次世代の免疫療法薬2剤(botensilimab、balstilimab)は大腸がんに有効

次世代免疫療法薬2剤の併用は、これまで免疫療法薬があまり効かなかった難治性転移大腸がん患者の治療に有望な臨床効果を示すことがダナファーバーがん研究所の研究で明らかになった。

サンフランシスコで1月19日から21日まで開催されるASCO消化器がんシンポジウムで、botensilimab[ボテンシリマブ]とbalstilimab[バルスチリマブ]という2種類の薬剤の拡大第1相試験の結果発表が予定されている。この試験は、ダナファーバー大学消化器がん治療センター上級医師のBenjamin L. Schlechter医学博士が主導している。

この試験には、免疫療法薬を含む数種類の薬剤による治療歴のある転移大腸がん患者70人が参加した。このすべての患者にマイクロサテライト安定型(MSS)と呼ばれる腫瘍があった。つまり、これらの患者は特定のDNA損傷を修復するための遺伝子が損なわれていないことを意味している。MSS大腸がんは大腸がんの大部分を占めるが、第一世代の免疫療法薬はほとんど効果がみられなかった。マイクロサテライト不安定性(MSI)大腸がんに対する免疫療法薬が奏効しているが、MSIの進行大腸がんは3%~5%程度にすぎず、はるかに多いMSS大腸がんに対して承認された免疫療法薬が存在しない。

転移MSS大腸がん患者を対象とした拡大第1a/1b相試験で併用が検証されている2剤は、新規の次世代抗体薬である。Botensilimabは、T細胞受容体細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)に対する抗体である。CTLA-4はT細胞の活性化を制御する免疫チェックポイントである。Balstilimabは、もう一つの免疫チェックポイントのタンパク質であるPD-1がPD-L1およびPD-L2と相互作用するのを阻害するように設計された新規のモノクローナル抗体である。Balstilimabはこの相互作用を阻害することにより、免疫系ががんを攻撃できるようにするものである。

この試験に参加した患者は、これらの薬剤の併用投与を受けた後、7カ月間(中央値)の追跡調査を受けた。この間、患者の23%で腫瘍の縮小が認められ、効果持続期間の中央値は未到達であった。疾患コントロール率(完全奏効、部分奏効、安定が認められた転移がん患者の割合)は76%であった。12カ月全生存率は63%であった。この併用投与の恩恵を受けた主な患者層は、肝臓に活動性の転移がんがない患者であった。

治療関連の有害事象は患者の91%に発現した(40%がグレード3、3%がグレード4)。患者の12%が有害事象を理由に両薬剤の投与を中止した。

研究者らは「複数の前治療歴がある転移MSS大腸がん患者において、 botensilimab+balstilimabは、持続的な効果を伴う有望な臨床活性を示し続けていることに加え、忍容性も高く、免疫介在性の安全性に関する新たな徴候は認められていない」と結論付けている。

「難治性大腸がんに免疫療法薬の力を利用することは、進行大腸がんを対象とした複数の臨床試験の重要な目標でしたが、MSS大腸がんにおける取り組みは、一般に残念な結果が続いていました」とSchlechter医師は述べている。「今回のデータは、この重病患者集団の治療において有意義で重大な前進です」。

現在、これらの知見に基づいたMSS大腸がん患者対象のランダム化第2相試験で、参加者を登録中である。

この研究はAgenus社からの資金提供を受けている。


  • 監訳 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
  • 翻訳担当者 瀧井希純
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  • 原文掲載日 2023/01/21

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