177Lutetium-DOTATATEを用いた放射性核種標識ペプチド療法は、中腸神経内分泌腫瘍の増殖を抑制

米国臨床腫瘍学会(ASCO)の見解

「新規療法は腫瘍の増殖に対して有意な抑制効果を示し、特に治療の選択肢が限られている患者に効果が認められることは大きな喜びです」と、本日の報道発表の議長でありASCO専門委員のSmitha Krishnamurthi医師が述べた。

進行性中腸神経内分泌腫瘍の治療歴がある患者を対象とした第3相試験の早期結果から、新規治療薬177Lutetium-DOTATATE (Lutathera)は腫瘍の増殖を大幅に抑制する可能性があることが示された。この治験薬の投与を受けた患者は、4週ごとにオクトレオチドLAR 60 mgの投与を受けた患者に比べて、疾患進行または死亡のリスクが79%低下した。本研究は近日中にサンフランシスコで行われる2016年消化器がんシンポジウムにて発表される予定である。

「本研究の結果はLutatheraが安全で有効な治療の選択肢と考えられることを示している。概して、この療法は腫瘍が再び増殖するまでの数年間、増殖を抑える効果があった。また、通常患者は長期間にわたり1日1回投薬治療を受けなければいけないのに対して、この療法は4回の投薬しか必要としないため、通常の治療と比べてより簡便な治療法である」とフロリダ州タンパにあるMoffitt がんセンターの腫瘍内科医であり主著者のJonathan R. Strosberg医師は述べた。

177Lutetium-DOTATATE は、ホルモン療法と放射線療法を組み合わせた放射性核種標識ペプチド療法(Peptide Receptor Radionuclide Therapy:PRRT)として知られている新たな種類に属する薬剤である。177Lutetium-DOTATATEの場合、ソマトスタチンアナログに放射性物質を付けることで、がん細胞を死滅させる放射線を腫瘍に標的送達することが可能になる。

転移性中腸神経内分泌腫瘍(小腸または近位結腸に生じる腫瘍)を有する患者の多くは、オクトレオチドやランレオチドなどのソマトスタチンアナログを用いたホルモン療法を受ける。ソマトスタチンアナログに反応しない腫瘍を有する患者に対しては、現在のところ有効な全身性の二次治療選択肢は存在しない。

著者らによれば、本研究は進行性中腸神経内分泌腫瘍を有し、一次治療としてソマトスタチンアナログ療法を受けていたにもかかわらず進行性腫瘍の悪化が認められた230人の患者を対象に行われた、177Lutetium-DOTATATEの有効性を評価した最初の前向きランダム化試験である。患者は、177Lutetium-DOTATATEを投与する群または高用量オクトレオチドLARを投与する群のいずれかに無作為に割り当てられた。

データ解析時に、疾患の進行が認められたのは177Lutetium-DOTATATE群では23人であったのに対し、オクトレオチドLAR群では67人であった。無増悪生存期間の中央値は、オクトレオチドLAR群で8カ月であったのに対し、177Lutetium-DOTATATE群では到達しなかった。

また、本研究の予備的な知見から177Lutetium-DOTATATEは患者の生存期間を延長する可能性のあることが示唆される。死亡は標準治療群で22人に認められたが、177Lutetium-DOTATATE群では13人とかなり少なかった。しかし、長期生存に及ぼす177Lutetium-DOTATATEの明確な影響を評価するためには、さらに長期の追跡調査が必要である。

全体として、重篤な副作用などの有害事象数は両群間で同程度であった。オクトレオチドはガスや腹部膨満をしばしば引き起こし、長期使用に伴い胆石が発現する可能性がある。177Lutetium-DOTATATEでは血球数の減少が認められることがあるが、通常一過性である。

神経内分泌腫瘍とは、体内のさまざまな器官のホルモン産生(神経内分泌)細胞に由来する一連のがんの総称である。米国では毎年約8000人が胃腸管の神経内分泌腫瘍と診断されている。神経内分泌腫瘍は全体としてまれな疾患であるが、その発生率は上昇している。

本研究はAdvanced Accelerator Applications(AAA)から資金提供を受けた。

翻訳担当者 青山真佐枝

監修 前田梓(医学生物物理学/トロント大学)

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