英NICEが大腸リンチ症候群に分子検査の診断ガイダンスを発表

リンチ症候群に対する追加検査の指針となる、免疫組織染色およびマイクロサテライト不安定性検査の実施に関する科学的根拠に基づく推奨

2017年2月、英国国立医療技術評価機構(NICE)は、大腸がん患者におけるリンチ症候群に対する追加検査の指針となる、免疫組織染色およびマイクロサテライト不安定性検査の実施に関する科学的根拠に基づく推奨を発表した。本推奨では、すべての大腸がん患者に対し、最初の診断時に、DNAミスマッチ修復の欠損を有する腫瘍を同定するためミスマッチ修復タンパクに対する免疫組織染色またはマイクロサテライト不安定性検査を実施することが考慮されており、リンチ症候群に対し順次実施する追加検査の指針となる。本ガイダンスでは、検査結果が出るまで治療開始を待つべきではない、と強調している。

免疫組織染色検査の流れ

ステップ1:MLH1、MSH2、MSH6およびPMS2に対し4パネルの免疫組織染色検査を行う。

ステップ2:MLH1の免疫組織染色の結果が異常だった場合、散発性大腸がんとリンチ症候群に関連する大腸がんとを識別するため、BRAF V600E検査およびMLH1プロモーター高メチル化検査を順次実施する。初めにBRAF V600E検査を行う。

ステップ3:BRAF V600E検査が陰性だった場合、MLH1プロモーター高メチル化検査を行う。

ステップ4:MLH1プロモーター高メチル化検査が陰性だった場合、生殖細胞系DNAの遺伝子検査を行い、リンチ症候群かどうかを確認する。

ステップ2~4において、MSH2、MSH6またはPMS2の免疫組織染色の結果が異常だった場合、生殖細胞系DNAの遺伝子検査を行い、リンチ症候群かどうかを確認する。

マイクロサテライト不安定性検査の流れ

ステップ1:マイクロサテライト不安定性検査を行う。

ステップ2:マイクロサテライト不安定性検査の結果が陽性だった場合、散発性大腸がんとリンチ症候群に関連する大腸がんとを識別するため、BRAF V600E検査およびMLH1プロモーター高メチル化検査を順次実施する。初めにBRAF V600E検査を行う。

ステップ3:BRAF V600E検査が陰性だった場合、MLH1プロモーター高メチル化検査を行う。

ステップ4:MLH1プロモーター高メチル化検査が陰性だった場合、生殖細胞系DNAの遺伝子検査を行い、リンチ症候群かどうかを確認する。

医療従事者は、患者に対し、患者本人およびその親族の両者に与える検査結果の影響について確実に情報提供しなければならず、関連する支援や情報も得られるようにしなければならない。また、適切な訓練を受けた医療従事者による遺伝子検査に関する話し合いも必要である。

ミスマッチ修復タンパクに対するマイクロサテライト不安定性検査または免疫組織染色を行う検査室は、認可を受けた外部品質保証プログラムに参加しなければならない。

本ガイダンスに関する臨床上の必要性および診療、診断検査、エビデンス、委員会での議論、ならびに実施要項についての詳細はこちら

翻訳担当者 生田亜以子

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

大腸がんに関連する記事

運動で結腸がんサバイバーの生存期間を延長の画像

運動で結腸がんサバイバーの生存期間を延長

ダナファーバーがん研究所が共同で主導した研究により、運動が結腸がんサバイバーの生存期間を延ばし、がんを患っていない人々と同等の生存期間に近づく可能性があることが明らかになった。

ダナファ...
大腸がん、膵がんにおける遺伝子変異がKRAS G12C阻害薬の一次耐性に関与の画像

大腸がん、膵がんにおける遺伝子変異がKRAS G12C阻害薬の一次耐性に関与

フィラデルフィア―KRAS G12C変異を伴う大腸がんと膵管腺がんは、KRAS G12C阻害剤の投与歴がなくとも、KRAS G12C阻害剤への耐性に関連し得るKRAS G12C以外の遺...
大腸がんにエンコラフェニブ+セツキシマブ+mFOLFOX6療法は奏効率を大幅に改善の画像

大腸がんにエンコラフェニブ+セツキシマブ+mFOLFOX6療法は奏効率を大幅に改善

BREAKWATER試験結果第3相BREAKWATER試験では、BRAF V600E変異型転移性大腸がん(mCRC)患者の一次治療として、エンコラフェニブ(販売名:ビラフトビ)...
炎症性腸疾患(IBD)患者の大腸がんリスクをDNA検査が予測の画像

炎症性腸疾患(IBD)患者の大腸がんリスクをDNA検査が予測

ロンドンの英国がん研究所(ICR)の科学者らの研究によると、新しいDNA検査法によって、炎症性腸疾患(IBD)患者のうち大腸がんのリスクが最も高い人を特定できることが判明した。
 
研究チ...