胃がん術後化学放射線療法は、標準療法と比較し転帰改善せず
第3相試験では全生存率に有意差は認められない
第3相試験の結果から、術前化学療法を既に受けた胃がん患者において、化学放射線療法による術後の強化療法は術後化学療法と比較した場合、転帰が改善しないことが、スペインのバルセロナで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)第18回世界消化器がん学会で発表された。
オランダがん研究所の臨床試験責任医師であるMarcel Verheij教授は、「術前化学療法後に術後化学放射線療法を実施する根拠は、全身および局所治療を組み合わせることにより疾患再発のリスクを抑え、転帰を改善するためです」と述べた。
周術期(術前および術後)化学療法は、現時点の胃がんの標準治療であるが、これまでに実施された試験では、術後の化学放射線療法単独により周術期化学療法と同程度に転帰が改善する可能性があることが示唆されている。
この第3相試験では、ステージ1bから4aの切除可能な胃がん患者788人を事前に無作為にグループ分けし、全員にエピルビシン、白金化合物(シスプラチンまたはオキサリプラチン)およびカペシタビンの3コースで構成された術前化学療法を実施した。
外科手術後、標準治療群に割り付けられた患者には、同じ化学療法のレジメンを追加で3コース継続し、もう一方の群には、化学放射線療法(45 Gyを25分割)をシスプラチン週1回投与およびカペシタビン毎日投与を併せて実施した。
5年生存率は化学療法群で40.8%、化学放射線療法群で40.9%であり、両治療群の有効性は同等であることが判明した。
グレード3以上の血液学的有害事象の発現率は、化学療法群の方が高かったが(44% vs. 37%)、胃腸の有害事象の発現率は、化学放射線療法の群の方が高かった(42% vs. 37%)。
試験の外科手術の質は非常に高かったが、研究者らは、化学療法または化学放射線療法の治療コースを開始または完了できなかった患者が相当数いた(化学療法群52%、化学放射線療法47%)ことを指摘した。
Verheij教授は、研究チームは術後化学放射線療法群では周術期化学療法群と比較して転帰が改善すると予測したが、サブグループ解析により、いずれかの治療法で利益が得られる特定の患者集団を確認できる可能性があると述べた。
Instituto CUF de Oncologia(リスボン、ポルトガル)のDirk Arnold氏はこの所見について、「胃切除後の術後治療が有効な患者は非常に限られていることは既知であり、術後の強化療法は正しい戦略ではないかもしれません」と述べた。
Arnold氏はまた、「術後化学放射線療法の治療アプローチにより利益が得られるサブグループがみつけられたとしても、治療戦略としては術前の強化療法を促進するべきであり、すでに実施されている他の試験では、術前に、化学放射線療法を含むさまざまな治療アプローチを標準化学療法単独と比較して評価しています」と述べた。
参考文献
1. LBA-02: A multicenter randomized phase III trial of neo-adjuvant chemotherapy followed by surgery and chemotherapy or by surgery and chemoradiotherapy in resectable gastric cancer: First results from the CRITICS study will be presented by Marcel Verheij during Session VI: Gastric Cancer on Thursday, 30 June 2016, 11:30 (CEST).
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