「大腸がん検診を受けましょう」(一般向け)
MDアンダーソン OncoLog 2016年3月号(Volume 61 / Issue 3)
Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL
「大腸がん検診を受けましょう」 -House Call(一般向け)
大腸がんの撲滅と予防には定期検診が大事
米国では、がんで死亡する人のうち、大腸がんで亡くなる人が2番目に多いのです。しかし、米国国立がん研究所によると、大腸がんによる死亡の90%は定期検診で防ぐことができたであろうと推定されています。
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでは、大腸がんになるリスクが平均的なレベルであれば、50歳から大腸がん検診を受けるよう勧めています。
検診の種類
大腸がん検診では、大腸や直腸にポリープと呼ばれる組織の増殖がないかどうかを調べます。ほとんどのポリープは害はありませんが、だんだんと大きくなって、がんになるものもあります。検査では、ポリープがまだ小さいうちに、がんになる危険があるかどうかを見分けることができます。
通常、大腸がん検診では次のような検査を行います。
大腸内視鏡検査
この検査では、先端に照明付きビデオカメラが付いた軟らかく曲がりやすいスコープを使って、直腸と大腸全体に異常がないかどうかを調べます。検査中にポリープが見つかれば切除できます。組織のサンプルを採って、あとで検査することもあります。身体の苦痛を伴う検査なので、ほとんどの人は麻酔を受けて受診します。50歳以上の人は、大腸がんリスクが平均的なレベルであれば10年ごとに内視鏡検査を受けるのがよいでしょう。
バーチャル大腸内視鏡検査
MDアンダーソンがんセンターでは、従来の大腸内視鏡検査よりも身体の苦痛を伴わずに楽に受診できる検査として、この検査を勧めています。CTを使って大腸から直腸までの画像を作成します。麻酔は必要ありません。作成された画像でポリープなどの異常が見つかった場合は、それを切除するために従来式の大腸内視鏡検査を行う必要があります。一般に、バーチャル大腸内視鏡検査は5年ごとに受診するとよいと考えられます。最新式の検査なので、保険で受診できるかどうかは医療保険に確認しましょう。
S状結腸鏡検査
この検査では、大腸内視鏡検査と同じように、がんになる疑いがあるポリープを発見したら切除できますが、検査範囲は直腸と大腸下部(下行結腸とS状結腸)に限られます。身体に与える苦痛は大腸内視鏡検査よりも少ないですが、検査範囲外の結腸にあるポリープは見つけることができません。S状結腸鏡検査は5年ごとに受診するのがよいでしょう。
バリウム注腸二重造影法
この検査では、大腸から直腸にかけての粘膜の異常を調べます。肛門から大腸に造影剤を注入し、同時に空気も注入して大腸を膨らませ、X線撮影を行います。ポリープが見つかれば、従来式の大腸内視鏡検査によってそれを切除する必要があるのは、バーチャル大腸内視鏡検査と同じです。一般に、バリウム注腸二重造影法は5年ごとの受診が勧められます。
糞便検査
大腸がん検診については、自宅で採便して行う3種類の方法が米国食品医薬品局によって承認されています。3種類のうち2つは免疫化学的便潜血検査(FIT)と便潜血検査(FOBT)というものであり、便に血液が混じっていないかどうかを調べます。残りの1種類は、DNA検査を行って便に異常なDNAが混じっていないかどうかを調べる検査です。血液や異常なDNAが見つかった場合は、大腸がんが疑われるが、確認のためには大腸全体を内視鏡で調べる必要があります。糞便検査は、切除で大腸がんが予防できる前がん病変については確実には見つけられないので、MDアンダーソンがんセンターでは、どちらかと言えば大腸内視鏡検査かバーチャル大腸内視鏡検査を勧めています。糞便検査を受ける場合は、FITかFOBTを毎年、あるいはDNA検査を3年ごとに受診したほうがよいでしょう。
大腸内視鏡検査、バーチャル大腸内視鏡検査、S状結腸鏡検査、バリウム注腸二重撮像法を受けるときは、前日は必ず検査に備えて水分だけを摂るようにし、下剤や浣腸剤を服用します。
どの検査にどんな利点やリスクがあるか、どれが自分に一番適しているかについては、医師が相談に乗ってくれます。定期検診を受けるだけではなく、ふだんから出血、排便の異常がないかどうかに注意し、何かあればすぐに医師の診察を受けてください。
自分の大腸がんのリスクはどのくらい?
自分がどのような定期検診を受けるべきかは、自分と家族の病歴をもとに医師との話し合いによって決めることができます。MDアンダーソンがんセンターでは、大腸がんのリスクが平均的なレベルであれば、50歳から75歳まで定期的に検診を受けるよう勧めています。
大腸がんリスクが高い場合は、その理由に応じて、定期検診を50歳以下から開始したり、受診頻度を上げたりするよう勧めています。慢性潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患がある人や、自分か家族に大腸がん、大腸ポリープ(腺腫)、あるいは家族性大腸腺腫症、遺伝性非ポリポーシス大腸がん(リンチ症候群)といった遺伝性腫瘍症候群の病歴がある人は、大腸がんリスクが高い可能性があります。
定期的に検診を受診し、ふだんから体調に留意することで大腸がんの早期発見につながります。発見が早いほど治療しやすく、ポリープもがんになる前に切除できるのです。
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