米国におけるC型肝炎は今後22年で大幅に減少
米国におけるC型肝炎は、今後22年で大幅に減少
C型肝炎根絶に向けた好ましい傾向がコンピューター・シミュレーションで予測
MDアンダーソンがんセンターニュースリリース
テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターとピッツバーグ公衆衛生大学院が主導したコンピューター・シミュレーションで、効果的な新薬と検診により、2036年までにはC型肝炎は大幅に減少する可能性が示された。本研究の結果は、Annals of Internal Medicine誌8月5日号で発表された。
「C型肝炎(C型肝炎ウイルス;HCV)は肝癌の主原因で、米国では毎年15,000人以上が同疾患で亡くなります」とJagpreet Chhatwal博士(MDアンダーソンがんセンター保健サービス研究助教兼本研究の責任著者)は述べた。
「今よりも治療を受けやすくし、より積極的な検診ガイドラインを導入することが出来れば、慢性C型肝炎の症例数を減少させ、より多くの肝癌症例を予防し、そして、肝癌関連死を減少させることができます」とChhatwal氏は述べた。
HCVは血液を介して感染するウイルスであるが、注射針の使い回しや汚染された医療器具の使用、ならびに、十分に滅菌されていない刺青やピアス用道具により、伝播される。ベビーブーマー(米国で1945~1965年に出生した人々)は、HCV曝露リスクが最も高い。米国では、HCVに対する輸血用血液の大規模検査が1992年に開始された。1992年以前は、輸血や臓器移植を介して多くの人々がHCVに感染した。
ベビーブーマーは、米国内の推定HCV感染者270~390万人の75%を占める。HCV感染者の半数は、自分たちが感染していることに無自覚である。米国疾病予防管理センター(CDC)と米国予防医学専門委員会(USPSTF)は現在、ベビーブーマーに対して1回のHCV検査を受けることを推奨する。
Chhatwal氏らは本研究で30件を超える臨床試験を含む情報を用いる数理モデルを使用して、新薬である「直接作用型抗ウイルス剤」の効果と慢性C型肝炎症例に対する検診の影響を予測した。
研究者らはコンピューター・モデルを開発し、2001~2050年での疾病動向の解析・予測を実施した。HCV感染率に関する最新の全国調査を含む病歴データを使用して、本モデルを確認した。米国では2036年までに、新規検診ガイドラインと新薬により、HCV感染者は1,500人中1人程度に減少すると研究者らは予測した。
ベビーブーマーがHCV検査を1回受けることで、今後10年にわたりHCV感染例487,000例が特定されると、本モデルは予測する。
「新規検診ガイドラインは影響力がありますが、無治療だった場合に進行期に至り死亡するであろう多数のC型肝炎患者を特定していません」とChhatwal氏は述べた。
「C型肝炎を減少させることは、壮大な、人命を救う偉業になるでしょう」と筆頭著者であるMina Kabiri博士課程学生(ピッツバーグ公衆衛生大学院)は述べた。「しかし、そうするためには、検査数の増加を介して特定された感染者を、HCV治療を管理することができる一次診療医を増やすことを主に行うことで、医療施設に行きやすくし、かつ、治療の受け入れ態勢を増強させる必要があります」。
研究者らは本研究で、全国規模のHCV検査を1回実施することでHCV感染者933,700人を特定することができると予測した。Chhatwal氏らは、全国規模のHCV検査と適時な治療により、今後12年にC型肝炎が大幅に減少することも予測した。上記の検査により以下の症例がさらに予防できる。
• 肝臓関連死 161,500例
• 肝移植 13,900例
• 肝細胞癌(最も頻度の高い肝癌) 96,300 例
Chhatwal氏の最新研究は、計量的手法を使用する癌予防戦略の評価を中心にしているが、効果の高い治療法と最新の検診法を利用することでC型肝炎の蔓延に対処する絶好の機会が得られるとChhatwal氏は述べる。「ですが、私たちは、効果が見込まれる治療法を適時にかつ手の届く費用で確実に提供する必要があります」。
「1日1,000ドルが必要な新規治療法は議論になっており、また、 全ての感染者にとって適時に利用する際の障壁になる可能性があります」とChhatwal氏は述べた。
「最新の検診勧告は慢性C型肝炎罹患率の減少に有用ですが、より積極的な検診勧告と治療法のさらなる進展は、HCVによる負荷の減少、肝臓関連死の予防、そして最終的にはHCVの根絶には欠かせません」とChhatwal氏は述べた。
米国国立癌研究所(KL2TR000146)は本研究に資金を供給した。
本研究に関与した他の研究者は以下のとおりである:Mark Roberts, M.D. of the University of Pittsburgh Graduate School of Public Health; Alison Jazwinski, M.D. of the University of Pittsburgh Medical Center, and Andrew Schaefer, Ph.D. of University of Pittsburgh Swanson School of Engineering.
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
肝臓がん・胆嚢がんに関連する記事
欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライト
2024年12月20日
術前免疫療法薬により高リスク肝がんの手術適応が増え、予後改善の可能性
2024年9月17日
肝がん患者(従来の基準では手術の対象とならなかった患者など)に対し、術前に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を投与したところ、手術を先...
ERBB2/3遺伝子異常を有する胆道がんにペルツズマブ+トラスツズマブ併用が有望
2024年5月23日
意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果
2024年2月19日
「運動習慣の改善や食事制限...