カペシタビンが胆道がん生存期間を1年以上延長する
ASCOの見解
「本試験は標準治療法が今までなかった胆道がんの補助療法に関する長年の課題を解決するのに役立ちます。この経口剤による化学療法は広く普及しており、患者に1年以上、生存を延長する機会を提供することができます」と、ASCO会長Daniel F. Hayes医師(FACP、FASCO)は語った。
胆道がん(胆管がんおよび胆のうがん)患者447人を組み入れた第3相ランダム化試験において、術後にカペシタビンを投与した患者は手術だけを実施した患者と比較して生存期間が中央値で15カ月延長したことが示された。この知見は本疾患の新たな標準治療の礎となる可能性がある。
BILCAPと呼ばれる本試験は、このまれで治療が困難ながんにおいて、補助療法使用を検討するのに十分な規模で実施した初のランダム化試験の一つである。本試験はシカゴで開催予定のASCO2017年次総会で発表されることになっている。
「胆道がんは、近年まで治療に関する研究が少なかったため、まったく必要性が満たされていない疾患です。われわれの試験は十分な数の患者を対象として実施した初の試験として、術後化学療法が生存期間を有意に延長でき、副作用もわずかであることを示しています」と、英国サザンプトン大学の外科教授である本試験の筆頭著者、John N. Primrose医師は述べた。
胆道がんおよびBILCAP試験について
肝内および肝外胆管と胆のうは胆道を形成する。胆道は、脂肪消化に役立つ肝臓の産物である胆汁を運び、貯蔵する。胆道がん患者は、約20%しか手術で切除できず、手術が成功しても5年生存の割合は10%に満たないという、かなりの困難に直面する。
英国で本試験がデザインされた頃は胆道がんに対する標準的な補助療法がなかった。よく使われているいくつかの全身療法からカペシタビンを選択したのは、錠剤で投与できることと、転帰が同様に不良の疾患である膵がんにおいて有効性を示したからである。試験開始後には、英国で実施された他の試験の結果に基づき、化学療法薬ゲムシタビンおよびシスプラチンの二剤併用が、進行胆道がんに対する現在の標準治療法となった。
主な知見
試験では患者447人を、カペシタビンの6カ月投与、または、がん再発の観察のいずれかに無作為に割り付けた。80%以上の患者に定期的な臨床検査、CT検査、後に腫瘍バイオマーカー決定に役立つ可能性があるさまざまな血液検査を3年間以上行い、追跡した。
観察群の患者が術後、中央値36カ月生存したのに対して、カペシタビン投与群の患者は中央値51カ月生存した。カペシタビンは観察群と比較して死亡率の20%低下に関連していたが、カペシタビン投与を早期中止した患者を含めた447人の本試験全集団では統計学的に有意差はなかった。しかし、試験実施計画書に基づき、治療を受けた患者430人のサブグループでは、カペシタビンは観察群と比較して25%の死亡率低下に関連しており、この差は統計学的に有意であった。
がん再発までの期間の中央値はカペシタビン投与群の患者で25カ月、対照群の患者で18カ月であった。治療に関連した最も顕著な副作用は手足の発疹であり、これはカペシタビンでよくみられる副作用である。カペシタビン投与による死亡はなかった。
次の段階
「われわれの試験で得た最大の利益の一つは、ゲノム解析に利用できる非常に正確な臨床データに関連する腫瘍組織を収集できたことです。今世紀初頭に本試験を計画し始めてから、がんをその遺伝子プロファイルに基づいて治療するいくつかの薬剤など、多数の新規薬剤が利用可能になりました。これこそがわれわれの収集した腫瘍組織が重要な役割を担う分野です」とPrimrose医師は語った。
一方、Primrose医師は次の点を強調した。その新しい手法のためには、胆道がんの臨床試験を早急に展開し、患者を募る必要がある。本試験の10年というタイムラインは、治療および手法が急速な発展を遂げる時代には長すぎるからである。国際的な協力が切望されるとPrimrose医師は話す。
胆道がんには4種類の異なるタイプがあり、そのうちの3種は肝臓と肝管が含まれるタイプで、1種は胆のうが含まれるタイプであるため、著者らは現在、サブグループ解析に取り組んでいる。この解析は、補助化学療法が最も有益である患者をより正確に特定するのに役立つ可能性がある。
本試験は英国がん研究所から助成金を得た。
全要約についてはここを参照
ASCO2017年次総会のニュースプランニングチームに関してはこちらの情報開示を参照。
Daniel F HAYES医師(FACP、FASCO)の情報開示:
OncoImmune 社およびInBiomotion社の株式その他の持ち分の所有権。Lilly社から謝礼。 Janssen Research & Development (Inst.)社、 AstraZeneca (Inst.)社、Puma Biotechnology (Inst.)社、 Pfizer (Inst.)社、Lilly (Inst.)社、Merrimack Pharmaceuticals/Parexel International Corporation (Inst.)社から研究助成金。循環性腫瘍細胞に関してJanssen Diagnostics社へのライセンス技術提供による使用料を伴う特許権、特許権使用料その他の知的財産権。
Janssen Diagnostics社から旅費、宿泊費、諸費用。
Bruce E Johnson医師(FASCO)の情報開示:
KEWグループの株式その他の持ち分の所有権。Chugai Pharma社、Merck社から謝礼。Amgen社、AstraZeneca社、Boehringer社、Ingelheim社、 Chugai Pharma社、Clovis Oncology社、Genentech社、GlaxoSmithKline社、KEW Group社、Lilly社、Merck社、Novartis社、Transgene社の顧問相談役。Novartis (Inst.)社、Expert Testimony for Genentech.社から研究助成金。
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
肝臓がん・胆嚢がんに関連する記事
欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライト
2024年12月20日
術前免疫療法薬により高リスク肝がんの手術適応が増え、予後改善の可能性
2024年9月17日
肝がん患者(従来の基準では手術の対象とならなかった患者など)に対し、術前に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を投与したところ、手術を先...
ERBB2/3遺伝子異常を有する胆道がんにペルツズマブ+トラスツズマブ併用が有望
2024年5月23日
意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果
2024年2月19日
「運動習慣の改善や食事制限...