エベロリムスとランレオチドの併用で、膵・消化管神経内分泌腫瘍患者の生存が改善
ASCOの見解(引用)
「ランレオチド(販売名:ソマチュリン)とエベロリムス(販売名:アフィニトール)はそれぞれ、膵・消化管神経内分泌腫瘍の患者における無増悪生存期間を延長することがこれまでに実証されていますが、ランレオチドとエベロリムスの併用療法はこれまで研究されていませんでした。この新たな治療法が確立されれば、治療の選択肢が広がり、予後と生活の質が向上する可能性があり、患者さんの利益になります」と、Laura Vater医師(公衆衛生学修士、インディアナ大学サイモンがんセンター)は述べる。
テーマ | 切除不能または再発膵・消化管神経内分泌腫瘍(GEP-NET) |
対象者 | 患者145人(日本国内でのみ実施) |
主な結果 | グレード1または2のGEP-NET患者のうち、腫瘍の予後因子が不良で、エベロリムスとランレオチドの併用治療を受けた患者は、エベロリムス単剤治療を受けた患者と比べて、がんの進行なく生存する期間が長くなる。 |
重要性 | ・神経内分泌腫瘍は、体の機能を制御するホルモンを産生する内分泌細胞で発生する、希少腫瘍である。これらの腫瘍は、体のどの部位でも発生する可能性がある。膵・消化管神経内分泌腫瘍 (GEP-NET) もまれではあるが、神経内分泌腫瘍の中では最も多く、神経内分泌腫瘍全体の55%~70%が膵臓または消化管で発生する。 ・GEP-NETは、がん細胞の増殖を助けるタンパクの一種を阻害するmTOR阻害薬である標的治療薬エベロリムスで治療できる。研究では、初回治療としてホルモン阻害薬ランレオチドとエベロリムスを併用すると、分化度の高いGEP-NETの患者に効果があることが示唆された。 |
新たな研究で、エベロリムスとホルモン阻害薬ランレオチドの併用は、膵臓または消化管に特定の種類の神経内分泌腫瘍が生じた患者において、エベロリムス単独の場合と比較して無増悪生存期間(PFS)を延長することが判明した。この研究は、カリフォルニア州サンフランシスコで1月23日から25日に開催される2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)消化器がんシンポジウムで発表される。
試験について
「これらの患者に対する現在の標準治療であるエベロリムス単剤療法では、無増悪生存期間が約11カ月と限られており、改善の余地が大いにあります。Ki-67レベルが高い患者やびまん性肝転移がある患者など、予後が悪い患者に対する効果的な治療法が欠けています。併用療法は他のがん種では有望であることが示されていますが、神経内分泌腫瘍での可能性は十分に検討されていませんでした。本研究は、これらのギャップを埋め、高リスク群の予後を改善し、有効性と安全性・忍容性とのバランスのとれた治療法を開発し、最終的には神経内分泌腫瘍の標準治療を世界的に前進させることを目指しました」と、本研究の筆頭著者である肱岡範医師(東京、国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科)は述べた。
この第3相試験は、手術で治療できない、または再発したグレード1または2のGEP-NET患者を対象として実施された。対象患者には、がん細胞の分裂速度やがんが肝臓に転移する速度を測定するKi-67レベルが5%から20%であるなど、予後不良を示唆する他の要因もあった。
この研究には 178 人の患者が登録された。このうち145 人が、エベロリムス単剤投与 (72 人) またはエベロリムス+ランレオチド併用投与 (73 人) のいずれかに無作為に割り付けられた。本研究の対象患者はすべて日本人であったが、ソマトスタチン受容体発現や Ki-67 レベルなどの神経内分泌腫瘍の生物学的特徴は、世界中のさまざまな集団で一貫していると考えられている。
主な知見
- エベロリムス単剤群の無増悪生存期間(PFS)中央値は11.5カ月であったのに対して、エベロリムス+ランレオチド併用群では、PFS中央値が29.7カ月に延長された。
- エベロリムス単剤群では客観的奏効率(ORR)は8.7%であった。2剤併用群ではORRが3倍以上の26.8%となった。
- 疾患制御率は、エベロリムス単剤群では87%、2剤併用群では91.5%であった。
- PFSで大幅な改善が認められたため、研究を早期に中止し、参加者全員がエベロリムス+ランレオチド併用治療を受けられるようにした。
2剤併用群では副作用がより多くみられたが、重い副作用の有意な増加はなかった。
次のステップ
研究者らは、膵・消化管神経内分泌腫瘍(GEP-NET)に対してエベロリムス+ランレオチド併用療法と他の治療法を比較する予定である。
この研究は国立がん研究センター研究開発費と日本医療研究開発機構の資金提供を受けた。
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- 監修 泉谷昌志(消化器内科、がん生物学/東京大学医学部附属病院)
- 記事担当者 山田登志子
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- 原文掲載日 2025/01/22
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