大腸がんでは致死的ながんには早期から検出可能な良性腫瘍との差がある

大腸腫瘍を対象にした小規模試験で「発生当初から悪性の」細胞を識別

転移がん腫瘍は「突然悪性化する」のか、それとも「発生当初から悪性である」のか?

この疑問はがんの早期発見および治療において根本的な謎である。明確な答えがないため、小さな異常細胞塊が早期に発見されると、それらが患者には無害である可能性があるにもかかわらず悪性腫瘍と同じ積極的治療が行われる。

米国科学アカデミー紀要に5月14日の週に発表した研究で、デューク大学と南カリフォルニア大学の共同研究チームは、検査した大腸腫瘍において浸潤がんは発生当初から悪性であり、この傾向は早期診断で識別できる可能性があることを発見した。

「良性腫瘍と悪性腫瘍は発生の仕方が異なり、悪性腫瘍の重要な特徴の一つである細胞運動は、腫瘍増殖の非常に早期の段階で現れます」と、筆頭著者であり、デューク大学外科部門と数学部門の博士研究員であるMarc D. Ryser博士は語った。

「悪性腫瘍の徴候である早期の細胞運動について、スクリーニングで検出された小腫瘍を検査することによって、積極的治療の恩恵を受ける可能性がある患者を特定できると考えられます」と、Ryser氏は語った。

Ryser氏の研究チームは、一部のヒトがん細胞において、創始細胞のゲノムの中に、最終腫瘍の多くの主要な特性が既に刷り込まれていることを示す近年の研究に基づいて研究を進めた。その結果、浸潤腫瘍は拡散の特性を徐々に発展させるというより拡散する能力を伴って発生すると結論した。すなわち、それらは生まれながらにして悪性なのである。

研究者らは19個のヒト大腸腫瘍をゲノムシークエンス技術および数学的シュミレーションモデルで解析した。浸潤がん検体の過半数(15個のうち9個)において早期からの異常な細胞運動の特徴を認めた。この傾向は、腫瘍が拡散して致死的になるために必要である。 検討した4つの良性腫瘍では、早期の異常な細胞運動が明らかには認められなかった。

「最終腫瘍の早期からの増殖は、創始細胞にあるドライバー(活性化因子)に大きく依存しています」と、著者は記載した。

この試験は小規模であったため、研究者らは、より規模の大規模の症例において確認する必要があると認めている。が、この所見は致死的な増殖と危害のない増殖とを識別する試験を確立する上で重要な前進である。

「スクリーニング技術の向上のおかげで、われわれはより小さな腫瘍を診断できます。患者への積極的治療は害や副作用を伴うため、スクリーニングで検出された小さな腫瘍のうち、どれが比較的良性で増殖が遅く、どれが発生当初から悪性であるかを把握することは重要です」と、上級著者であり、南カリフォルニア大学ケック医学校の病理学部門教授であるDarryl Shibata医師は語った。

Ryser氏およびShibata氏以外の研究著者はByung-Hoon Min氏およびKimberly Siegmund氏である。

本研究は米国国立衛生研究所(CA185016, CA196569, P30CA014089, K99CA207872)、国立科学財団(DMS 1614838)およびスイス国立科学財団(P300P2-154583)から助成金の援助を受けた。

翻訳担当者 有田香名美

監修 花岡秀樹(遺伝子解析/サーモフィッシャーサイエンティフィック)

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