高用量ビタミンDが進行大腸がんに効果

・遠隔転移を有する大腸がん患者に対するビタミンDの最初のランダム化臨床試験で、化学療法と高用量ビタミンDの併用により疾患の進行の遅延が認められた

・有望な結果により大規模3相試験での評価計画が促進される

小規模臨床試験で、遠隔転移を有する大腸がん患者に対する化学療法に高用量ビタミンDを補うと、疾患の進行を遅らせる効果が示唆されるとダナファーバーがん研究所の研究者が述べている。

遠隔転移を有する大腸がんに対するビタミンD補充の潜在的な効果が、SUNSHINE臨床試験の「非常に有望な結果」に後押しされて、今年後半に米国内数百の施設で広く実施される大規模臨床試験で評価されるだろうと、ダナファーバー消化器がんセンタークリニカルリサーチ責任者およびSUNSHINE 試験の責任著者であるKimmie Ng医師/公衆衛生学修士は述べた。「われわれの知る限り、この試験は進行大腸がんおよび遠隔転移を有する大腸がん治療に対するビタミンD補充に関して初めて完了したランダム化試験です」と同医師は述べた。

高用量群では、疾患が悪化するまでの遅延の中央値が13カ月であり、低用量群では11カ月であった。さらにビタミンD高用量群では22.9カ月のフォローアップ期間中の疾患の進行および死亡が36%少なかった。しかし本試験は患者数が非常に少なく、高用量ビタミンD補充を受けた患者の全生存期間が改善したかどうかは評価できなかった。

「私たちが行った試験の結果はビタミンD補充を受けた患者の予後の改善を示唆しており、これらのエキサイティングで刺激的な結果を確認するため、より大規模な試験に着手するのを心待ちにしています」とエールがんセンター所長Charles Fuchs医師/公衆衛生学修士(この試験の統括著者、前所属ダナファーバー)は述べた。

最初の結果は2017年米国臨床腫瘍学会総会で発表された。また、追加のデータと共にJAMA誌に掲載されている。

SUNSHINE試験は未治療の遠隔転移を有する大腸がん患者139人をランダム化した。一方の群には標準の化学療法とともに、1日当たり4000国際単位(IU)のビタミンDを含む錠剤を投与し、他方の群には化学療法とともに400単位(マルチビタミン中に含まれるおよその量)を投与した。

ビタミンDは、骨の健康に必要なものであるが、日光を浴びることで化学反応により体内で生産され、また一部の食品にも含まれている。基礎研究では、ビタミンDはプログラム細胞死の誘導やがん細胞の増殖抑制、転移能の低減といった抗腫瘍作用を有することが明らかにされている。前向き観察研究は、血中ビタミンD濃度の高さと大腸がんリスク低下や患者の生存率改善を関連付けたが、ビタミンDによるものであると証明することはできなかった。

このような背景を受けて、この前向きランダム化第2相SUNSHINE試験)には米国内の11の大学の施設や地域の施設から患者が新たに参加し、ビタミンD補充が遠隔転移を有する大腸がん患者の予後を改善できるかを試験した。全ての患者にmFOLFOX6という標準化学療法にベバシズマブを加えて投与した。高用量ビタミンD群の患者には、最初に1日8000IUを14日間、それ以降は1日4000IUを投与した。低用量および標準用量群の患者には全サイクルを通して毎日400IUを投与した。また全ての患者に、試験期間中は他のビタミンDやカルシウムのサプリメントを摂取しないように依頼した。

この試験の主要アウトカムは無増悪生存期間(疾患が悪くなり始めるまで、または死亡するまでの期間)で、高用量群で無増悪生存期間が長かった。もう一つの評価項目である疾患の増悪または死亡のハザード比を計算したところ、高用量群で36%低いオッズを示した。

研究者らは、25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)濃度の変化を測定するために患者から採血した。これはヒトのビタミンDの充足状態を判定する標準の検査である。この検査では、治療開始時に十分なビタミンDを摂取していたのは、臨床試験に参加した患者のわずか9%であったことが示された。試験期間中に低用量ビタミンDを投与された患者ではビタミンD濃度の大きな変化はなく、一方で、高用量群の患者ではビタミンDがすぐに十分な濃度に到達し、適切な濃度に維持された。

結果を分析すると、肥満の患者や変異したKRAS遺伝子を含む腫瘍の患者では高用量ビタミンDの利点が少ないようであった。「一部の患者では抗腫瘍活性を得るために、さらに高用量のビタミンDが必要になる可能性があります」と研究者らは述べた。一方で、高用量のビタミンDは臨床試験以外で使用しないようにと注意喚起した。

「本研究とその結果は非常に重要です。なぜならビタミンDは費用対効果が高く、安全で、容易に入手できる物質であり、転移性大腸がんに対する新しい治療薬になる可能性があるからです。患者の社会経済的レベルや国の資産とは関係なく、世界的に大きく広く影響を与える可能性があります」とNg医師は述べた。

本研究は以下の支援を受けた。National Cancer Institute grants P50CA127003, R01CA205406, and R01CA118553; a Gloria Spivak Faculty Advancement Award; a Friends of Dana-Farber Cancer Institute Award; the Project P Fund; Consano, Pharmavite LLC, and Genetech.

Ng医師が受けた助成金および非金銭的支援は以下のとおりである。
Dr. Ng reports grants from National Cancer Institute, grants and non-financial support from Pharmavite, grants from Genentech, and grants from Consano during the conduct of the study; grants and non-financial support from Pharmavite, personal fees from Genentech, personal fees from Lilly, grants from Gilead Sciences, grants and personal fees from Tarrex Biopharma, personal fees from Bayer, personal fees from Seattle Genetics, grants from Celgene, and grants from Trovagene outside the submitted work.

翻訳担当者 白鳥理枝

監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院 消化管内科)

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