意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所

意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限をしているわけではないのに体重が減少する場合は主治医の診察を受け、考えられる可能性を疑わなくてはなりません」と、研究責任者のBrian Wolpin氏(医師、公衆衛生学修士、ダナファーバ―の消化器がんセンター長、ヘイルファミリー膵臓がん研究所長)は言う。「予期せぬ体重減少が起こる疾患は多いので、主治医は検査するべき点があるかどうか判断できるのです」。本研究結果は、2024年1月23日のJournal of the American Medical Association誌に掲載された。

体重が減少しなかった参加者と比較すると、最近の体重減少は、上部消化管がん(食道がん、胃がん、肝臓がん、胆道がん、膵臓がんを含む)や、血液がん(非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病を含む)、大腸がん、ならびに肺がんといったいくつかのがんのリスクの有意な増加と関連していた。一方、最近の体重減少は、乳がん、泌尿生殖器がん、脳腫瘍、悪性黒色腫(メラノーマ)などその他のがんのリスク増加と関連していなかった。

「予期せぬ体重減少は、がんまたは他の多くの疾患により起こることがあります」とWolpin氏は言う。「運動量の増加やより健康的な食事が体重の減少の原因となることもありますが、これは人々の健康に有益です。しかし、患者がより健康的な行動に起因しない、意図せぬ体重減少を経験した場合は、かかりつけ医を受診し、がんを含めた体重減少の原因を探るためにさらなる検査が必要かどうか判断してもらうことが適切です」。

本研究は、1976年から30〜55歳の看護師を登録したNurses' Health Study、および1986年から40歳〜75歳の男性医療従事者を登録したHealth Professionals Follow-Up Studyという2つの大規模縦断研究の参加者157,474人を評価した。参加者らは2016年まで追跡された。

体重は2年に1度、身体活動に関する質問も含むアンケートで参加者が報告した。このアンケートでは、4年ごとに食事の変化について回答が求められた。この情報から、Wolpin氏らは各参加者の減量促進行動のレベルを評価することができた。減量促進行動は、参加者が食事の改善と身体活動の増加の両方を行った場合は「高」、1つの変更のみを行った場合は「中」、食事と運動の両方の変更を行わなかった場合は「低」に分類された。

「健康的な減量と不健康な減量を区別したかったのです」と、ダナファーバーの特別研究員であり、筆頭著者であるQiaoli Wang医学博士は述べる。「健康的な体重減少は、食生活の変化や運動量の増加によってもたらされます。しかし、予期せずに起こる不健康な体重減少は、基礎にあるがんに起因する可能性があります」。

進行がん患者は体重が減少することが多いが、早期がん患者は体重減少が起こらないと考えられることが多い。この研究では、早期がん、進行がんいずれであっても、診断される以前に同程度の体重減少が起こることが判明した。意図せぬ体重減少はがんを発症している徴候である可能性があり、より有効な治療の機会がある早期でのがん診断に役立つ可能性があるため、この知見は重要である。

がんによる体重減少が起こるメカニズムは、がんの種類によって異なる。今回の研究は、予期せぬ体重減少とがんリスクの上昇を関連付けた過去の研究知見を裏付ける。これまでの研究では、体重データは、疾病に対する治療の可能性を探していた患者から医師により収集されていた。本研究では、体重データは、数十年にわたり前向きかつ定期的に収集されていたため、体重変化の特定は、医師への受診に左右されることはなかった。また、この研究ではあらゆるがん種を対象とした。しかし、分析した2つの研究は医療従事者に焦点を当てたものであり、米国の全住人を完全に代表する集団ではない。

資金提供: 米国国立衛生研究所、スウェーデン研究評議会、Project P Fund、Broman Family Fund for Pancreatic Cancer、Hale Family Center for Pancreatic Cancer Research、Lustgarten Foundation Dedicated Laboratory Program、Stand Up To Cancer、Pancreatic Cancer Action Network、Noble Effort Fund、Wexler Family Fund、Promises for Purple、Bob Parsons Fund.

  • 監訳 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
  • 翻訳担当者 佐藤 美奈子
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  • 原文掲載日 2024/01/23

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