抗PD-L1免疫療法+MEK阻害剤が、転移性大腸がんに奏効
第1相試験において部分奏効を達成し、良好な忍容性を示す
抗PD-L1免疫療法は、MEK阻害剤と併用した場合、マイクロサテライト安定転移性大腸がん患者において奏効を達成する可能性があることが、スペイン、バルセロナで開催されたESMO第18回世界消化器がん学会で発表された第1相試験のデータによって示された。
「これまで免疫療法は、大腸がん患者のうちわずか5%のマイクロサテライト不安定性が高い患者にしか活性を示しませんでした」と、本試験(1)の試験責任医師である、テネシー州ナッシュビルにあるサラ・キャノン研究所およびTennessee OncologyのJohanna Bendell氏は述べている。
マイクロサテライト不安定性が高い大腸がんは、多くの遺伝子変異と関連するため、PD-L1/PD-1阻害剤を用いた免疫療法が奏効しやすい。しかし、転移性大腸がん患者の大多数(約95%)はマイクロサテライト安定であり、これまで免疫療法がほとんど効果を示さなかった。
前臨床試験では、MEK阻害剤が、腫瘍内の活性免疫細胞(CD8陽性細胞など)の数を増加させ、また免疫系をより活性化させる因子の発現を増加させることにより、腫瘍に対し免疫療法を奏効しやすくさせることが可能であることが示唆された。
この第1b相試験では、治療歴のある転移性大腸がん患者23人を、MEK阻害剤cobimetinib[コビメチニブ]の用量を漸増して(1日20mg、40mg、60mgを21日間投与後、7日間休薬)治療し、最高用量で患者数を拡大した。またどの治療においても、PD-L1阻害剤atezolizumab[アテゾリズマブ]800mgを2週間に1回静脈内投与した。
治療後、4人の患者(17%)で30%以上の腫瘍サイズの縮小、5人の患者(22%)で病勢安定が認められた。奏効期間は4~15カ月超で、部分奏効が認められた患者4人中2人が、データカットオフの時点でも奏効が持続していた。
部分奏効が認められた患者のうち3人は、マイクロサテライト安定またはマイクロサテライト不安定性が低く、1人はマイクロサテライトの状態が不明であった。本試験において、マイクロサテライト不安定性が高い患者はいなかった。
ベースラインのPD-L1発現状態は、奏効に影響しなかった。また、この併用療法は忍容性が良好であり、治療に関連した重篤な有害事象は報告されなかった。
「今回の結果は、この併用療法で期待した作用機序と一致します。これは大腸がん患者の残り95%に免疫療法が奏効するチャンスを与えるうえで有望です」と、Bendell氏は述べている。研究者らはすでに、難治性転移性大腸がん患者を対象とした、併用療法と標準治療とを比較するランダム化第3相試験を開始した。
この結果について、「MEK依存性細胞内シグナル伝達の阻害によって、免疫療法に対する転移性大腸がんの感受性が高まる可能性があることが、この重要な第1b相試験によって今初めて示されています」と、ドイツにあるライプツィヒ大学がんセンター(University Cancer Centre Leipzig)所長のFlorian Lordick教授は述べている。
「これは、以前は免疫チェックポイント阻害剤の対象とされていなかった患者集団に免疫療法を適用するための第一段階です」と、Lordick教授は述べている。
参考文献
1.Abstract LBA-01 – ‘Safety and efficacy of cobimetinib (cobi) and atezolizumab (atezo) in a Phase 1b study of metastatic colorectal cancer (mCRC)’ will be presented by Johanna Bendell during Session I: Opening, Selected Abstracts, and Lectures on Nutrition on Wednesday 29 June, 14:50 (CEST).
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