免疫チェックポイント阻害薬が切除不能な肝がんに対する最良の標準治療となる可能性
切除不能な肝細胞がん(HCC)の患者において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、標準治療と比較して優れた有効性と安全性を示したとするメタ解析が行われた。
「免疫チェックポイント阻害薬は、標準治療と比較して全生存期間、無増悪生存期間、全奏効率、治療関連有害事象のすべての評価項目において優れた有効性と安全性を示していた」ので、この知見には驚いているとOncoclínicas(ブラジル、ベロオリゾンテ)のAlexandre Jácome医師は述べた。
「ガイドラインでは、切除不能な肝細胞がんの一次治療薬として免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬の併用が認められていますが、血管新生阻害薬が適さない患者には依然としてチロシンキナーゼ阻害薬が推奨されています」と同医師は指摘している。
「今回の研究結果を踏まえれば、免疫チェックポイント阻害薬は、一次治療では併用療法や単剤療法に関わらず選択されるべきであり、免疫チェックポイント阻害薬の投与を受けたことのない患者には二次治療で標準的な治療とするべきです」と同医師は述べている。
JAMA Network Open誌に報告されているように、Jácome医師らは、切除不能な肝細胞がんに対して行われたランダム化臨床試験で免疫チェックポイント阻害薬の治療と標準治療を比較している2010年~2020年の文献を検索した。
主要評価項目は、全生存期間、無増悪生存期間、全奏効率、治療関連有害事象であった。
1,836の試験中3つの試験が採用され、合計1,657人の患者が対象となった(免疫チェックポイント阻害薬治療985人、標準治療672人)。
そのうち2つの試験で免疫チェックポイント阻害薬の単剤療法を評価しており、1つの試験では免疫チェックポイント阻害薬とベバシズマブ(販売名:アバスチン)の併用療法を検討していた。
免疫チェックポイント阻害薬の治療は、標準治療(一次治療でソラフェニブ、二次治療でプラセボなど)と比較して、全生存期間(ハザード比0.75)、無増悪生存期間(ハザード比0.74)、全奏効率(オッズ比2.82)が有意に改善したとJácome医師は述べている。
グレード3または4の治療関連有害事象が発生する確率は、免疫チェックポイント阻害薬の方がソラフェニブ(販売名:ネクサバール)よりも低かった(オッズ比0.44)。
「このメタ解析から、切除不能な肝細胞がんの一次全身療法としての血管新生阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用で生存率が改善することが明らかとなっています」と著者らは結論づけている。
ノースウェルヘルスがん研究所(ニューヨーク州レイク・サクセス)の肝胆膵外科医であるDanielle DePeralta医師は、ロイター ヘルスへの電子メールで次のようにコメントしている。
「(切除不能な肝細胞がんに対する)全身療法の選択肢は、以前はソラフェニブに限られていました。しかし、この4年間でアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体薬、販売名:テセントリク)とベバシズマブ併用療法などの新しい治療薬が一次治療または二次治療として承認されました。これは大変喜ばしいことなのですが、これらの薬剤をどのように組み入れ、どのような順序で使用するのが最適なのか、見極めるのは難しいかもしれません」。
DePeralta医師は次のようにも語っている。「著者らは、免疫チェックポイント阻害薬によって転帰が改善することや毒性が低くなることを報告していますが、これは主にIMbrave150試験によってもたらされたものです。(https://bit.ly/3ky2aF8)
この試験に基づき、適切に選択された患者において、アテゾリズマブとベバシズマブの2剤併用療法がソラフェニブに代わり望ましい一次治療となったという、著者らの意見には同意します。しかし、出血のリスク、自己免疫疾患、B型肝炎およびC型肝炎の同時感染を理由として2剤併用療法の対象とならない患者が多くいます。
今後は、治療法を個別化し、免疫チェックポイント阻害薬に反応する可能性が高い患者、他の治療法のほうが良い患者を事前に予測する方法がぜひとも必要です。
免疫チェックポイント阻害薬で素晴らしく反応が良いこともありますが、それは少数の患者に限られています」とDePeralta医師は指摘する。「外科医として私が特に関心を持っているのは、これらの薬剤をどのように活用したら、切除不能な肝細胞がん患者のがんが縮小して外科的切除の対象となり治癒が見込めるようになるのか、ということです」。
原典:https://bit.ly/3q3dGMU JAMA Network Open誌、オンライン版 2021年12月6日
翻訳担当者 白濱紀子
監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
原文掲載日
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