加工肉が、がんを引き起こす仕組みと影響
加工肉と赤身肉(牛・豚など)が大腸がんに関連していること自体は新しい情報ではありませんが、がんリスクを高める肉の量について、キャンサーリサーチUKが資金提供した詳しい研究結果をプレスリリースで発表したところ、加工肉および赤身肉と大腸がんとの関連性が再び話題となりました。
この新たな研究では、加工肉や赤身肉の1日摂取量が平均でわずか76g(ハムで約3枚)でも大腸がんのリスクが高まるか否かについて検討しました。 この研究はInternational Journal of Epidemiologyで発表されています(サイト内記事参照)。この76gという量は英国での平均的な1日消費量にほぼ相当しており、政府のガイドラインの、ややグレーな領域に該当します。ちなみにガイドラインでは、1日当たり90g以上食べる人は皆、1日当たり70g未満まで減らすべきとしています。
本研究の内容で重要な部分は、「たとえ肉を食べる量が中等度であっても大腸がんのリスクが高まる」という情報です。英国は肉のフライ料理で有名な国です。でも肉摂取量が中程度であってもリスクが高まるのであれば、これは英国にとってどのような意味をもたらすのでしょうか?
加工肉および赤身肉ががんの原因となることを、どのように理解したらよいですか?
この10年以上に渡り、加工肉および赤身肉とがんとの関連性を示す証拠が示され、その証拠は積み上がってきています。2015年に、国際がん研究機関(IARC、研究エビデンスに関し検討・報告を行う専門家集団)が加工肉を「確定的」ながんの原因として分類しています。
これによりベーコンが、がんの原因としてタバコと同カテゴリに属することとなったのです。しかしながら、IARCは、エビデンスに基づき確定度に言及したのみです。このエビデンスは、「がんの原因となるもの」ついて言及しているものの、「それが引き起こすがんの頻度」については述べていません。つまり、加工肉が大腸がんを引き起こすというエビデンスはたばこががんを引き起こすというエビデンスと同様に確かな情報であるものの、喫煙は加工肉に比べて、はるかに多くのがん症例の原因になっています。
また、IARCは赤味肉をがんの原因として「ほぼ確定的」であると分類しています。キャンサーリサーチUKがその当時、公表したブログ投稿では、この点に関して詳しく説明しています。
加工肉や赤身肉ががんの原因となる仕組みは?
これまでのところ、研究では、次の3種類の化学物質が大腸がんリスクの上昇に関連するとされています。これらの化学物質は肉に通常含有されているもの、加工過程で添加されているもの、あるいは調理中に生成するものがあります。
- ヘム(赤身肉に多く含まれる赤い色素)
- 硝酸塩と亜硝酸塩(加工肉の鮮度維持・防腐目的で使用)
- 複素環式アミンと多環式アミン(肉を高温調理する際に生成される)
3種類の化学物質すべてが腸の細胞にダメージを与えている可能性があり、このダメージが長期間にわたり積み重なるとがんリスクが高まります。
影響はどの程度か?
最新の研究では、英国の成人50万人のデータを解析し、加工肉や赤味肉の摂取レベルが中等度である人は低度である人よりも大腸がんのリスクが20%高まることが分かりました。つまり、本研究において、1日当たり21g の赤身肉と加工肉を摂取した場合、10,000人毎に40人が大腸がんと診断されました。そして、1日当たり加工肉と赤身肉を76g摂取した場合は、10,000人毎に大腸がんが8件増加しました。
2018年にこのエビデンスを精査したところ、1日当たりの消費量が加工肉だと50g、赤味肉だと100g増えるごとに大腸がんのリスクが高まることが判明しました。
最新の研究では肉の消費量をより少ない単位で検討し、1日当たりたった25gの加工肉を消費するだけでリスクが高まることが判明しました。この25gという量はベーコン1枚に相当する量です。このことから、加工肉を食べるのならば、少量食べる方が大腸がんのリスクを低下できるということが裏付けられました。
Tim Key教授はこの最近行われた研究の共同統括者を務めました。また、彼はオックスフォード大学のがん疫学部門副部長も務めています。Key教授は、加工肉の消費量を減らすことから得られる効果は禁煙による影響よりも小さいものかもしれないものの、加工肉の消費量を減らすことは重要であることは変わらない、と言っています。
「誰もが加工肉や赤身肉を食べていますから、誰もが大腸がんのリスクにさらされています」「ですから、国民全体を評価する場合、リスクの増加は人によって異なってきます」とKey教授は述べます。
そして、Tim教授は、今回の結果が政府のガイドラインを守っている方に対するリマインダーになると考えています。
「現行の政府ガイドラインでは1日当たり平均90g超の加工肉や赤身肉を食べているならば1日当たり70gまで減らすべきとしています。当研究の結果から、政府ガイドラインよりも少しだけ摂取量を減らせばリスクを少し減らせることができることが示されました。また、研究結果は、肉摂取量が中等度であってもリスクが高まる要因となっている点について我々の注意を喚起してくれているのです」。
肉消費量を減らすためのお役立ち情報
食べる量に留意しましょう – ソーセージを2本食べず1本にする。もしくは、いつも食べる肉のサイズを半分にして豆や野菜に置き換える。
ミートフリーデイ(肉を食べない日)を設ける – 肉を全く食べない日を1日(数日でもよい)設ける。
- いつもと違う料理を作る – 加工肉や赤身肉を使ったレシピでなく新鮮なチキンや魚を使った新メニューに挑戦してみる。
全粒粉パンのベーコンサンドイッチはどうだろうか?
高食物繊維食品を食べること、特に全粒粉パンや玄米などの全粒穀物を食べること、運動を沢山することにより大腸がんのリスクを減らすことができます – そうであるならば、高食物繊維食品を食べたり、活発に運動すれば加工肉や赤身肉を食べたことによりもたらされる細胞ダメージを緩和できるでしょうか?
食物繊維と活発に運動することの両方が排便回数を増やしてくれます。そうすれば、加工肉や赤身肉に含まれる化学物質などの有害化学物質の腸内滞留時間が減ることになります。ですが、これまでのところ、食物繊維と運動が細胞ダメージレベルにもたらす影響の程度は分かっていません。
残念ながら、リスク上昇要因を低下要因で帳尻を合わせることはそれほど簡単なことではありません。研究では、リスクに影響を及ぼす可能性のある他の要因についても考慮に入れています。同じように、加工肉・赤身肉と大腸がんとの間の関連性を示す優れた研究では食物繊維摂取量についても考慮に入れているのです。
この研究結果がもたらす意味は?
このエビデンスからは、加工肉や赤身肉を食べるのを減らすことで大腸がん(英国で4番目に多いがん)のリスクが減らせるということが明らかです。
「本研究のデータから、加工肉や赤身肉を食べる量を少しにする、あるいは全く食べないことで大腸がんのリスクは低下するものの、消費量を減らした場合の大腸がんリスクの変化は少ないということが示されています。ですから、われわれが肉を食べることをあきらめなければいけないということを意味しているわけではありません」とKey教授は言います。
肉の消費量を減らすことで大腸がんリスクに違いが生まれます。ですが、結局のところ、アクティブな生活を送る事に併せて健康的な食生活を送ることの一環として実行することが大切です。
「がんに関して食生活に関連する最も重要なリスク因子は肥満とアルコールです。この両方が数種類のがんのリスクを高め、赤味肉や加工肉よりも大きな影響を及ぼします」とKey教授は言います。
また、食事は大腸がんリスク以外にも、健康上の影響を及ぼします。その影響は大腸がんのリスクに及ぼす影響を上回るものです。
「たとえば、肉は鉄分の供給源として重要な食品です。ですから、全く肉を取らないようにしようと考えている人は肉以外の鉄分供給源を検討する必要があります」、とKey教授は述べています。
ですから、このエビデンスは、われわれが全く肉を食べるのをやめる必要があることを意味しているわけではありません。食べる量と頻度についてのリマインダーだとお考え下さい。
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