遺伝性大腸がん

MDアンダーソン OncoLog 2016年10月号(Volume 61 / Issue 10)

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遺伝性大腸がん

35歳以下の大腸がん患者の3分の1以上は遺伝性

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究により、大腸がんの診断を受けた思春期および若年成人の3分の1以上が、遺伝性のがんであることが明らかになった。

50歳未満の人の大腸がんが増えている状況下で発表された本研究の知見は、こうした患者に対する遺伝子カウンセリングの必要性を強調する結果となった。

このレトロスペクティブ(後ろ向き)研究は、この種の研究としては最大規模で、2009年から2013年までにMDアンダーソンで遺伝子カウンセリングを受けた35歳以下の大腸がん患者、約200人のデータを評価した。

「3分の1以上である35%の患者が、遺伝性の大腸がんでした。過去の文献では、大腸がん患者の中で、遺伝性の大腸がんが発生する頻度は5%でしかないと報告されていたので、これは驚きでした」と、本研究の上席著者で、臨床がん予防部門助教のEduardo Vilar-Sanchez医学博士は述べた。

本研究で遺伝性大腸がんだった大部分の患者はリンチ症候群(45人)または、家族性ポリポーシス(16人)だった。リンチ症候群における大腸がんの生涯リスクは最大で80%に達する。また家族性ポリポーシスだとスクリーニング検査、サーベイランス、予防措置をとらなければ、ほぼ確実に大腸がんを発症する。

「遺伝性がんの診断は、より多くの人に影響してきます。家族に対する診断にもなるからです」と、Vilar-Sanchez医師は言う。「家族も遺伝子検査を受ける必要があります。遺伝子変異の診断を受けたら、サーベイランスとスクリーニング検査をしていく必要があります」。また本研究に参加した遺伝性大腸がん患者の多くが、家族の中ではじめて遺伝性症候群の診断を受けたことも留意点であると、Vilar-Sanchez医師は言う。加えて、遺伝性大腸がん患者のうち13人は生殖細胞系列変異で、家族にはがん既往歴がなかった。本研究の知見は、35歳以下で大腸がんの診断を受けた患者は、家族のがん既往歴にかかわらず遺伝性がん症候群に関する遺伝子カウンセリングを受けるべきであることを示唆している。

本研究ではさらに、遺伝性大腸がんの患者は非遺伝性大腸がんの患者と比較して、左側の腫瘍、転移性がん、未分化型腫瘍、印環細胞腫瘍などに特徴づけられる侵襲性の強いがんは少ない傾向にある。リンチ症候群患者の腫瘍の病理学的特性は、家族性大腸ポリポーシス患者と大きな違いはなく、遺伝性症候群を持つ患者間では、こうした違いは見られないと、Vilar-Sanchez医師は述べた。

本研究から得た知見の主なポイントは、35歳以下の大腸がん患者に対しては、遺伝性がんを疑うべきということである。

「大腸がんを扱う医師のほとんどは、いつかの時点で遺伝性の大腸がん患者の治療をすることになるでしょう。遺伝性大腸がんの場合は、それに応じたケアと患者の家族への影響についても考える必要があるのです」と、Vilar-Sanchez医師は話した。

For more information, contact Dr. Eduardo Vilar-Sanchez at 713-563-4743.

Further reading

Mork ME, You YN, Ying J, et al. High prevalence of hereditary cancer syndromes in adolescents and young adults with colorectal cancer. J Clin Oncol. 2015;33:3544–3549.

Dineen S, Lynch PM, Rodriguez Bigas MA, et al. A prospective Six Sigma quality improvement trial to optimize universal screening for genetic syndrome among patients with youngonset colorectal cancer. J Natl Compr Canc Netw. 2015;13:865–872.

—–Joe Munch

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翻訳担当者 片瀬ケイ

監修 畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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