ネクサバール®が進行肝細胞癌患者における生存を改善

キャンサーコンサルタンツ
2008年8月

SHARP試験グループ所属の研究者らは、ネクサバール®(ソラフェニブ)が、進行肝細胞癌 (HCC)患者において、生存を有意に改善し、腫瘍増大までの期間(監修 者注:原文はtime to progressionだが、time to tumor progressionの誤記と思われる)を2倍に延長したと報告した。この薬剤は、HCC治療において生存を有意に改善した初めての薬剤である。この試験の結果は、2008年7月24日発行のNew England Journal of Medicine誌にて公表された。

この試験の中間集計は、以前、2007年米国臨床腫瘍学会 (ASCO)総会で報告されている。

HCCは、世界中でもっともよくみられる癌腫の一つであるが、米国における罹患率は比較的低い。世界中で、C型肝炎は約1億7千万人に影響を与え、米国における感染者数は増加中である。急性C型肝炎の感染後、ウィルスは多くの患者で体内に残存し、少数ではあるが、慢性化する可能性がある。慢性肝炎は、数十年以上をかけて慢性活動性肝炎や肝硬変へとゆっくりと進行し、最後には末期肝疾患やHCCへと至る。肝硬変を患う患者の約20%で癌を発症することがある。肝硬変を発症するまでには約20年かかり、発癌までには25~30年かかる。肝硬変を併発せずにHCCを発症するケースは稀である。米国において、C型肝炎に関連する肝臓癌は今後20年間で3倍に増加すると予想される。

ハイリスク集団の効果的なスクリーニングと肝炎の初期治療が、HCCの発症を減らす可能性が示されている。したがって、ハイリスク患者集団を特定することが重要とされる。進行HCC患者には治療の選択肢がほとんどない。これまで、進行性HCC患者の治療において、ドキソルビシンが中心的な化学療法剤であった。多施設共同国際試験によって、進行HCC治療において、ネクサバールとドキソルビシンの併用はドキソルビシン単剤と比較して有効性で優れることが示された。フランスの研究者らのレジメンでは、Xelox®として知られるエロキサチン®(オキサリプラチン)とゼローダ®(カペシタビン)の併用療法も、進行HCCの治療において有効性がみとめられた。進行HCC患者は、手術、高周波アブレーション及び化学塞栓術によっても治療することが可能である。

SHARP試験(ソラフェニブのHCCに対する評価に関する無作為化プロトコール〔Sorafenib HCC Assessment Randomized Protocol〕)には、全身療法を受けていない進行HCC患者602例が含まれる。進行HCC患者はネクサバール群(400 mg 1日2回)又はプラセボ群に無作為に割り付けられた。

● 生存期間中央値はネクサバール群で10.7ヵ月に対し、コントロール群で7.9ヵ月であった(HR=0.69, p=0.001)。
● 画像診断による進行までの期間の中央値は、ネクサバール群で5.5ヵ月、プラセボ群で2.4ヵ月であった(p=0.001)。
● 症状を指標とする進行までの期間の中央値は、ネクサバール群で4.1ヵ月、プラセボ群で4.9ヵ月であった(p=0.77)。
● ネクサバール群の患者の2%が部分奏効を示したのに対し、コントロール群では1%であった。

ソラフェニブ及びプラセボを投与された患者で、もっともよくみられたグレード3~4の事象は、 下痢 (ソラフェニブ11%、プラセボ2%)、手足の皮膚反応(8%、1%)、倦怠感(10%、15%)、出血(6%、9%)であった。重篤な副作用は、ソラフェニブ投与を受けた患者では52%で起こったのに対し、プラセボ投与を受けた患者では54%で発現した。これらの研究者らは、ネクサバールは進行HCC患者における生存期間の延長を示した初めての薬剤であり、その毒性プロファイルは管理可能であると結論付けた。

コメント:
最新の臨床試験によると、進行HCCに対する治療において、ドキソルビシンの有効性に対してネクサバールは有意な上乗せ効果を有している(Related News3番目の記事参照)。これらのデータは、SHARP試験のデータとともに、進行HCC患者にとって有望であり、これらの患者に対するファーストライン治療としてのネクサバールの有用性を示すものである。

参考文献:
Llovet J, Ricci S, Mazzaferro V, et al. Sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma. New England Journal of Medicine 2008;359:378-390.


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翻訳担当者 千種葉月

監修 島村義樹(薬学)

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