2025年ASCO消化器がんシンポジウムの注目演題
消化器がんの治療に対する新たなアプローチを模索する7件の研究が、1月23日から25日までカリフォルニア州サンフランシスコおよびオンラインで開催される2025年米国臨床腫瘍学会 (ASCO) 消化器がんシンポジウムで発表される。
ASCO専門家が、以下の研究について外部のコメントや見解を提供する。インタビューの申し込みは、 ASCOメディアチームまで。
アブストラクトLBA329:
多施設ランダム化第3相試験(SCIENCE)の予備結果: 切除可能な局所進行食道扁平上皮がんに対する術前治療として、化学療法+シンチリマブ併用と化学放射線療法+シンチリマブ併用をそれぞれ化学放射線療法のみと比較。
アブストラクトのプレゼンテーションは、1月23日(木)午後2:00(太平洋標準時)開始のセッションの中で行われる。
「この研究は、CROSS および NEOCRTEC5010の結果を基に術前化学放射線療法が現在の標準治療として採用されているにもかかわらず、切除可能な局所進行食道扁平上皮がんの術後再発率が高いという根強い課題に取り組むものである。シンチリマブなどの免疫チェックポイント阻害薬を標準治療に組み入れて治療効果を高める可能性を検証する。注目すべきは、局所進行食道扁平上皮がんに対する免疫チェックポイント阻害薬併用療法を標準的な術前化学放射線療法と比較する初の3群ランダム化試験である点である。結果は、免疫チェックポイント阻害薬を術前化学放射線療法プロトコルに組み入れると、病理学的完全奏効率が上昇し、再発が減少し、臓器温存が可能になるため、長期生存率が大幅に改善される可能性があることを示唆している。免疫療法薬と化学放射線療法を統合するこの革新的なアプローチは、より個別化された効果的な治療戦略につながり、最終的には患者の転帰が経時的に改善する可能性がある」と、主任研究著者のXuefeng Leng医学博士は述べる。
アブストラクトLBA522:
塞栓術の対象となる切除不能肝細胞がんの治療における、カムレリズマブおよびアパチニブを併用する肝動脈化学塞栓療法(TACE)とTACE単独との比較: 多施設共同、非盲検、ランダム化、第2相試験 (CAP-ACE)。
アブストラクトのプレゼンテーションは、1月24日(金)午前9:15(太平洋標準時)開始のセッションの中で行われる。
「肝細胞がんに対する免疫療法薬の登場により、切除不能肝細胞がん治療の展望は期待が持てる。肝動脈化学塞栓術 (TACE) は、中程度進行肝細胞がんの標準治療として確立されている。しかし、生存率の向上に対する臨床的ニーズは依然として満たされていない。TACE と免疫療法薬治療を組み合わせると、免疫系が活性化され、腫瘍血管新生が抑制されるため、肝細胞がんの予後が改善する可能性があることを示す証拠がある。今回の研究では、切除不能肝細胞がん患者でTACE+カムレリズマブ+リボセラニブ併用療法を受けた患者は、TACE単独療法を受けた患者と比較して、主要評価項目である無増悪生存期間において臨床的に意義があり、統計学的に有意な改善がみとめられた。全生存期間が延長する傾向もTACE+カムレリズマブ+リボセラニブ併用療法群でみられた。局所療法に免疫療法薬と標的療法薬を組み合わせることで生存期間が改善するというエビデンスが増えており、TACEと免疫療法薬+標的療法薬の併用療法は、切除不能肝細胞がんに対する新たな選択肢になりつつある」と、筆頭著者のGao-Jun Teng氏は述べる。
アブストラクト19:
ステージ1-3のMMR欠損大腸がん患者に対する単サイクル術前ペムブロリズマブ: RESET-C研究の最終分析。
アブストラクトのプレゼンテーションは、1月25日(土)午前9:15(太平洋標準時)開始のセッションの中で行われる。
「術前免疫療法は、局所性ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)大腸がん患者に素晴らしい結果を示した。しかし、最適な治療期間、レジメン、および反応はまだ確立されていない。われわれの研究結果は、臨床ステージ 1-2のdMMR大腸がん患者のほとんどがペムブロリズマブの単回投与するだけで十分であることを示しており、それによって毒性リスクだけでなく、経済的な負担も軽減される。臨床、病理、および分子情報を統合することで、病理学的完全奏効を達成し、手術を必要としない患者を特定し、それによって局所性ミスマッチ修復機能欠損大腸がんにおける将来の経過観察戦略への道を切り開きたいと考えている」と、筆頭著者の Camilla Qvortrup 氏は述べる。
「局所性ミスマッチ修復機能欠損大腸がん患者に対して、術前ペムブロリズマブの1サイクル投与は有効かつ安全であった。臨床ステージ1-2のほとんどの患者において、病理学的完全奏効の達成には1サイクルで十分であった」とASCO専門家のPamela Kunz氏は述べた。
アブストラクト21:
TNTに完全またはほぼ完全な奏効を示した直腸がん患者におけるWWとTME: CAO/ARO/AIO-12およびOPRA試験の統合分析。
アブストラクトのプレゼンテーションは、1月25日(土)午前9:15(太平洋標準時)開始のセッションの中で行われる。
アブストラクトLBA143:
マイクロサテライト不安定性高値/ミスマッチ修復機能欠損を有する手術不能大腸がんに対するニボルマブ+イピリムマブ併用療法をニボルマブ単独療法と比較するCheckMate 8HW試験の初回結果。
アブストラクトのプレゼンテーションは、1月25日(土)午後1:00(太平洋標準時)開始のセッションの中で行われる。
「事前に規定された初回中間解析で、CheckMate 8HW試験は主要評価項目を達成し、中央検査でマイクロサテライト不安定性高値/ミスマッチ修復機能欠損が確認された患者に対する初回療法としてのニボルマブ+イピリムマブ併用療法は、治験担当医師が選択した化学療法と比較して無増悪生存率が優れており、24カ月無増悪生存率は72%であった(化学療法では14%)。 「もう1つの主要評価項目に関する今回の事前に規定された中間解析では、ニボルマブ+イピリムマブ併用群における3年無増悪生存率(68%)の高さは非常に有望であり、持続的な無増悪生存における有益性を示している。さらに、この研究における全奏効率の高さ、特に完全奏効率の高さ、および奏効期間の長さは、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法を受けたマイクロサテライト不安定性高値/ミスマッチ修復機能欠損・手術不能大腸がん患者の一部の患者が治癒に至る可能性があることを示唆している」と、主任研究著者のThierry Andre医師は述べる。
アブストラクト15:
ステージ2/3の大腸がん患者における分子的残存病変の検出のための循環腫瘍DNA: BESPOKE CRCサブコホートの最終分析。
アブストラクトのプレゼンテーションは、1月25日(土)午後1:00(太平洋標準時)開始のセッションの中で行われる。
「BESPOKE試験の結果は、ステージ2-3の大腸がん患者の一部において 循環腫瘍DNA(ctDNA)陽性が無病生存の予後因子であるとの文献増加を裏付けている」と、ASCO 専門家のPamela Kunz氏は述べる。
アブストラクト16:
BREAKWATER: BRAF V600E変異陽性・手術不能大腸がんに対する初回治療としてのエンコラフェニブ+セツキシマブ+化学療法の分析。
アブストラクトのプレゼンテーションは、1月25日(土)午後1:00(太平洋標準時)開始のセッションの中で行われる。
- 監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院)
- 記事担当者 山田登志子
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- 原文掲載日 2025/01/25
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