KRAS変異膵がん/大腸がんの再発をワクチンが遅らせる可能性

MDアンダーソンがんセンター

最大投与量を投与されたすべての患者で有意なT細胞応答が認められ、再発リスクの有意な低下と相関した

テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが主導した第1相臨床試験で、ワクチン接種により外科手術歴がありKRAS変異を有する膵がんおよび大腸がんの再発を予防できる可能性が示された。試験結果は1月9日、Nature Medicine誌に掲載された。

本臨床試験では、再発リスクが高いと考えられる膵がんおよび大腸がん患者に、KRAS G12DおよびG12R変異を標的とするELI-002ワクチンが最大10回投与された。T細胞応答は全患者の84%に認められ、投与量が上位2つの患者群では100%に認められた。その患者群には、第2相試験の推奨投与量である10mgを投与された患者が含まれる。

T細胞応答は、腫瘍バイオマーカーとctDNAクリアランス(循環腫瘍DNAがリキッドバイオプシーで検出されない状態)の減少を予測し、再発または死亡リスクの86%減少と相関した。T細胞応答レベルが中央値以上の患者では、無再発生存期間の中央値は未達だった。一方、T細胞応答レベルが中央値以下の群では4.01カ月であった。これは統計学的に有意な改善であった。

「膵がんの外科手術を受けた患者は、化学療法が終了した後でもなお再発リスクがあります。血中循環腫瘍DNA(ctDNA)が陽性の患者では特にそうであり、再発リスクが高くなります。こうした患者が再発する場合、この疾患は治癒不可能なため、医学的需要が未だみたされていない領域に属することは確かです」と主任研究員である Shubham Pant医師 (消化器腫瘍学准教授)は述べた。

多施設共同AMPLIFY-201試験では、ELI-002を評価している。このワクチンは、リンパ節を標的としたがんワクチンであり、KRAS変異を認識するようにT細胞を「訓練」し、KRAS変異細胞を識別・排除できるようにすることで、こうした再発の可能性を低下させるように設計されている。ELI-002はすぐに使えるワクチンでもあり、各患者に合わせて特別に調製する必要がない。KRAS変異がんは固形がん全体の約4分の1を占めるが、中でも膵がんの90%はKRAS変異があり、その多くはG12D変異を有する。

用量制限毒性、サイトカイン放出症候群、または試験治療下で発現したグレード3以上の有害事象を経験した患者はいなかった。グレードを問わず最も多く見られた有害事象は、疲労(24%)注射部位反応(16%)、および筋肉痛(12%)であった。

AMPLIFY-201試験には25人の患者が参加し、年齢中央値は61歳であった。このうち84%が白人で、8%がアジア人、そして2人が未報告の民族であった。患者の60%が女性であった。25人全員に根治を目的とした外科手術または別の治療歴があり、7人には放射線治療歴があった。

「初期段階とはいえ、このワクチンがこうした患者の多くで再発を防ぎ、生存期間を延長する可能性があるという有望な結果がいくつか得られました。また、良好な安全性プロファイルも示しましたが、わくわくします」とPant氏は述べた。

AMPLIFY-201試験の結果から、その他のKRAS変異も標的とするELI-002の新規製剤を用いる第2相試験が本年後半に開始される予定である。AMPLIFY-201試験の予備データは、2023年に米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会と米国がん学会(AACR)の膵がんに関する特別会議で発表された。

AMPLIFY-201試験はElicio Therapeutics社の支援を受けた。著者の完全なリストと開示情報はこちらに掲載されている。

  • 監訳 泉谷昌志(消化器内科、がん生物学/東京大学医学部附属病院)
  • 翻訳担当者 渡邊岳
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  • 原文掲載日 2024/01/09

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