カペシタビン(ゼローダR)はステージⅢ大腸癌の術後化学療法の代替治療となる
米国国立がん研究所(NCI)
Capecitabine (XelodaR) an Alternative in Post-Surgery Treatment of Stage III Colon Cancer
(Posted: 07/27/2005) June 30, 2005, issue of the New England Journal of Medicine(▼PubMed翻訳抄録参照)によると、腫瘍摘出手術後のステージⅢ大腸癌患者において、カペシタビン(ゼローダ)錠剤の服用は、忍容可能な副作用で再発なく、フルオロウラシル(5-FU)+ロイコボリンの治療を受けた患者と同等の期間生存した。
要約
腫瘍摘出術後、カペシタビン(ゼローダ?)を含有する錠剤を服用した第III期の大腸癌患者は、フルオウラシル(5-FU)およびロイコボリンのボーラス投与による化学療法よりも耐容できる副作用で、ほぼ同じ長さの無再発生存を達成しました。これらの結果によると、カペシタビンは、この研究で用いた用量での投与により、一部の患者にとって効果のある代用薬剤であるということが示唆されます。
ソース New England Journal of Medicine, June 30, 2005 (ジャーナル要旨▼PubMed翻訳抄録参照)
背景
2005年には5万6千人以上が大腸癌で死亡すると推定されています。しかし、もし早期発見できたならばつまり癌が腸管から広がる前に発見できたならば、手術で大腸癌患者の約半分を治癒させることができるでしょう。もし癌が隣接するリンパ節に広がっていて、それ以上の進展がない場合(第III期)、手術後に補助化学療法を行って再発を防止します。
大腸癌の管理において、フルオウラシル(5-FUが最も一般的)という代謝拮抗剤フルオロピリミジンは、長い間主要な薬剤でした。近年、医師たちはその抗腫瘍効果を上げるために5-FUにロイコボリンを併用してきました。この5-FUとロイコボリンの併用療法に他の薬剤を併用させる療法はさらに有効であることが明らかになりつつあります。オキサリプラチンを5-FUおよびロイコボリンの静脈内(注射)点滴投与に追加するなどの化学療法の進歩により4年後の総生存率は約80%にまで伸びましたが、再発はしばしば最終的に死亡原因となります。
患者が耐えられるものには差異があるので、薬剤選択以外の重要な要素は薬剤の投与方法です。それには錠剤を経口投与する、注入ポンプを用いて48時間以上も薬剤を持続的に投与する、1回投与量を約1時間以内に血管内に注入するボーラス投与を行うといった3種類の方法があります。
5-FUと同様、カペシタビンは代謝拮抗剤のフルオロピリジンですが、カペシタビンの場合は錠剤での投与が可能です。カペシタビンはフルオロピリジンによる単独療法が望ましい場合、転移性結腸直腸癌に対する初回治療薬として2001年に米国食品医薬品局により認可されました。
試験
結腸癌補助療法におけるゼローダ試験(X-ACT)は、カペシタビンの経口投与により、5-FUとロイコボリンのボーラス併用療法と同等の無病生存率を達成できるかどうかを決定し、また第III期の結腸癌患者における副作用を評価するための第3相無作為試験です。
国際的研究チームの研究者らは、1998年から2001年の間に、世界各地にある164箇所のセンターから1987名の患者を登録しました。患者は第III期の結腸癌手術後に参加しました。疾患の広がり(転移)がみられた患者は除外され、少なくとも5年間の生存が期待できる患者は登録に加えられました。患者は無作為にカペシタビンまたは5-FU/ロイコボリン併用のボーラス投与のいずれかに割り当てられ、合計24週間の治療が行われました。その後、無病生存を計測するため経過観察されました。無病生存はいかなる疾患の再発や二次的な原発性大腸癌(最初の腫瘍とは無関係に出来た新しい大腸腫瘍)または死亡がないことと定義されました。重症(グレード3または4)およびより軽度の副作用についても記録しました。
この研究の指揮をとっているのは英国グラスゴー大学の?Chris Twelves, M.D.医師です。この臨床試験のスポンサーはカペシタビンのメーカーであるホフマン-ラロッシュ社が務めました。
結果
中央値3.8年のフォローアップにおいて、カペシタビンを服用した1004名中348名の患者が疾患を再発し、一方5-FUとロイコボリン併用投与では983名中380名が再発しました。また、死亡した患者はカペシタビン群では27名少ないという結果になりました。この結果は統計学的にいって、無病生存という点においてカペシタビンのほうが優れているということを証明できるほど強いものではありませんが、本剤が少なくとも5-FUとロイコボリン併用という特定の治療法と少なくとも同程度であることを示しました。
カペシタビン群では多くのカテゴリーで、特に下痢、嘔気、口内痛および白血球数減少などの有害事象は有意に低頻度でした。疼痛、腫脹、しびれおよび刺痛を伴う手掌-足底症候群や、非常に多くの赤血球が破壊された時に黄疸が生じうる高ビリルビン血症といった重篤な有害事象の発生も有意に多く見られました。
制限事項
試験で用いられた5-FUとロイコボリン併用ボーラス投与療法は、この試験が始まった当初は適切で標準的な療法だったと、米国立癌研究所癌療法評価プログラムの腫瘍外科医であるMargaret Mooney, M.D.医師は述べました。しかし、Mooney医師によると、その他の結腸癌の補助療法に関する臨床試験から得られる最近の結果から、『5-FUとロイコボリンの注入またはボーラス投与にオキサリプラチンを追加したほうが、5-FUとロイコボリンのみの治療よりも無病生存期間を延長できる』とのことでした。オキサリプラチンを含むより新しい多剤併用療法において、カペシタビンが5-FUとロイコボリンに置き換えられるかどうかはまだわかっていません。
この試験ではカペシタビンの副作用は5-FUとロイコボリンの併用療法に比べておおむねひどくありませんでしたが、この試験において用いられたカペシタビンの初回投与量(体表面積1平方メートルあたり1250mg、一日2回)は米国内の患者には耐えられなかったようです。
Mooney医師によると、この理由は『はっきりとしない』そうで、また、『初回投与量を減らした場合には同じ結果にならないかもしれないので、この試験の結果が異なる投与量には適応されない』のだそうです。
コメント
付属の論説で、 Carmen Allegra 医師とDaniel J. Sargent 博士は、米国で一般的に行われているオキサリプラチンを含む多剤併用療法において、カペシタビンが5-FUとロイコボリン注入と置き換えられるかはわからないと書いています。それにもかかわらず、カペシタビンを『治療を行う医師が、今回の研究で報告されている初回投与量を用いることに違和感を感じなければ、単独薬剤療法が望ましい場合においては最高の選択肢である。』とも述べています。
(Pearblossom 訳・Dr.榎本 裕(泌尿器科) 監修 )
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