腸内細菌が食事と大腸がんの関連に寄与

食事と一部の大腸がんとの関連性において、大腸に生息する細菌が寄与している可能性を示す研究が発表された。この研究はこれまでで最も有力なエビデンスであると、筆頭著者であるダナファーバーがん研究所およびマサチューセッツ総合病院の荻野周史医学博士は述べる。

本日、JAMA Oncology誌電子版に発表された論文は、ヒトの大腸に生息する数百種類の細菌の一つで、大腸がんに関与すると考えられているFusobacterium nucleatumに注目している。数十年にわたる137,000人以上の食事の追跡と、1,000人以上の大腸がん試料におけるF. nucleatumの検査の結果、全粒穀物や食物繊維が豊富な「健康的な」食事を摂取している人は本細菌が生息する大腸がんを発症するリスクが低いが、本細菌が生息しない大腸がんのリスクは実質的に変化しなかったと判定した。

「健康的な」食事は大腸がんを予防すると考えられる。新たな研究は、健康的な食品が、一つにはF. nucleatumを含む消化管のさまざまな細菌の相対量を変化させることによりこれらの効果をもたらす可能性があることを示している。

「われわれの研究では一種類の細菌のみを扱いましたが、腸内細菌が食事に呼応して、ある種の大腸がんリスクを減少または増加させるように働く可能性があるという、はるかに幅広い現象を示唆しています」と述べたのは、ダナファーバーがん研究所、ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院、およびブリガム&ウィメンズ病院の荻野周史氏である。本研究の統括共著者は、ダナファーバーがん研究所消化管がんセンター長でブリガム&ウィメンズ病院のCharles Fuchs医学博士、そしてマサチューセッツ総合病院、ブリガム&ウィメンズ病院、およびBroad Institute of MIT and HarvardのAndrew Chan医学博士である。

「これらは、長期間の食事摂取と腫瘍組織中の細菌とが関連することを示した、ヒトにおける初めてのデータです。これは、一部の腸内細菌が、動物で直接がんの発生を誘引する可能性があることを示す過去の研究を裏づけています」、とChan氏は付け加えた。

本研究は、参加者の一部が数十年の間に大腸がんを発症した大規模健康追跡調査であるNurses’ Health StudyとHealth Professionals Follow-up Studyの137,217人の食事記録を使用した。研究者らは、患者の腫瘍組織中のF. nucleatumレベルを測定し、これらのデータを食事およびがん発生率のデータと統合した。

「最近の実験で、F. nucleatumが免疫系と相互作用し、大腸細胞の成長経路を活性化することで大腸がんの発生に関与する可能性が示されました」と、荻野氏は述べた。「ある研究で、参加者が健康的な食事から欧米型の低繊維食に切り替えたところ、糞便中のF. nucleatumが著しく増加したことが明らかになりました。われわれは、健康的な食事と大腸がんリスク低下との関係は、F. nucleatumが存在しない腫瘍よりも豊富に存在する腫瘍でより顕著であるという仮説を立てました」。

研究結果がまさにそれを示した。健康的な食事を続けた参加者では、F. nucleatumが多量に生息している大腸がんの発症リスクが極端に低かった。しかし、本細菌が生息しない大腸がんに対する予防効果はなかった。

「われわれの研究結果は、食事が消化管の細菌に影響を与え、それによってある種の大腸がん発症リスクに影響を及ぼす可能性があることを示す有力なエビデンスを提供するものです」と、荻野氏は述べた。

また、「本研究の結果から、食事、消化管の細菌、およびがんの発生の間にある複雑な相互関係について、さらに研究が必要であることは明らかです」と、Chan氏は述べた。

本論文の筆頭著者は以下のとおりである。Raaj Mehta, MD, of Mass General, Yin Cao, ScD, of Mass General and Harvard T.H. Chan School of Public Health, and Reiko Nishihara, PhD, of Dana-Farber, Brigham and Women’s, the Broad Institute, and Harvard T.H. Chan School of Public Health。共著者は以下のとおりである。Kosuke Mima, MD, PhD, Zhi Rong Qian, MD, PhD, Keisuke Kosumi, MD, PhD, Tsuyoshi Hamada, MD, PhD, Yohei Masugi, MD, PhD, Susan Bullman, PhD, and Jeffrey Meyerhardt, MD, MPH, of Dana-Farber; Wendy Garrett, MD, PhD, of Dana-Farber, the Broad Institute, and Harvard T.H. Chan School of Public Health; David Drew, PhD, of Mass General; Mingyang Song, MD, ScD, of Mass General and Harvard T.H. Chan School of Public Health; Jonathan Nowak, MD, PhD, and Xuehong Zhang, MD, ScD, of Brigham and Women’s; Aleksandar D. Kostic, PhD, of the Broad Institute; Kana Wu, MD, PhD, and Curtis Huttenhower, PhD, of Harvard T.H. Chan School of Public Health; Teresa T. Fung, ScD, RDN, of Simmons College; Walter Willett, MD, DrPH, and Edward Giovannucci, MD, ScD, of Harvard T.H. Chan School of Public Health and Brigham and Women’s。

この研究は、米国国立衛生研究所により助成を受けた(grants P01 CA87969, UM1 CA186107, P01 CA55075, UM1 CA167552, P50 CA127003, R01 CA137178, K24 DK098311, R01 CA202704, R01 CA151993, R35 CA197735, and K07 CA190673)。また、Project P Fund for Colorectal Cancer Research、Friends of Dana-Farber Cancer Institute、Bennett Family Fund、およびEntertainment Industry Foundation through National Colorectal Cancer Research Allianceにより助成を受けた。

翻訳担当者 工藤章子

監修 大野 智(補完代替医療、消化器/大阪大学・帝京大学)

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