アテゾリズマブ+ベバシズマブ術後療法が肝臓がん外科的切除後の再発を遅らせる可能性

米国がん学会(AACR)

アテゾリズマブ(販売名:テセントリク)とベバシズマブ(販売名:アバスチン)による術後補助療法は、外科的切除後またはアブレーション治療後の肝細胞がん(HCC)患者の無再発生存期間を延長することが、第3相臨床試験IMbrave050の結果から明らかになった。この結果は、4月14日~19日に開かれた米国がん学会(AACR)年次総会2023で発表された。

早期HCCに対する根治療法としては、外科的切除や焼灼・冷却でがん細胞を破壊する熱アブレーション治療が主流である。しかし、治癒を目的として行った外科的切除やアブレーション治療の5年後における再発リスクは70~80%に達すると、学会発表者のPierce Chow医師(FRCS(E)、PhD、シンガポール国立がんセンターおよびシンガポール総合病院の上級顧問外科医、シンガポールのDuke-NUSメディカルスクール教授およびプログラムディレクター)は述べる。

「HCCに対する術後補助療法のエビデンスは確立しておらず、治癒を目的とした外科的切除やアブレーション治療を受けた患者は、他のがん(例えば同様に治癒を目的とする大腸がんや乳がん)の患者に比べて、再発率が著しく高く、全生存期間が短い傾向がある」とChow医師は述べる。「IMBrave050の良好な結果は、HCCにおけるこの重大かつ緊急の未解決臨床ニーズに対処するものである」。

無作為化比較第3相試験IMbrave050は、免疫チェックポイント阻害剤アテゾリズマブと分子標的治療薬ベバシズマブの併用術後療法が、外科的完全切除後またはアブレーション治療後の現在の標準治療である積極的サーベイランス(訳注:治療は差し控えながら検査結果が変化して病態の悪化が示されるまで患者の状態を綿密に観察していく治療計画)と比較した際に、再発を遅延または予防する効果が得られるかを検討するためにデザインされた。

本試験では、腫瘍の大きさや数、血管内やリンパ管内に存在するがん細胞の有無、がんのグレードなどの基準に基づいて、外科的切除後またはアブレーション治療後に再発するリスクが高いHCC患者を登録した。対象患者は、アテゾリズマブ+ベバシズマブを3週間ごとに1年間または17サイクル投与する群と、1年間積極的サーベイランスを受ける群に、1:1の割合で無作為に割り付けられた。積極的サーベイランスを受ける群の患者で再発がみられた場合には、アテゾリズマブ+ベバシズマブによる併用療法群に切り替えることが可能であった。主要評価項目は、独立審査機関評価による無再発生存期間(IRF-RFS)とした。

追跡調査期間中央値17.4カ月の時点で行われた中間解析の結果によると、本試験は主要評価項目を達成し、アテゾリズマブとベバシズマブの併用療法は、外科的切除後またはアブレーション治療後の補助療法に用いた場合、IRF-RFSを有意に延長した。アテゾリズマブ+ベバシズマブによる併用療法群の患者は、積極的サーベイランス群の患者と比較して、再発または死亡のリスクが28%減少した。中間解析の結果時点では、IRF-RFSの中央値はいずれの群も未到達であった。

Chow医師は、今回の試験IMbrave050は切除不能なHCCに対する同様の薬剤の併用療法を評価した前回の試験IMbrave150よりも、患者の治療期間が長かったことを指摘した(アテゾリズマブとベバシズマブの治療期間中央値はそれぞれ、IMbrave050では11.7カ月と11.2カ月、IMbrave150では7.4カ月と6.9カ月)。Chow医師は「治療期間が長くなったにもかかわらず、重篤な治療関連有害事象の発生率はIMbrave150と同等であった。このことは、術後補助療法として用いた場合の本レジメンの忍容性を示している」と述べた。

Chow医師は「IMbrave050は画期的な試験であり、外科的切除またはアブレーションを受けたHCC患者に対する有効な術後補助療法を初めて実証したものである」と述べ、続けて「これらの結果は、HCCに対する術後補助療法における標準治療を確立し、実臨床を変える可能性を持っているだろう」と語った。

Chow医師は、今回示された術後補助療法による良好な臨床成績は、HCCにおける外科的切除やアブレーション治療の臨床適応にも影響を与えるかもしれないと付け加える。「現在、切除可能な病変があっても、腫瘍量や血管浸潤の有無から急速な再発が予想される場合、多くの患者で手術は行われていない。有効な術後補助療法が利用できるようになったことで、外科的切除によって利益が得られる患者の基準を見直すことになるかもしれない」とChow医師は述べた。

本試験の限界は、主要評価項目を予想より早く達成したため、データが十分に成熟しておらず、全生存期間を含む本試験の副次評価項目の結果を判断することができなかったことが挙げられると著者は述べている。「これらの結果については、その後の解析を待つ必要がある」とChow医師は語った。

  • 監訳 中村能章
  • 翻訳担当者 加藤千恵
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  • 原文掲載日 2023年4月16日

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