進行性神経内分泌腫瘍に二重作用薬カボザンチニブが有効

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)

腫瘍細胞の増殖と腫瘍血管新生を標的とするカボザンチニブ(販売名:カボメティクス)は、膵外神経内分泌腫瘍および膵神経内分泌腫瘍の患者において、プラセボと比べて無増悪生存期間を大幅に改善した

がん細胞の増殖回路と血流へのパイプラインを同時に攻撃する薬剤は、進行した神経内分泌腫瘍患者を対象とした臨床試験で有望な結果をもたらしたことが、ダナファーバーがん研究所の研究者が主導した研究で示された。

ダナファーバーのカルチノイド・神経内分泌腫瘍プログラム責任者であるJennifer Chan医師(MPH)は、2023年10月22日にスペインのマドリードで開催される欧州臨床腫瘍学会(ESMO)でCABINET試験の結果を発表する予定である。Chan氏は本試験の筆頭著者である。ダナファーバー大腸がんセンター共同ディレクターのJeffrey Meyerhardt医師(MPH)が上席著者である。

カボザンチニブという薬剤を投与された患者は、プラセボを投与された患者に比べ、疾患の悪化なく有意に長く生存した。この結果は、腎細胞がん、肝細胞がん、甲状腺がんの一部の患者に対して米国食品医薬品局(FDA)が承認しているカボザンチニブが、治療後も増殖と転移を続ける神経内分泌腫瘍患者にも有効であることを示唆している、と研究者らは述べている。

米国では毎年12,000人以上が神経内分泌腫瘍と診断されている。この腫瘍は神経内分泌細胞(神経とホルモンを産生する細胞の特徴をもつ)から始まり、体内の複数の部位に発生する可能性があり、最も多いのは消化管、肺、膵臓である。治療には、がんの部位や病期に応じて、手術、標的療法、ペプチド受容体放射性核種療法、化学療法、その他の局所治療アプローチがある。これらの治療後もがんが増殖や転移を続ける患者に対するより良い治療選択肢が緊急に必要とされている。

「近年、進歩もみられますが、進行した神経内分泌腫瘍患者、特に現在利用できる選択肢でがんが進行した患者においては、新たに効果的な治療法が緊急に必要な状態のままです」とChan氏は述べた。「カボザンチニブで血管新生や他の成長因子経路を標的とすることは、新しい治療戦略となります」

カボザンチニブは複数の方法で腫瘍細胞を弱体化させる。体内の血液供給に利用されるタンパク質であるVEGFの受容体をブロックし、腫瘍細胞の生存と転移の鍵となるc-MET、AXL、RETなどの受容体もブロックする。

本試験には、進行した膵外(膵臓以外で発生)神経内分泌腫瘍患者197人と膵神経内分泌腫瘍患者93人が登録された。患者は米国国立がん研究所(NCI)が資金提供するNCI臨床試験ネットワーク(NCTN)内の施設で登録された。無作為に選ばれた参加者の3分の2はカボザンチニブ60mg錠を毎日服用し、それ以外の参加者にはプラセボ(不活性な錠剤)が投与された。

研究者らは全参加者について無増悪生存期間(PFS)、すなわち病勢が悪化するまでの生存期間を測定した。追跡期間中央値13.9カ月で、カボザンチニブを投与された膵外腫瘍患者のPFSは8.3カ月であったのに対し、プラセボ投与群では3.2カ月であった。追跡期間中央値16.7カ月において、カボザンチニブを投与された膵腫瘍患者のPFSは11.4カ月であったのに対し、プラセボを投与された患者では3.0カ月であった。

カボザンチニブの副作用は、この薬剤の他の試験で認められたものと同様であった。高血圧、疲労、下痢、皮疹などである。

「CABINET試験の結果は非常に有望です」とChan氏は言う。「カボザンチニブは、治療歴のある膵外神経内分泌腫瘍および膵神経内分泌腫瘍患者の転帰を有意に改善しましたので、患者にとって新たな治療選択肢となる可能性があります」

CABINET試験は、米国国立衛生研究所の一部であるNCIが治験依頼者であり(U10CA180821、U10CA180882)、NCIが出資する臨床試験グループAlliance for Clinical Trials in Oncologyの主導の下で、Exelixis社とNCIがん治療評価プログラム(NCI-CTEP)との共同研究の一環としてNCTNが参加して実施された。

  • 監訳 泉谷昌志(消化器内科、がん生物学/東京大学医学部附属病院)
  • 翻訳担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2023/10/22

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