FDAがRAS遺伝子変異検出用Praxis Extended RASパネルを承認

2017629日、米国食品医薬品局(FDA)は、転移大腸がん(mCRC)患者の腫瘍検体中のRAS遺伝子に存在する特定の遺伝子変異を検出する次世代シーケンサー(NGS)を用いた検査法であるPraxis Extended RASパネル(Illumina Inc社)の製造販売を承認した。この検査法は、パニツムマブ(商品名:ベクティビックス)による治療に適格な患者の特定を補助するために用いられる。

本承認は、一度の検査で複数の大腸がんRAS遺伝子変異の検出が可能な次世代シーケンサー(NGS)検査法に対する初のFDA承認となる。

Praxis Extended RASパネルは、mCRC患者の腫瘍組織中のRAS遺伝子(KRASエクソン23および4領域ならびにNRASエクソン23および4領域)に存在する56種類の特異的変異を検出する。Praxis Extended RASパネルの結果が、大腸がん組織に変異が存在することを示す場合、パニツムマブによる治療は推奨されない。Praxis Extended RASパネルが変異を検出しない(RAS変異陰性と推測される)場合、パニツムマブは適切な治療である可能性がある。

Praxis Extended RASパネルの安全性と有効性は、パニツムマブとFOLFOXの併用療法とFOLFOX単独療法とを比較評価した多施設共同臨床試験に登録したmCRC患者の検体を用いて後ろ向きに検討された。RAS野生型患者における無増悪生存期間および全生存期間の結果は、腫瘍にKRAS変異またはNRAS変異がない患者におけるパニツムマブの有効性を支持するものであった。本パネルは分析的検証により、mCRC患者の特定のKRAS変異およびNRAS変異を系統的に正確に検出することが実証された。

パニツムマブの製品表示は、パニツムマブの適応とPraxis Extended RASパネルの適応目的とが整合するように変更され、パニツムマブはFOLFOXとの併用療法として、RAS野生型(この使用法においてFDA承認済みの検査法で決定された、KRASNRASの両方が野生型であると定義)mCRC患者に対する初回治療として適応されることが明示された。パニツムマブは、フルオロピリミジン、オキサリプラチン、およびイリノテカン含有化学療法による前治療後に病勢が進行したRAS野生型mCRC患者に対する単剤療法での適応もある。

Praxis Extended RASパネルの使用方法については以下を参照のこと:

https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfPMA/pma.cfm?id=P160038

パニツムマブの添付文書情報は以下を参照のこと:

https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2017/125147s207lbl.pdf

医療従事者は、医薬品および医療機器の使用との関連が疑われるすべての重篤な有害事象を、http://www.fda.gov/medwatch/report.htmのオンラインフォームへの入力、オンライン上の宛先フォームに料金受取人払いでFAX1-800-FDA-0178)または郵送、 もしくは電話(1-800-FDA-1088)のいずれかの方法で、FDAMedWatch Reporting Systemに報告しなくてはならない。

Oncology Center of Excellenceのツイッターのフォローはこちらから@FDAOncology

翻訳担当者 星野恭子

監修 東海林洋子(薬学博士)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

大腸がんに関連する記事

炎症性腸疾患(IBD)患者の大腸がんリスクをDNA検査が予測の画像

炎症性腸疾患(IBD)患者の大腸がんリスクをDNA検査が予測

ロンドンの英国がん研究所(ICR)の科学者らの研究によると、新しいDNA検査法によって、炎症性腸疾患(IBD)患者のうち大腸がんのリスクが最も高い人を特定できることが判明した。
 
研究チ...
BRAF V600E変異大腸がんにエンコラフェニブ療法、FDA承認の根拠の画像

BRAF V600E変異大腸がんにエンコラフェニブ療法、FDA承認の根拠

MDアンダーソンニュースリリース 2025年1月25日アブストラクト16

BRAF V600E遺伝子変異を有する転移大腸がん(mCRC)患者は、分子標的薬エンコラフェニブ(販売名...
大腸がんの治療指針に役立つAI検査の画像

大腸がんの治療指針に役立つAI検査

がんは治療が複雑で難しい病気であるが、がんを阻止する最も強力な手段の一つは私たちの中にあるもの、免疫系である。

この事実は、大腸がん(結腸直腸がん)において特に重要である。研究者たちは、...
アスピリンは一部の大腸がん患者の再発リスクを低下させる可能性の画像

アスピリンは一部の大腸がん患者の再発リスクを低下させる可能性

ASCOの見解(引用)「『朝、アスピリンを2錠飲んでから電話して』という古い言い回しは、今や新たな意味を持つかもしれません。PI3Kシグナル伝達経路の遺伝子変異は大腸がん患者の...