ダブラフェニブ+トラメチニブ併用はBRAF変異陽性進行胆管がんに有効
希少疾患の患者を対象とした初の前向き臨床試験で
ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法が新たな治療選択肢として支持される
BRAF V600E遺伝子変異陽性の胆管がん患者を対象に、BRAF阻害薬であるダブラフェニブ(販売名:タフィンラー)とMEK阻害薬であるトラメチニブ(販売名:メキニスト)併用療法の第2相試験がテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者ら主導で行われ、全奏効率(ORR)51%を達成した。
本試験は、BRAF遺伝子変異陽性の胆道がん患者を対象とした初めての前向き試験であり、この分子標的薬の併用療法が治療抵抗性進行がん患者の切望する治療選択肢になり得ることを示唆している。本試験の結果は、Lancet Oncology誌で本日公表された。
「本試験で、ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法が臨床的に有用であると判明しました。この併用療法は患者の治療選択肢として検討されるべきであると考えられます」と、筆頭著者であるVivek Subbiah医師(がん治療研究部門、准教授)は述べた。
「この試験結果により、患者のBRAF遺伝子検査を定期的に行う必要性も高まりました。がん個別化治療の進歩に伴い、希少がん病変に存在する遺伝子変異が治療可能で、患者は現実に分子標的薬の利益を受けることがわかってきています」。
本試験は、現在進行中の第2相多施設共同非盲検試験の一部であり、BRAF V600E遺伝子変異を有するさまざまな希少がんを対象とするバスケット試験である。試験はダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法の有効性と安全性の評価を目的とした。胆管がん患者群では、全身療法を一度でも受けたことのある患者43人を登録した。
試験参加者の人種別内訳は、白人91%、日系アジア人5%、東アジア系アジア人2%、アラビア/北アフリカ系白人2%であった。年齢中央値は57歳で、女性が56%、男性が44%であった。
胆管がんは米国で年間約8,000人が診断されている希少疾患だが、ほとんどの症例は進行期に診断されるため、臨床成績は一般的に悪く、5年生存率は20%未満である。標準治療は、切除可能であれば外科切除で、そうでない場合、化学療法である。
進行期の患者では、化学療法による全生存期間の中央値は1年未満であり、効果的な新しい治療法へのニーズは非常に高いとSubbiah氏は説明した。
胆管がんと診断された患者のうち5〜7%にはBRAF遺伝子の変異が認められ、なかでもV600E遺伝子変異を有する患者は予後不良となる可能性が高い。BRAFを標的とした単剤治療試験で、これらの患者への有効性が示されているものの、二次発がんを含む重大な毒性が示されている。
しかし、BRAF阻害剤を、同じシグナル伝達経路の下流で作用するMEK阻害剤と併用することの有効性は確立されており、メラノーマ(悪性黒色腫)、肺がん、未分化甲状腺がんなどの他のがん種での適応がFDAによって承認されている。胆管がんの治療薬としては現在承認されていない。
今回の試験では、この併用療法の研究者自身が評価した全奏効率(ORR)は51%(22人)であった。奏効期間の中央値は8.7カ月で、7人の患者が12カ月を超えて奏効を継続していた。
無増悪生存期間中央値は9.1カ月、全生存期間中央値は13.5カ月であり、12カ月時点で56.4%、24カ月時点で35.8%の患者が生存していた。
すべての試験参加者で1つ以上の有害事象がみられ、そのなかで最も多かったのは発熱、嘔気、嘔吐、下痢、疲労(倦怠感)であった。また、24人(56%)が有害事象共通用語規準(CTCAE)のグレード3(重症または医学的に重大であるが、ただちに生命を脅かすものではない)または、グレード4(生命を脅かす)の有害事象を経験し、そのなかで最も多かったのは、肝臓や胆管に存在する酵素であるγ-GTP(γ-グルタミルトランスフェラーゼ)の上昇であった。著者らによると、この併用療法を他のがん種に対して以前行った際も同一の副作用が発生していた。
共著者のMilind Javle医師(消化器腫瘍内科学教授)は、次のように述べている。「胆管がんの治療は急速な変化を遂げています。分子標的療法は有効な治療として浸透しつつあり、今回の研究はその良い例です。これは、治療の選択肢が限られていることの多いBRAF V600E変異陽性胆管がん患者にとって重要な進歩なのです」。
この研究はグラクソ・スミスクライン社とノバルティス社の支援を受けた。MDアンダーソンがんセンターの共著者には、Milind Javle医師(消化器腫瘍内科学)が含まれる。原文、共著者、および、開示事項の一覧は、こちらのLancet Oncology誌にて公開されている。
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