食事でステージ3大腸がんの再発リスクを低減できる可能性

切除可能大腸がんの治療を受けた患者では、インスリン値を上昇させる炭水化物などの成分が少ない食事によって、疾患再発リスクが大幅に低減する可能性があることが、ダナファーバーがん研究所の研究者らが主導する新たな研究で示唆された。

ステージ3の大腸がん患者において、食事に反応して体内で生成されるインスリンの量を意味する「食事のインスリン負荷」が最も高い患者は、最も低い患者と比べて、大腸がんの再発または大腸がんによる死亡の可能性が2倍高いことを研究者らが発見し、その研究がJournal of the National Cancer Institute誌に発表された。この傾向は身体活動レベルに関わらずみられ、肥満の大腸がん患者において特に強いことを研究者らが発見した。

「この研究結果は、大腸がん患者を力づけるに違いない」と、本研究の筆頭著者でダナファーバーがん研究所のVicente Morales-Oyarvide医師(公衆衛生学修士)が述べた。「私たちは今、健康的な食事が大腸がんの再発予防に役立ち、患者らの生存の見通しを改善する可能性があるという証拠を得たのです」。

過去の研究では、身体的に活発で、体重の管理ができ、西洋型食事スタイルを避けた健康的な生活を送る大腸がんサバイバーは、あまり健康的ではない生活習慣のサバイバーより予後がよいことが示されている。これは一つには、こうした健康的な生活習慣によってインスリン低値となるためではないか、と研究者らは示していた。Morales-Oyarvide医師らはそのような関連性の証拠を探し求めた。

今回の研究は、大腸がんの手術を受けた後、フォローアップ化学療法の臨床試験に参加していた1,023名の患者を登録した。患者らは化学療法の中ほど、および治療完了の6カ月後に食事摂取に関する質問票へ記入し、これに基づいて研究者らは患者の食事によるインスリン負荷を計算した。

西洋型の食事のような、単純糖質(白パン、精製小麦パスタなど)、砂糖、脂質の多い食事は、インスリン値が高くなる傾向がある。一方、野菜類、果物、豆類や、良質な脂質とタンパク質が豊富な地中海式の食事は、インスリン低値と関連している。本研究において、食事全体のインスリン負荷に注目することの利点は、インスリン負荷は炭水化物の摂取だけでなく、脂質およびタンパク質の摂取も反映している点である、とMorales-Oyarvide医師が述べた。

食事のインスリン負荷が最も高い患者は、最も低い患者と比べて、大腸がんの再発および死亡のリスクが2倍となったという知見は、患者自身がリスク低減のために自ら実行できることが何であるかを浮き彫りにしていると、この研究の統括著者でダナファーバーがん研究所のKimmie Ng医師(公衆衛生学修士)が述べた。

「患者はがん再発のリスクを低減するために何ができるかに常に関心がある。私たちは今、研究で明らかになったように、食事療法を提案し、変化をもたらすことができるかもしれない」と、Ng医師は述べた。

本研究の共著者は、以下のとおり。Chen Yuan, ScD, Ana Babic, PhD, Sui Zhang, MS, Robert J. Mayer, MD, Brian M. Wolpin, MD, and Jeffrey A. Meyerhardt, MD, of Dana-Farber; Shuji Ogino, MD, PhD, of Dana-Farber, Brigham and Women’s Hospital, and Harvard T.H. Chan School of Public Health; Donna Niedzwiecki, PhD, and Xing Ye, of Duke University; Jennie C. Brand-Miller, PhD, of the University of Sydney, Sydney, Australia; Laura Sampson-Kent, MS, Yanping Li, MD, PhD, Kana Wu, MD, PhD, and Walter C. Willet, MD, MPH, DrPH, of Harvard T.H. Chan School of Public Health; Edward L. Giovannucci, MD, ScD, of Harvard T.H. Chan School of Public Health and Brigham and Women’s Hospital; Leonard B. Saltz, MD, of Memorial Sloan Kettering Cancer Center; Rex B. Mowat, MD, of Toledo Community Hospital; Renaud Whittom, MD, of Hôpital du Sacré-Coeur de Montréal, Montreal, Canada;Alexander Hantel, MD, of Loyola University Stritch School of Medicine; Al Benson, MD, of Robert H. Lurie Comprehensive Cancer Center, Northwestern University; Daniel Atienza, MD, of Virginia Oncology Associates; Michael Messino, MD, of Southeast Clinical Oncology Research Consortium, Mission Hospitals, Asheville, N.C.; Hedy Kindler, MD, of University of Chicago Comprehensive Cancer Center; Alan Venook, MD, of University of California at San Francisco Comprehensive Cancer Center; and Charles S. Fuchs, MD, MPH, of Yale Cancer Center.

本研究が受けた支援は、以下のとおり。the National Cancer Institute of the National Institutes of Health [grants U10CA032291, U10CA041287, U10CA045808, U10CA077651, U10CA138561, U10CA180791, U10CA180836, U10CA180867, U10CA180821, U10CA180882, R35CA197735, R01CA118553, R01CA169141, P50CA127003, R01CA149222, K07CA148894, and R01CA205406]; the Project P Fund; and Stand Up to Cancer.

翻訳担当者 木水友子

監修 橋本 仁(獣医学)

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