大腸がん予後バイオマーカーの有効性は、腫瘍部位に依存

専門家の見解

「大腸がんの腫瘍部位が患者の生存期間を予測するのに役立つことを示す先の研究を見てきたが、この研究は治療をさらに個別化するのに役立つ情報を追加しています」と、ASCO専門委員Lynn Schuchter医師(FASCO)は述べた。

大規模な集団ベースの研究で、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)として知られる特定のタイプのバイオマーカーの大腸がん生存予測における有用性が、腫瘍の原発部位に依存することを示唆された 。 これまでの研究で、大腸がん患者での高密度のTILと生存期間延長との関連性が示されていたが、著者らによれば、この研究は、腫瘍部位と言う観点でTILが予後に及ぼす影響を調べた最初の研究である。 この研究は、2017年、オーランドで開催される米国臨床腫瘍学会がん免疫療法学会の臨床免疫腫瘍シンポジウムで発表される予定である。

主な知見

研究者は、それぞれの腫瘍組織検体において、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラー(NK),ナチュラルキラーT(NKT)細胞の3種類のTILの密度(総数)を評価した。 全体的に、3種類のTILすべての密度が高い場合、腫瘍原発部位に関わらず5年生存率の改善との関連がみられた。 この関連性は、患者の年齢、病期および他の因子とは無関係であった。

しかし、特定のタイプのTILが予後に与える影響は、腫瘍部位によって異なった。高密度の調節性T細胞は、直腸腫瘍患者ではより長い生存期間と関連したが、左側または右側の結腸腫瘍患者では生存期間と関連していなかった。高密度の細胞傷害性T細胞は、右側の大腸腫瘍患者では、より長い生存期間を予測したが、左側の結腸または直腸腫瘍患者では、そうではなかった。 NKまたはNKT細胞による予後への影響では、腫瘍部位による差はなかった。

「この研究は、腫瘍部位に基づき、特定の予後バイオマーカーに重点を置く必要がある可能性を示唆しています。しかし、治療計画の変更を勧めるには、より多くの研究が必要です」と、研究筆頭著者である、スウェーデンのルンド大学医学博士課程院生であるJonna Berntsson医師は述べた。 TILの検査は、まだ通常の大腸がん治療の一部ではない。

子宮内では、大腸はその部位によって異なる胚の部分から発達する。そのために大腸は左側と右側で生物学的に異なる。 これまでの研究で、右側の大腸がん患者の生存率が低いことなど、大腸の左側で初発した大腸腫瘍と右側で初発した大腸腫瘍との遺伝的および臨床的相違が報告されている。

研究

研究者は、新たに大腸がんと診断され、「マルメ食事とがん」研究に登録された患者557人の腫瘍を分析した。この前向き研究の第一の目的は、さまざまな食事要因とがん発生率との関連性を調査することだった。このスウェーデンの研究では1991年から1996年まで30,446人の参加者を登録した。ステージIIIの大腸がん患者126人の補助療法に関するデータが利用可能であった。そのうち、61人が補助化学療法を受けていた。

大腸がんについて

大腸がんは、世界中で男女ともに3番目に多いがんである。米国だけでも2017年に、約95,500人が新たに結腸がんと診断され、39,900人が直腸がんと診断される見込みである。今年、米国で50,000人以上が大腸がんで死亡すると予測されている。

研究資金

この研究は、スウェーデン癌協会、スウェーデン研究評議会、スウェーデン政府の臨床研究助成金、Gunnar Nilsson Cancer財団、Mrs. Berta Kamprad財団、ルンド大学医学部および同大学病院の研究助成金を得ている。

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翻訳担当者 有田香名美

監修 廣田 裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科プライマリーケアクリニック)

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