リキッドバイオプシーが早期大腸がん発見に有望

「大腸がん検診は命を救うこともありますが、米国では現在の検診方法オプションが患者にとって簡便でなく少々面倒であるため、連邦政府が掲げる検診目標にはまだ到達していません。この研究はさらに調査が必要ですが、簡単で精度の高い血液検査によって検診率が上がれば、早期の大腸がんが発見されやすくなり、治療による根治の可能性も高くなるでしょう」と、ASCO消化管がんエキスパートNancy Baxter医師は語った。

血流中の循環腫瘍細胞(CTC)を同定する検査によって早期大腸がんを84~88%の正確度で検出できることが、最近の研究で明らかになった。CTCを用いたこれまでのほとんどの試験では進行期の大腸がんは検出できたが、この試験は、CTCによって治療可能性がさらに高い早期のがんを検出できることを示す最初の臨床試験の1つである。この研究成果は、サンフランシスコで開催される2018年消化管がんシンポジウムで発表される。

CTCは原発腫瘍から崩落して血流に乗って移動し、遠隔部位で新たな腫瘍を形成する。血中からのCTCの採集は「リキッドバイオプシー」の一形態である。

「この試験は重要です。なぜなら、大腸がん検査のために行う検便や侵襲性の高い大腸内視鏡などの検査を患者が嫌がる傾向があるからです」と、台湾(台北)のLinkou Chang Gung Memorial Hospital(林口長庚紀念醫院)の助教で筆頭執筆者のWen-Sy Tsai医学博士は述べた。「この結果は、大腸内視鏡による一次検診に消極的な人たちや、医師から渡された検便キットを提出しない人たちに対する解決策を示しているかもしれません」。

この試験について

この試験は台湾のChang Gung Memorial Hospital, Taoyuan(桃園長庚紀念醫院)で行われた。20歳を超えた、大腸内視鏡のために定期的に来院している患者、または結腸がんであると確定診断された患者620人が登録された。大腸内視鏡と生検により、438人に腺腫性ポリープ(前がん状態の腫瘍)、または早期から進行期までの大腸がんがあることがわかった。残りの被験者には、前がん病変や大腸がんの徴候はなかった(比較群)。

参加者620人全員について、通常の採血で得た血液をCTC解析用に2ミリリットル(小さじ半分程度)用いて検査した。

その血液検体はCMxで処理した。CMxは、早期がんで検出される程度の微量のCTCをヒト組織を模倣した脂質コーティングチップ上で捕捉する検定法である。この方法で得られた結果と大腸内視鏡の結果を、盲検化解析で比較した。

これまでの研究では、この検定法は、血球100億個に対してCTC 1個という大半のポリープで認められる程度のごく少数のCTCを検出できることが明らかになっている。

主な知見

この研究グループは、リキッドバイオプシーの特異度、つまり健康な人にポリープやがんがないと正しく判定される割合について注目した。「今回、高い特異度が得られたことは重要なことだと考えています。なぜなら、偽陽性の結果の数が多ければ、大腸がん検診を受けようと考えている多くの人たちの気持ちを削ぎかねないからです」とTsai博士は語った。97.3%という特異度の値は、偽陽性の確率が非常に低い(3%未満)ことを意味している。

この試験結果から、CTCの検出感度は、前がん病変における77%からI~IV期のがんにおける87%までの範囲であることが明らかになった。さらに、この結果の正確度を感度と特異度を考慮して計算したところ、この検査の正確度は高く、前がん検体からがん検体まで84%~88%の範囲であることがわかった。この検査の正確度は便潜血検査(FOBT)よりも優れていた。

次のステップ

「大腸内視鏡検診に消極的な患者の80%超が、便検査よりも血液検査を受けたいと考えていることが、最近の調査で明らかになっています」と、この論文の共著者でジョンズ・ホプキンス大学バイオエンジニアリング・イノベーション・デザインセンター(米国メリーランド州ボルチモア)胃腸科医、医長のAshish Nimgaonkar医師は語った。「検診を受けない理由の第一位が費用であることは多くの研究が明らかにしていますが、この検査の費用は100ドル未満という手頃な金額になる可能性があります」。Nimgaonkar医師はまた、今のところ大腸内視鏡は標準の診断検査であり、CTC検査陽性の患者は腫瘍またはポリープ検体を採取するために大腸内視鏡が必要であると述べた。

著者らは現在、台湾の一般国民におけるCTC検査使用の検証と、米国での試験の実施を計画している。この試験で使われた技術は、乳がんや肺がん、前立腺癌など他の固形腫瘍にも用いることができるだろうと著者らはいう。

この試験は台湾衛生福利部およびChang Gung Memorial Hospital(長庚紀念醫院)から資金提供を受けた。

要約全文はこちらを参照のこと。

読者のために:

Guide to Colorectal Cancer(大腸がんガイド・英語)

Cancer Screening(がん検診・英語)

*サイト注:【参考】USPSTF検診ガイドライン(大腸がん)(英語・翻訳中)

翻訳担当者 粟木瑞穂

監修 畑啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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原文掲載日 

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