HIV感染患者を対象に肛門の前がん治療および予防を目的とした多施設共同試験が開始

米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート

原文掲載日 :2015年4月29日

米国国立がん研究所(NCI)は、ANCHOR試験(肛門がんHSIL[高度扁平上皮内病変]予後研究試験)と呼ばれる多施設共同第3相臨床試験を開始した。この試験は、HIV感染者におけるHSIL治療が、肛門がんの進行を防げるかどうかを判定することを目的としている。肛門HSILは、がんを引き起こす型のヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因で肛門管内の組織が異常に増殖した状態であり、肛門がんへと進行するリスクがある。現在、HIV陽性、陰性に関わらず、肛門HSIL患者に対する治療は定まっていない。肛門がんの症例数は、特にHIV感染患者で増加している。肛門がんの原因の95%以上と推測されているがんを引き起こすHPV型の感染の有病率は、HIV陽性集団の方がHIV陰性の集団に比べ、はるかに高い。男性と性交渉を持つHIV陽性男性の85〜95%、HIV陽性女性の76〜90%、さらに異性愛のHIV陽性男性の60%ががんを引き起こすHPV型に感染している。対照的に、HIV陰性で異性愛の男性における肛門がんの大部分の原因となっているHPV-16型および/またはHPV-18型の肛門感染の有病率は、約5%と報告されている。肛門がんの発症率は、HIV感染者の方が一般集団の患者と比較して約30倍高いことが、大規模な試験により明らかにされている。

ANCHOR試験では、肛門HSILに対する治療が、HIV感染男性および女性における肛門がんの続発を減少する効果を有するかどうかを、通常の検査で監視を行った際と比較して評価する予定である。試験では数種の異なる局所療法または外科療法が行われる。局所療法は、イミキモドまたはフルオロウラシルの外用が挙げられ、外科療法は、凝固療法、電気焼灼術、レーザー治療が挙げられる。本試験はこれらの治療の安全性に関しても判定する。本試験は、肛門がんのリスクが極めて高い35歳以上のHIV陽性の男女を対象として行われる。本試験は、NCIがサポートするエイズ悪性腫瘍コンソーシアムを通じて実施され、ANCHOR HRA Training and Certification Committeeによって認められた、拡大肛門鏡検査(HRA)または肛門HSIL治療の資格を有する専門医が常駐している施設で行われる。15カ所以上の施設の参加が見込まれている。詳細はhttp://www.anchorstudy.org Exit Disclaimer参照のこと。

原文

翻訳担当者 滝川俊和 

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

その他の消化器がんに関連する記事

HIV感染者の肛門がん予防について初めてのガイドラインを専門委員会が発表の画像

HIV感染者の肛門がん予防について初めてのガイドラインを専門委員会が発表

スクリーニングと治療に関する新たな推奨は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)が主導した全国的な大規模研究の結果に基づいているHIV感染者の肛門がん前駆病変を検出・...
意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
進行性神経内分泌腫瘍に二重作用薬カボザンチニブが有効の画像

進行性神経内分泌腫瘍に二重作用薬カボザンチニブが有効

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)・ 腫瘍細胞の増殖と腫瘍血管新生を標的とするカボザンチニブ(販売名:カボメティクス)は、膵外神経内分泌腫瘍および膵神経内分泌腫瘍の患者において、プラセボと比...
前がん病変治療でHIV感染者の肛門がんリスクが低下の画像

前がん病変治療でHIV感染者の肛門がんリスクが低下

HIV感染者を対象とした大規模臨床試験から、肛門の前がん病変である高度扁平上皮内病変(high-grade squamous intraepithelial lesions:HSIL)の治療により、肛門がんの発症率が半分以下に減少することが