経口剤S-1は、5-FUの代替薬として転移性胃癌の治療に使用可能
キャンサーコンサルタンツ
2009年10月
多施設共同臨床試験に携わった日本の研究者らの報告によれば、経口剤S-1は、5-フルオロウラシル(5-FU)やイリノテカン+シスプラチンに対し、転移性胃癌の治療薬として非劣性を示すとのことである。本ランダム化試験の詳細は、Lancet Oncology誌の2009年10月8日付け早期オンライン版に発表された。
S-1は、体内で5-FUに変換される経口剤であり、5-FUの体内での分解を阻害するギメラシルと、5-FUによる一般的な胃腸の副作用を軽減するオテラシルを含有する。S-1の有効性は数種の癌で実証されており、日本とその他アジア諸国で広く使用されている。米国ではまだ承認されておらず、第3相臨床試験の段階にある。
New England Journal of Medicine誌に掲載された以前の日本での研究成果から、S-1は胃癌の術後補助療法に有効であることが報告された(関連記事1を参照)。3年全生存率は、手術のみを受けた患者で70%であったのに対し、S-1投与を受けた患者では80%であった。S-1による副作用には、悪心、下痢、体重減少があった。また、日本の研究者らの報告によれば、進行胃癌の治療では、S-1とシスプラチンの併用療法がS-1単独療法より優れているとのことである(関連記事2を参照)。
本試験では、切除不能あるいは再発性の胃腺癌患者704人を、5-FU持続静注群、イリノテカン+シスプラチン群、S-1群という3つの化学療法群に無作為に割り付けた。3人以外はすべて化学療法歴のない患者であった。以下の表に本試験の主な結果を要約する。
5-FU群 | イリノテカン+シスプラチン群 | S-1群 | |
患者数 | 234人 | 236人 | 234人 |
全生存期間中央値 | 10.8カ月 | 12.3カ月 | 11.4カ月 |
治療関連死 | 0人 | 3人 | 1人 |
2年全生存率 | 14% | 18% | 21% |
コメント:今回の結果やその他のデータから、静注5-FUの代わりに経口剤S-1を胃癌の緩和治療に使用できるという考えが裏づけられる。
関連記事:
1 Adjuvant Therapy with New Oral Fluoropyrimidine Improves Survival for Resected Gastric Cancer (11/07/2007)
2 S-1 Plus PlatinolⓇ Effective for Advanced Gastric Cancer (2/22/2008)
参考文献:
[1] Boku H, Yamamoto S, Fukuda H, et al. Fluorouracil versus combination of irinotecan plus cisplatin versus S-1 in metastatic gastric cancer: a randomized phase 3 study. Lancet Oncology 2009; e-pub on October 8.
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