局所進行直腸がんに対する術前の短期間放射線照射+化学療法は、標準化学放射線療法と同等の効果で毒性が低い

米国臨床腫瘍学会(ASCO)の見解
 

「われわれは手術に先立ち、有効性を最大限に高め副作用が最小限に抑えられるように、患者に行う治療法をきめ細かく調整している。本研究はこれまでより短期間の放射線照射後に化学療法を行うことで腫瘍の縮小が可能になることを示し、これが直腸がん患者にとって歓迎すべきニュースとなることは間違いない」と本日の報道発表の議長でありASCO専門委員のSmitha Krishnamurthi医師が述べた。

ポーランドの第3相試験からの知見により、進行直腸がん患者に対するさらなる治療法の選択肢が示された。手術前に短期間(5日間)の放射線照射を行った後に地固め化学療法を行った患者では、手術前に5週間の化学放射線療法を行った患者と同等の治療結果が得られた。本研究は近日中にサンフランシスコで行われる2016年消化器がんシンポジウムにて発表される予定である。

「局所進行直腸がん患者に対する術前療法は大いに改善が必要である。本新規療法は同等の効果で副作用が少なく、患者にとってより利用しやすい治療法である。また、標準化学放射線療法と比べて費用が安価であるため、資源が限られている状況においては特に重要であると考えられる」とポーランドのワルシャワにあるMaria Sklodowska-Curie Memorial Cancer Center and Institute of Oncologyの消化器がん腫瘍内科部門長であり共著者のLucjan Wyrwicz医学博士は述べた。

化学放射線療法は、腫瘍を縮小し再発の可能性を減らすために術前に直腸がんに対して行われることが多い。化学放射線療法は米国や欧州の複数の国では標準治療とされている。この療法は、放射線治療を5週間以上行い、1週目と5週目に化学療法を併用する治療法である。本研究で検討した試験治療は、放射線治療を5日間行いその後7週間の間に化学療法を6日間(2日間3サイクル)行う治療法である。

局所進行直腸がん患者(cT3またはcT4)515人を本研究に登録した。患者を、化学放射線療法を行う群と試験治療(短期間の放射線照射)を行う群のいずれかに割り付けた。化学放射線療法群では5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリンおよびオキサリプラチンの化学療法と放射線療法を併用し、試験治療群では短期間の放射線照射後に同じ薬剤を用いてFOLFOX4療法を行った。5-FUと放射線療法の併用にオキサリプラチンを追加投与することは標準療法ではないと考えられ、5-FUと放射線療法の併用に比べて毒性が強いことが知られていることに留意すべきである。いずれの群の患者も放射線療法開始の約12週間後に手術を受けた。

各群で同程度の患者が放射線療法後に根治手術を受けることができた。急性毒性の発現率は化学放射線療法群の83%に比べて試験治療群では74%と低かった。放射線療法に伴う主な毒性として、直腸の炎症、下痢、膀胱の炎症および放射線照射による局所的な皮膚反応が挙げられる。

術後3年の時点で、無病生存率に有意な群間差は認められなかった(試験治療群53%、化学放射線療法群52%)。初回報告では全生存率の改善が示されている(試験治療群73%、化学放射線療法群63.5%)。「さらに長期の追跡調査を行い生存期間の延長が確認されれば、試験群の患者に対して行われた治療法が最終的には局所進行直腸がん患者に臨床で行われるようになる可能性がある」とWyrwicz博士は付け加えた。

著者らによれば、肝臓や肺のみに転移を認め全ての病変を切除できる可能性がある進行直腸がん患者にとって、短期放射線療法は特に有用な選択肢になると考えられる。より短期間の放射線治療を行うことで、こうした患者は転移病変をコントロールするためにより早い段階で化学療法が開始できるようになる。「本療法はMaria Sklodowska-Curie Memorial Cancer Centerの患者に対する治療戦略の一環として実施され、このまれな部分集団においても実現可能で有効な治療法であると考えられる」とWyrwicz博士は述べた。

本研究はKrzysztof Bujko教授率いるPolish Colorectal Study Groupによって実施され、Polish Ministry of Science and Higher Educationから資金提供を受けた。

翻訳担当者 青山真佐枝

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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