大腸内視鏡検査1回と免疫便潜血検査2回、がん発見率はほぼ同等

大腸がん検診の結果は、大腸内視鏡検査1回でも、短期間内に2回行なう免疫便潜血検査(FIT)でもほぼ同じであったが、大腸内視鏡検査で右側病変が多く検出されたことが、現在進行中のランダム化試験の予備報告で示された。

「これは、スウェーデンの18地域で行われた全国規模のランダム化対照試験SCREESCO(SCREEning of Swedish COlons)の研究参加者募集と検診後の最初の報告である」とカロリンスカ研究所のAnna Forsberg医師はロイター ヘルスに電子メールで伝えた。「2014年から2020年にかけて収集されたデータの予備分析から、参加率は申し分なく、有害事象の発現率は低く、ITT解析では、大腸がんの発見に関しては群間差は認められないが、右側病変に関しては、大腸内視鏡検査はFITよりも検出力が高いことが示唆された」。

60歳で大腸内視鏡検査を1回、またはFITを2年空けて2回受けた人々と、検診を何も受けない人々とを比較するという方法は、これまで検証されたことがなかった」とForsberg医師は述べている。

The Lancet Gastroenterology and Hepatology誌に報告されている通り、Forsberg医師らは、約280,000人をランダム化により、大腸内視鏡検査を1回実施する群(31,400人)、OC-Sensorを用いてFITを2年空けて2回実施する群(60,300人)、検診による介入なしで通常の臨床診断のみを行う対照群(186,840人)に割り付けた。

本試験の主要評価項目は、大腸がんの罹患率 と死亡率であった。今回の解析項目は、参加率、ベースラインの診断所見、2回目のFIT終了時までの有害事象であった。

参加率は、大腸内視鏡検査群が35.1%、FIT群では1回または2回実施合わせて55.5%であった。

合計6,471人がFIT陽性(6.3%)であり、そのうちの大半(90.8%)が続けて大腸内視鏡検査を受けた。

intention-to-screen解析では、大腸内視鏡検査群49人(0.16%)、FIT群121人(0.20%)に大腸がんが認められた(相対リスク0.78)。

大腸内視鏡検査群の2.05%、FIT群の1.61%に進行腺腫 advanced adenomaが認められた(相対リスク1.27)。

Forsberg医師が指摘した通り、大腸内視鏡検査によって、FITよりも多くの右側結腸の進行腺腫 が発見された。

16,500件以上の大腸内視鏡検査で、穿孔2件、治療を要する出血15件が生じた。介入関連の死亡は発生しなかった。

Forsberg医師は、「日常の臨床環境での大腸内視鏡検査の質、総診断率、有害事象の少なさから、SCREESCOデザインを集団検診に取り入れることができる」と述べている。

マーシー医療センター(ボルチモア)の炎症性腸・大腸疾患センターの外科部長Jeffery Nelson医師は、「学術的観点からはこの結果に同意するものの、試験対象は全員60歳であった。(しかし)50歳未満で大腸がんが増えていることがわかっている。今回の試験ではこの問題が計算に入れられていない」とロイター ヘルスに電子メールで伝えている。

「ある一定の年齢で一度内視鏡検査または便検査を実施し、あとは繰り返す必要がないとすれば、医療資源の観点では好都合である」とNelson医師は述べている。しかし、「今回の試験では、FIT検査(大腸由来の便中に血液が含まれるかどうかを調べる検査)が用いられているが、米国では、Cologard (便DNA検査)の方が普及していると思われる」と言っている 。

Nelson医師はまた、大腸内視鏡検査群に比べ、FIT群で多くの右側病変が見逃されていることに懸念を示した。

「この戦略の最終的な有効性と適用性を明らかにするために、異なる年齢層で類似の試験を実施する必要がある。その際、Cologardも使用するとよいと思う」と述べている。

この試験は、栄研化学から一部資金提供を受けたものである。

原典:https://bit.ly/3tPc5xb The Lancet Gastroenterology and Hepatology誌、オンライン版2022年3月14日

翻訳担当者 渡邉純子

監修 斎藤 博(がん検診/青森県立中央病院)

原文掲載日 

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