ペムブロリズマブ+化学療法は進行胆道がんの一次治療に有益
米国癌学会(AACR)
第3相KEYNOTE-966臨床試験の結果から、ゲムシタビンとシスプラチンにペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)を追加することで、転移を有するまたは切除不能な未治療の胆道がん患者の全生存期間が延長したことが明らかとなり、4月14日から19日まで開催された米国癌学会(AACR)年次総会2023にて発表された。
胆道がんは、胆嚢、胆管、ファーター乳頭部に発生するまれな悪性腫瘍であり、患者の予後は不良である。
「ゲムシタビンとシスプラチンの標準化学療法レジメンで治療を受けた進行胆道がん患者の全生存期間中央値は1年未満であり、進行後の治療選択肢は限られています」と、発表者でカリフォルニア大学サンフランシスコ校ヘレンディラー・ファミリー総合がんセンターの臨床医学教授であるRobin “Katie” Kelley医師は述べた。
「胆道がんに対してもっと効果的な治療法や併用療法が緊急に必要とされています」と、同医師は付け加えた。
Kelley医師らは国際共同KEYNOTE-966第3相臨床試験を実施し、標準的な化学療法に免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブを追加することで、進行した胆道がん患者の生存転帰に影響を与えるかどうかを検討した。
本試験では、がんに対する全身療法を受けたことのない、転移を有するまたは切除不能の胆道がん患者1,069人を登録した。患者は、ゲムシタビン+シスプラチンとの併用で、ペムブロリズマブ(533人)またはプラセボ(536人)の投与を受ける群のいずれかに無作為に割り付けられた。主要評価項目は全生存期間であった。副次的評価項目は、無増悪生存期間、奏効率、および効果持続期間であった。
ペムブロリズマブ群の全生存期間中央値は12.7カ月であったのに対し、プラセボ群では10.9カ月であった。中央値25.6カ月の追跡調査後、ペムブロリズマブによる治療を受けた患者は、化学療法を単独で受けた患者に比べて死亡リスクが17%低かった。
奏効率は両群間で差がなかったが、ペムブロリズマブ群の患者は効果持続期間が長かった(中央値で9.7カ月対6.9カ月)。しかし、Kelley医師は、統計学的に比較した解析が行われなかったため、効果持続期間の延長は記述的なものと考えるべきと指摘した。また、ペムブロリズマブ群では、追跡期間中央値13.6カ月後の病勢進行または死亡のリスクが14%低かったが、この差は本試験で事前に規定された統計的有意性の要件を満たさなかった。無増悪生存期間中央値は、ペムブロリズマブ群で6.5カ月、プラセボ群で5.6カ月であった。
グレード3~5の有害事象が治療群間で同程度の割合で観察された(ペムブロリズマブ群85.3%、プラセボ群84.1%)。薬剤関連のグレード5の有害事象がペムブロリズマブと化学療法を併用した患者では1.5%に認められたが、プラセボと化学療法を併用した患者では0.6%であった。潜在的な免疫介在性事象およびインフュージョンリアクション(投与時反応)が、ペムブロリズマブ群の22.1%およびプラセボ群の12.9%に認められた。
「これらのデータは、進行胆道がん患者において、ペムブロリズマブなどの免疫チェックポイント阻害薬をゲムシタビンとシスプラチンによる初回化学療法と併用することにより、持続的な免疫応答と生存期間の延長が期待できることを裏付けるものです。効果の持続性と生存期間が延長した患者の割合は、この治療が困難ながん群において本当に意味のあるものです」とKelley医師は述べた。
2022年9月、別の免疫チェックポイント阻害薬であるデュルバルマブ(販売名:イミフィンジ)が、進行胆道がん患者に対する一次治療として化学療法との併用で承認された。この承認は、TOPAZ-1臨床試験の結果に基づいている。
Kelley医師は、「KEYNOTE-966試験とTOPAZ-1試験は、ともにこの分野における大きな進歩であり、化学療法と併用した免疫チェックポイント阻害が、進行胆道がん患者の生存期間と効果持続期間を延長する一次治療薬としての役割を検証しています」と述べ、KEYNOTE-966試験はサンプルサイズが大きく、アジア以外の国から多くの患者が登録されていると付け加えた。
「2つの試験のもう1つの重要な違いは、TOPAZ-1試験の患者は6カ月後に化学療法を中止して維持療法としてデュルバルマブまたはプラセボを継続したのに対し、KEYNOTE-966試験の患者はゲムシタビンとペムブロリズマブまたはプラセボを6カ月を超えて継続することが許可されました。これは世界各地で異なる実際の治療法を反映しています」と同医師は続けた。
KEYNOTE-966試験の限界は、肝内胆管がん患者が一般集団における同疾患の発生率と比較して試験集団に過剰に存在したため、試験集団における肝外および胆嚢を発生部位とする患者数が少なかったことである。
- 監訳 泉谷昌志(消化器内科、がん生物学/東京大学医学部附属病院)
- 翻訳担当者 坂下美保子
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- 原文掲載日 2023年4月16日
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