健康的な生活習慣が大腸がん診断後の長期生存を改善

米国臨床腫瘍学会(ASCOの見解

 「良好な標準的がん治療は大腸がんによる死亡を大幅に低減させますが、この研究結果では、それに加えて患者が治療後にどのような食事をとり、どう生活するかで違いがでることを明確に示しています」と、ASCO会長のDaniel F. Hayes医師(ASCOフェロー、米国内科学会名誉上級会員)は述べた。「がんの再発予防に、化学療法以外に何ができるかと患者によく聞かれます。かなり大規模なデータに基づきアドバイスできる情報を得られたことは素晴らしいと思います」

ステージ3の大腸がん患者992人を登録した研究で、術後補助療法の期間中および終了後に健康的な生活を維持したと答えた患者は、あまり健康的な生活習慣ではなかったと答えた患者に比べ、死亡リスクが42%低く、再発リスクも低い傾向だったことが示された。本研究は、シカゴで開催される2017ASCO年次総会で発表される。

「米国には130万人以上の大腸がんサバイバーがいます。これらの患者には、再発リスクを下げるために何ができるかの指導など、サバイバーシップ・ケアが必要です」と、本研究の筆頭著者でカリフォルニア大学サンフランシスコ校のErin Van Blarigan疫学・生物統計学准教授は述べる。「こうした患者の関心とニーズに応え、米国がん協会 (ACS) 2012年に『がんサバイバーのための栄養と身体活動の指針』を発表しましたが、がん診断後にこの指針に従うことが、転帰の改善につながるかどうかは不明でした」。

本研究で、生活習慣がACSの指針に一致している大腸がん患者の方が、無病生存期間および全生存期間が長いことが明らかになった。

研究について

2種類の術後化学療法が大腸がんの再発および死亡に与える影響を調べるために、1999年から2001年までに登録した患者の一部を本研究の対象患者とした。妥当性が確認された調査票を用い、臨床試験の一環として生活習慣を2回評価した。がんサバイバー向けのACS指針への適合度合いにより、患者に0から6の点数をつけた。0点は健康的な生活習慣が全くみられない場合で、6点は健康的な生活習慣がすべて実践されていることを示す。特に以下の推奨事項をもとに、個人を評価した。

  • 健康な体重を維持する
  • 定期的な身体活動を行う
  • 全粒穀物、野菜、果物が豊富で、赤肉や加工肉が少ない食事をとる


ACSのがん予防の指針にあるように、アルコール摂取も評価に含めた。

健康的な生活習慣の各項目には均等な加重をかけたが、食事内容の評価は多少複雑であった。肉や穀物、野菜や果物に対し個別に点数付けしたうえで、食事全体としての点数を定める必要があったためである。

主な所見

中央値7年の追跡期間を通じて、健康的な生活習慣スコアが最も高い(5-6点)91人のサバイバーは、生活習慣スコアが最も低い(0-1点)262人のサバイバーよりも、死亡のリスクが42%低く、再発が少ない傾向にあった。アルコール摂取を評価に含めた場合、最も生活習慣スコアの高い(6-8点)162人のサバイバーは、最も点数の低い(0-2点)サバイバー187人と比べて、死亡リスクは51%、再発リスクが36%低かった。この関連は、特定の生活習慣要因によるものではなく、体重、定期的な身体活動および健康的な食事のすべてが重要であった。

研究者らは、多くのがんサバイバーが糖尿病や心臓病など慢性的な健康問題も抱えており、健康的な生活習慣は全般的な健康状態の改善につながると指摘する。そのうえで、本研究の新たな知見は、健康的な生活習慣が大腸がんに特有の転帰も改善する可能性を示していると強調した。

「ここで強調しておくべきことは、健康的な生活習慣だけで、大腸がんの生存率を大幅に改善してきた標準的化学療法などの治療の代替にはならないと著者らは示唆しているということです。むしろ大腸がん患者は、健康的な食事をし、定期的に運動をすることで、健康状態が良くなるだけでなく、再発リスクも下がる可能性があると希望を持つべきです」とHayes医師は話した。

次のステップ

「われわれの研究チームは、大腸がん患者に対しFitbitのようなデジタル機器による生活習慣介入の実現性や受容性を評価するための臨床試験を行っています」とVan Blarigan医師は述べた。「この介入が患者に受け入れられ、有用であれば、今後の研究で再発と死亡リスクに対する影響を調査していきます」。

本研究は米国国立がん研究所、This study received funding from the National Cancer Institute, of the National Institutes of Health.米国国立衛生研究所からの資金提供を受けた。

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  • 大腸がんガイド
  • サバイバー向けの身体活動のヒント

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Disclosures for Daniel F. Hayes, MD, FACP, FASCO: Stock and Other Ownership Interests with OncoImmune and InBiomotion; Daniel F. Hayes,MD, FACP,FASCOの情報開示は次の通りStock and Other Ownership Interests with OncoImmune and InBiomotion; Honoria from Lilly; Research Funding with Janssen Research & Development (Inst.), AstraZeneca (Inst.), Puma Biotechnology (Inst.), Pfizer (Inst.), Lilly (Inst.), and Merrimack Pharmaceuticals/Parexel International Corporation (Inst.); Patents, Royalties and Other Intellectual Property with royalties from licensed technology to Janssen Diagnostics regarding circulating tumor cells; Travel, Accommodations, Expenses from Janssen Diagnostics.

Bruce E. Johnson, FASCOの情報開示は次の通りStock and Other Ownership Interests with KEW Group; Honoraria from Chugai Pharma and Merck; Consulting or Advisory Role with Amgen, AstraZeneca, Boehringer Ingelheim, Chugai Pharma, Clovis Oncology, Genentech, GlaxoSmithKline, KEW Group, Lilly, Merck, Novartis, and Transgene; Research Funding from Novartis (Inst.); Expert Testimony for Genentech.

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翻訳担当者 片瀬ケイ

監修 橋本仁(獣医学)

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原文掲載日 

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