大腸がんサバイバーの腸内マイクロバイオームが食事で改善
MDアンダーソン OncoLog 2018年5-6月号(Volume 63 / Issue 5-6)
Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL
豆を食事に加えることで、がんリスクのマーカー、代謝の健康に影響するかどうかを検証する試験
食事、肥満、そして腸内マイクロバイオーム(常在微生物群)が、大腸がんリスクに影響を及ぼすことを示すエビデンスが増加している。がんの再発または新たながんの発生リスクを低下させることは、大腸がんサバイバーにとって大きな関心事であるが、食事やマイクロバイオームの試験では、このような特定の集団に焦点を当ててこなかった。大腸がんサバイバーのための推奨情報を提供するため、ある革新的な臨床試験では、食事の改善(白いんげん豆の追加)および腸内マイクロバイオームに対するその効果に焦点を当てている。
「われわれは、質の悪い食事、肥満、そして関連する炎症および代謝状態が、大腸がんサバイバーのがんの再発および死亡率に有意に関与することを示してきました」と、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの疫学科助教、Carrie Daniel-MacDougall博士は述べた。Daniel-MacDougall氏は、肥満予備軍または肥満の大腸がんサバイバーの食事に豆を加える臨床試験の試験責任医師であり、がんやその他の肥満関連疾患のリスクを下げるために腸内マイクロバイオームの増強および代謝の健康改善を目指している。
強固な研究基盤
豆は、数十年にわたって発表された研究によって大腸がんリスクを下げる可能性があることが示唆されているため、介入として選ばれた。1990年代前半、米国国立がん研究所のポリープ予防試験によって、乾燥豆摂取量が上位4分の1の参加者の腺がん再発リスクが低下したことが明らかになった。その後の実験室での研究により、豆は炎症性機序を阻害することで肥満マウスの大腸発がんを予防することが示された。
「豆にはタンパク質と繊維が豊富に含まれています。繊維は、がんリスクに対して重要なマイクロバイオームの共生あるいは保護を促進するために不可欠です」とDaniel-MacDougall氏は述べた。「豆には高濃度の抗酸化物質と植物性化学物質も含まれています。これらは天然のプレバイオティクスで、コレステロールを改善するための心血管研究で立証されてきました」。
臨床試験
Daniel-MacDougall氏は、ガスを発生させる化合物が少ないことを理由に、臨床試験に白いんげん豆を選択した。白いんげん豆は、強い味や色がなく、別の食物と組み合わせやすい。さらに、ほとんどの人が頻繁に食べないため、食事への追加の特異的効果を確認しやすい。Beans to Enrich the Gut Microbiome vs. Obesity’s Negative Effects試験(BE GONE、No. 2016-0365)の試験段階に、腺腫性ポリープ患者20人を登録した。この結果の解析は現在進行中である。
現在、本試験の第二段階では、治療を終え、排便習慣が正常化した、大腸がんの既往歴のある肥満予備軍または肥満の成人の登録を開始した。参加者は、大腸の一部の切除を受けることや、豆の摂取の妨げとなる食事制限をすることはできない。
本試験では、各参加者自身を対照としたクロスオーバーデザインを用いた。8週間の対照期間中、参加者は通常食を摂取する。8週間の介入期間中は、通常食に白いんげん豆を加える(徐々に始めて1日1カップまで増やす)。登録栄養士およびDivision of Cancer Prevention and Population SciencesのBionutrition Research Coreが支援する。
試験期間中、参加者は5回採血し、便検体を7回提出する。主要評価項目は、便中の16S rRNAプロファイルおよび血中代謝産物の個人内および個人間の変化である。腸内マイクロバイオームの変化とホストバイオマーカーの変化の関係性(腸内の炎症および健全性に対する確立された糞便の代用検査、循環アディポサイトカイン、および包括的な血中脂質および代謝産物検査を含む)についても検討する予定である。加えて、本試験チームは、参加者のベースラインの食事およびマイクロバイオームが豆介入に対する生物学的反応に与える影響について評価する予定である。
「人々は、『マイクロバイオームを改善するために何を食べるのが望ましいですか?』あるいは『がんリスクを下げるために何を食べるのが望ましいですか?』ということについて知りたいと思っています」とDaniel-MacDougall氏は述べた。「われわれの研究で効果が確認されれば、『もっと豆を食べて』と言いやすいでしょう」。
【写真キャプション】
グラフに描かれているのは、がんのない101人の多様なマイクロバイオームの構成である。各縦棒は個人を表し、各棒内の色の違いは個人の糞便検体内のさまざまな細菌を表している。画像はCarrie Daniel-MacDougall氏の厚意による。
For more information, contact Dr. Carrie Daniel-MacDougall at 713-563-5783. For more information about the BE GONE trial, email BEGONE@ mdanderson.org or visit www.clinicaltrials.org and search for study No. 2016-0365.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
大腸がんに関連する記事
高用量ビタミンD3に遠隔転移を有する大腸がんへの上乗せ効果はない
2024年10月22日
マイクロサテライト安定性大腸がんに第2世代免疫療法薬2剤併用が有効との初の報告
2024年8月12日
PIK3CA変異大腸がんでセレコキシブにより再発リスクが低下する可能性
2024年7月5日
【ASCO2024年次総会】大腸がん検査の格差是正にAI患者ナビゲーターが有用
2024年6月2日