2007/06/12号◆特集記事「生存期間の延長をもたらす進行肝臓癌の治療」
同号原文|
NCI Cancer Bulletin2007年6月12日号(Volume 4 / Number 19)
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◇◆◇特集記事◇◆◇
生存期間の延長をもたらす進行肝臓癌の治療
分子標的薬ソラフェニブ〔sorafenib〕(ネクサバール〔Nexavar〕)によって、世界的にますます頻度が高くなりつつある致死性疾患である進行肝臓癌の患者の生存期間が改善された。
最終段階のランダム化試験で、ソラフェニブを投与された患者は、プラセボ投与患者より生存期間が3ヵ月近く延長することがわかった。これは臨床的に有意な差であり、予備的な解析結果で明らかにソラフェニブにとって有利な結果が得られたため、試験を早期に中止した。
「初めて進行肝臓癌患者に効果がある薬剤を手にすることができた」と、シナイ山医科大学およびバルセロナ大学のDr. Joseph Llovet氏は言う。同氏はこの結果を6月4日に米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表した。
ソラフェニブは患者が自宅で服用できる錠剤である。腎臓癌に承認されているこの薬剤は、この国際共同試験において患者602人で忍容性が良好であることが認められた。最もよくみられる副作用は、下痢および手足の皮膚反応である。
Dr. Llovet氏は、ここ30年間で進行肝臓癌に関して不首尾に終わった臨床試験は100件を下らないと言う。疾患の初期の患者には、手術や化学療法が治療に用いられるが、進行例に対しては、薬剤などの「全身」療法で成果を収めたものがなかった。
ソラフェニブは今後、進行肝臓癌患者の標準療法となるだろう。このレジメンを土台にして、臨床試験で他の薬剤を特定しようとする取り組みも加速するだろう。学会でそう語ったのは、ウェイクフォレスト大学医学部のDr. A. William Blackstock氏である。
これまで、肝臓癌に向けて開発段階にあるさまざまな治療法がプラセボと比較されてきた。砂糖の錠剤を服用する確率が50%あるために、特に米国では臨床試験への参加を躊躇する患者が多い。ソラフェニブが標準の対照薬としてプラセボに取って代わることで、試験へ参加する患者が増加するだろう。
「これで肝臓癌について歩みを進めることができる」とDr. Blackstock氏は言う。
次の段階では、これまでより初期の疾患でソラフェニブを検討するほか、最終的には他の分子標的薬との併用を検討することになる。ベバシズマブ(アバスチン)、エルロチニブ(タルセバ)およびスニチニブ(スーテント)については、いずれも肝臓癌を対象とする第2相試験で検討を終えている。
ソラフェニブは、ここに挙げた薬剤と同じく、少数のタンパクと相互に作用する。細胞増殖および腫瘍に栄養を供給する血管の形成(血管新生)を阻害する薬剤である。
肝臓癌は、頻度の高さでは第5位の癌であり、世界的に癌死の原因の第3位を占めている。発展途上国で最も有病率が高いが、欧米でも増大しつつある。
試験では、ソラフェニブ群の平均生存期間が10.7ヵ月であったのに対して、プラセボ群では7.9ヵ月であり,生存期間が40%以上改善したことになる。
ソラフェニブは「初めての信憑性の高い、厳密に検証された治療薬」であり、これらの患者で生存期間に対する有効性が示されたと、英国バーミンガム大学癌研究所のDr.Philip James Johnson氏は語った。同氏はASCOの特別セッションで結果の議論に加わった人物である。
Dr.Johnson氏は、この薬剤が、異なる民族集団や肝機能不良患者ではどの程度の成績を示すかについては未だわかっていないと注意を促している。被験者のほとんどがヨーロッパ人であり、肝機能が比較的良好であった。
それでも同氏は、今回の試験は肝臓癌治療における「新たな時代の幕開け」であると結んだ。
— Edward R. Winstead
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Nobara 訳
監修 済み
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