TOPGEAR試験の結果は世界の胃がん治療統一への第一歩:ESMOコメンタリー
テーマ:消化器がん
胃がんは手術が治癒を期待できる唯一の選択肢であるが、再発率も高い。「治癒が期待できる患者さんの転帰向上を目的として、術前や術後に、化学療法や化学放射線療法といったさまざまな治療戦略が提案されてきました」と、ESMO執行役員であり、バルデブロン大学病院(スペイン・バルセロナ)腫瘍内科のトップであるJosep Tabernero教授は述べる。
「このような患者さんに対する化学療法や放射線療法の効果は明らかですが、最適な治療順序は明らかになっていません」とTabernero氏は続けた。「術前化学療法には、微小転移巣を根絶するだけでなく、ダウンステージが得られるという利点があります。この点から、ECC2015で発表されたTOPGEAR試験は、完全に近い形の治療戦略を術前に行うことで生存期間の延長が得られるかどうかを分析しています」[1]
北米では術後化学放射線療法が標準治療であり、アジアでは術後化学療法が優先されている。一方、ヨーロッパでは、現在でも周術期の化学放射線療法が標準治療となっている。
周術期化学療法は、過去2つの第3相臨床試験の有効なデータに基づいている、とTabernero氏は説明する。「MAGIC試験では、患者をエピルビシン、シスプラチンおよび5-FUによる周術期化学療法を行う群と、化学療法を行わない群に無作為に割り付けたところ、周術期化学療法を行うことで、5年生存率が23%から36%に向上することが示されました。さらに、FFCD 9703試験では、シスプラチンと5-FUによる周術期化学療法で同様の結果が示されただけでなく、化学療法を行った患者においてRO切除率(がんを完全に取り除くことができた率)が高くなるという結果も示されました」。
並行して行われたもう一つの第3相臨床試験(EORTC 40954試験)では、生存期間の有意な延長はみられなかったが、これはおそらく参加患者数が十分でなかったことによる。「それでも周術期化学療法群の患者でRO切除と腫瘍縮小がより多くみられました」とTabernero氏は続けた。
最近の研究は、術後化学放射線療法を標準治療として支持している。「INT 0116試験では、術後に5-FUによる化学療法と放射線療法を受ける群と、手術のみの群に無作為に割り付けました」Tabernero氏は述べた。「この試験では、生存期間中央値が27カ月から35カ月に延長し、有意な結果でした。ACTS-GC試験ではS-1による術後化学療法を、またCLASSIC試験ではカペシタビンとオキサリプラチンによる術後化学療法を追加し、いずれの結果もこの治療法の有効性を明確に示しました。
以上の結果をふまえ、また第1に化学療法と放射線療法によりダウンステージが可能であること、第2にこれらの治療を術前に行うと忍容性が良好であることを考慮した上で、Tabernero氏は言った。「TOPGEAR試験では、MAGIC試験アプローチ(エピルビシン、シスプラチン、5-FU)を行う対照群と、同様の化学療法レジメン2サイクルに続いて5-FUによる化学放射線療法を行う実験群とを比較しました。術後は両群とも、MAGIC試験と同じ化学療法を行いました」。
Tabernero氏はこう結論づけた。「簡単に言うと、安全性プロフィールは、両群ともに非常に似た毒性を示しました。したがって実験群のアプローチは十分に実施可能なのです。今このより強力な周術期化学療法の利益を明らかにするため、有効性に関する結果を待たなくてはなりません。本試験の結果は多様化する治療順序の疑問に答えるもので、世界で行われている限局性または局所進行性の胃がん治療の統一へ向けた第一歩となるでしょう。これらの腫瘍の異質性も考慮に入れた治療戦略をどのように組み入れていくのかが今後の課題となるでしょう」。
備考
1. オーストリアのウィーンで9月25日~29日に開かれたECC2015で発表された概要
2200:TOPGEAR試験:切除可能な胃がんに対し、周術期のECF療法と、術前化学放射線療法+周術期のECF療法とを比較したランダム化第2/3相試験。国際および群間比較試験(AGITG/TROG/NCIC CTG/EORTC)から得た中間結果。
*訳注:日本の実情とは異なると思われる表現が含まれていたため、冒頭の一文は訳出しておりません。
原文掲載日
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