放射性マイクロスフィア(放射性微小ガラス球)
放射性マイクロスフィア(放射性微小ガラス球) 2003/8
オーストラリアのSIRTex Medical社のSIRスフィアhttp://www.sirtex.com/
>SIRスフィアとはyttrium-90(イットリウム-90)を含み、β線を放出する生態適合性(毒素や損傷を生じたり拒否反応を起こすことなく生体組織、器官系と適合すること)マイクロスフィアです。
Therasphere http://www.nordion.com/
SIRスフィアは、注射器で注入され血管を通って肝臓内の腫瘍を標的にして向かっていきます。そして腫瘍の毛細血管で留まるようになっています。SIRスフィアは腫瘍がどこにあろうとそれらをターゲットにしてそこへ到達するため、腫瘍の数や位置を突き止める必要はありません。また、一度ターゲットに到達するとSelective Internal Radiation Therapy (SIRT)―選択的内放射線療法―として知られる方法で放射します。そしてそれによって腫瘍を破壊に導き、反対に正常な肝臓組織のほとんどは相対的に影響を受けないで済むのです。
>・サースフィアを受けた患者の特に顕著な効果として、腫瘍サイズが18%~44%縮小。
・腫瘍マーカーCEAの値が47%~72%に減少
・CEA値が下がった患者の割合の中央値は53%~76%
・2年生存率は26%~39%に増加
・3年生存率は6%~17%増加
1997年 第3相臨床試験終了
Sirsphereはオーストラリア、ニュージーランド、アジアなど多くの国で既に転移肝臓癌の通常治療としても用いられています。
アメリカ、カナダではTherasphereが主流。
2002年 ASCO meetingでも発表。 (Abstract number 599 (100474)
FDA承認済み。
SIR-Sphereを肝動脈に入れるのですが、肝腫瘍の新生血管は肝動脈が栄養血管なので大部分のマイクロスフィアは腫瘍内の血管にとどまり(embolization)そこで放射線をだします。もちろんyttrium90の半減期は67時間なので患者さんは、3から4日入院する必要があります。腫瘍からもれたマイクロスフィアは肝の正常組織にとどまるのですがそれは気にしなくてよいレベルです。腫瘍には動静脈シャントがあることがあり、シャントを通って肺にマイクロスフィアがいってしまうことがあるので、事前にアイソトープをつかって動静脈婁の有無を調べて、もし10%以上あればマイクロスフィアの量を減らす必要があること。マイクロスフィアは照射がおわっても当然組織内にとどまっています。大腸癌の肝転移に使用するのを米国のFDAは認めたとのこと。 Dr.sakatani201
マイクロスフィア治療を受けられたカナダの患者さんのメールより
2001年、転移性乳癌の肝臓、胸膜、骨転移になりました。胸膜と骨転移はファーストライン治療であるビノレルビンとセカンドラインであるフェマーラ(現在の治療)に大変よく奏効しましたが、肝臓転移はそれらより進行が早いものでした。
2002年12月に5mmから2cmの大きさの肝臓病変が主に右肝葉に少なくとも32個確認されました。それらは2,3ヶ月はフェマーラで安定していましたが、私にはその肝腫瘍が強烈に恐ろしく思えましたので肝臓の治療を探しました。はじめはRFAを調べましたが、私の場合、数が多すぎて適応でないことがわかりました。そこでたどり着いたのがマイクロスフィアー治療でした。
マイクロスフィアには2つの競合する製品があります。オーストラリアのSIRTex Medical社のSIRスフィアとカナダのMDS Nordion 社のTheraスフィアです。
マイクロスフィアのFDA認可は原発肝臓癌もしくは大腸癌からの肝転移でした。私のような乳癌からの転移肝臓癌には認められていなかった(off label)のですが、私は適応外で治療してくれる医師をいろいろなところからの情報で探し出し、マイクロスフィア治療の経験が豊富で乳癌にも使用した経験を持つ3人の医師を見つけました。(医師名、施設名略)
私はMRIのCDと簡単な治療記録を送り、のち面談しました。結局、研究対象であるという理由で無料で治療を申し出てくれた医師に決めました。
治療費:治療は通常外来、もしくは1泊の入院で行います。本来治療費は高額です。両社とも片肝葉のみで$US10,000ですが、$US15,000に値上げする模様です。片方の肝葉は別の日に2度にわたって施されなければなりません。したがって$30,000プラス諸費用$10~15,000なので$4~50,000見込んでおく方がよいでしょう。カナダの保険では支払われませんが、米国の保険ならおりるでしょう。
SirTexとMDS-Nordionの代表者は、もし保険が利かない場合、会社はなんらかの支援措置を取ってくれるかもしれないと言っていました。というのも、両社は現在米国での支配権をどちらが勝ち取るかを必死になって競っているのですから。
治療:治療は極めて簡単で、2時間ほどですみます。大腿部の動脈にカテーテルを通し(局部麻酔)、そこからマイクロスフィアを注入します。1週間ほど少し疲労感とむかつきがありましたが、治療3ヵ月後の私の最近のMRIの結果、実際全ての腫瘍が消えていたのです。ほんの2-3ヶ所ぎりぎり判定できる部分がありましたが、壊死した部分でしょう。
もちろん、私はその治療の間ずっとフェマーラも服用していましたから、管理された実験ではありませんでした。また、フェマーラが奏効したのだとの考えも可能ですが、マイクロスフィア治療の前からフェマーラは続けており、肝臓にはあまり効かなかったことを考えれば、ほぼそれはないと思われます。
野中 希 訳
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