門管扁平上皮がんのランダム化試験で完遂したものは無かった。InterAACTは、これまで肛門管扁平上皮がん患者に有効性を示しており標準の初回治療とされてきていたルオロピリミジン+プラチナ製剤の併用治療とタキサン系薬剤(本薬剤もこの患者群においてこれまで効果を示してきた)を比較して優劣を決めるための選択されたランダム化第2相試験であり、治療の標準を確立することを目的とした。患者は、世界各地の50以上の施設で登録された。

InterAACTの治験責任医師は、2014年から2017年にかけて、未治療の切除不能局所再発または転移性の肛門管扁平上皮がん患者91人を登録した。

患者は、次の2つの治療群に等しくランダム化された。シスプラチン60mg/m2を21日毎と5-FU1000mg/ m2を24時間持続で4回投与する群と、カルボプラチンをAUC 5で28日毎とパクリタキセル80mg/m2を1、 8、 15日目に投与する群である。患者は(化学療法の有害反応の程度を反映する患者の全身状態を示す)全身状態(PS)、病変の拡大程度、HIV感染の有無、および(患者の居住する)国によって層別化された。全体的に、患者の67%は女性で平均年齢は61歳であった。患者の12%が局所進行性であり、88%は転移性病変を有していた。

主要評価項目は奏効率(RR)であり、副次的評価項目には無増悪生存期間(PFS)、OS、毒性、QOL(Quality of Life)、薬剤投与の実行可能性を含む。

カルボプラチン+パクリタキセルで重篤な有害事象の発生が減少

治療に対するRRは、シスプラチン+5-FUで57.1%であり、カルボプラチン+パクリタキセルで59.0%であった。

しかし、カルボプラチン+パクリタキセルでは生存期間が延長した。PFS中央値は、カルボプラチン+パクリタキセルで、8.1カ月に対し、シスプラチン+5-FUで5.7カ月であった。(p = 0.375)。またOS中央値は、それぞれ12.3カ月と20カ月であり、ハザード比(HR)は2.0であった。(p = 0.014)

グレード3以上の毒性は、シスプラチン+5-FU患者では32人(76%)、カルボプラチン+パクリタキセル患者30人(71%)で報告されている。

重篤な有害事象(SAE)の発生率は、カルボプラチン+パクリタキセルでは低かった。SAEは、カルボプラチン+パクリタキセルを受けた患者の36%と比較して、シスプラチン+5-FU患者の62%で報告された。(p = 0.016)

討論のポイント
本研究結果を議論した、Olderburg大学病院臨床腫瘍科/血液内科,北西ドイツがんセンター(NWTZ)のClaus-Henning Köhne氏は 、小規模ランダム化第2相試験において、特にORRの「優劣を決める」研究デザインに基づく今回の結論に疑問を呈した。Köhne教授は、無手術の治療を確立するために1986年に前向きのランダム化試験が予定されていたが、この試験は一度も行われておらず、一次治療としては化学療法/放射線療法が基準と考えられている、と述べた。さらに、Köhne教授は既治療の切除不能転移性肛門がんのニボルマブによる最近の結果についてさらに言及した。Köhne教授は、切除不能局所再発性または転移性の未治療肛門がん患者の治療としてカルボプラチン/パクリタキセル療法を確立したこの重要な研究について、携わったすべての研究者を褒め称えた一方で、この国際協力による研究をさらに継続するよう求めた。彼は、免疫チェックポイント阻害薬のような「新しいキッズ・オン・ザ・ブロック(アメリカの人気アイドルグループ、つまり新しいスター)」がこれに加わるかどうかについて疑問を呈した。

結論
著者らは、InterAACTが切除不能な再発性または転移性肛門管扁平上皮がん患者における初の前向きランダム化試験であることを強調した。

さらに、この優劣判定のための試験では、カルボプラチン+パクリタキセルはシスプラチン+5-FUと同等の奏効率を示したが毒性は低いことが判明し、カルボプラチン+パクリタキセルが勝者と結論された。

重要な点として、この研究では、希少がんにおいては国際協力が非常に効果的であることを実証した。

さらに、これらの知見は、進行した肛門管扁平上皮がんの初回治療の標準としてカルボプラチン+パクリタキセルを確立し、将来の第2相/第3相試験においてカルボプラチン+パクリタキセルが新規薬剤を追加する基礎として役立つことを示唆している。

開示

この試験は、Cancer Research UK(CRUK)、バイオメディカルリサーチセンター(BRC)ロイヤルマースデンの支援をもとに行われた。

参照

LBA21 – Rao S, Sclafani F, Eng C, et al. InterAACT: A multicentre open label randomised phase II advanced anal cancer trial of cisplatin (CDDP) plus 5-fluorouracil (5-FU) vs carboplatin (C) plus weekly paclitaxel (P) in patients (pts) with inoperable locally recurrent (ILR) or metastatic treatment naïve disease – An International Rare Cancers Initiative (IRCI) trial

翻訳担当者 山岸美恵野

監修 中村泰大(埼玉医科大学国際医療センター/皮膚腫瘍科・皮膚科)

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