パニツムマブは化学療法開始後に進行したKRAS野生型転移性大腸がん患者の生存期間を改善

キャンサーコンサルタンツ

化学療法による治療中または治療後に病勢が悪化した、KRAS野生型遺伝子を有する転移性大腸がん患者を対象とした臨床試験で、パニツムマブ(ベクティビックス)が全生存期間を改善したことが明らかになった。この結果が得られた第3相試験は現在も継続中であるが、パニツムマブが本試験の主要評価項目である全生存期間を延長したことが研究者により公表された。

パニツムマブは上皮成長因子受容体(EGFR)というタンパク質に関与することにより、腫瘍細胞の生存や成長を阻害する分子標的薬である。EGFRの発現が認められ、フルオロピリミジン[fluoropyrimidine]、オキサリプラチン、イリノテカンを含む化学療法による治療中または治療後であるにも関わらず病勢が悪化した移転性大腸がん患者に対する治療薬として、パニツムマブは2006年に米国で最初に承認されている。転移性大腸がんの40%〜50%がKRAS遺伝子を有すると推定されているが、パニツムマブの効果が確認されたのは遺伝子の変異がみられないKRAS野生型のがん患者のみであった。

2014年に米国食品医薬品局(FDA)は、KRAS野生型遺伝子を有する転移性大腸がん患者のための一次治療として、パニツムマブをFOLFOX療法(ホリナートカルシウム+フルオロウラシル+オキサリプラチン)との併用で承認した。

今回の第3相試験において、パニツムマブ+最良の支持療法(BSC)併用群とBSC単独群を比較した結果、パニツムマブ併用群は有効性の主要評価項目である全生存期間を有意に延長した。また、副次的評価項目である無増悪生存期間においても延長が認められた。

パニツムマブによる治療において、認知されていない新たな副作用の発現は認められなかった。多く認められた副作用(患者のうち30%以上で発現)は、皮膚障害および血中マグネシウム値の低下(低マグネシウム血症)であった。

パニツムマブを製造するバイオ医薬品会社Amgen社は本試験の全結果について、まもなく開催される学会で発表し、その後に論文も発表する予定である。

Amgen社研究開発Executive Vice PresidentであるSean E. Harper医学博士は、「パニツムマブが全生存期間を延長したという結果は、転移性大腸がんの治療法の選択において、KRASやRASといったバイオマーカーの高い重要性を位置づけるものとなった」と述べている。

参考文献:
Results From Phase 3 Trial Show Vectibix® (Panitumumab) Improves Overall Survival In Chemorefractory Wild-Type KRAS Metastatic Colorectal Cancer Versus Best Supportive Care [press release]. Amgen website. Available at: https://www.amgen.com/media/media_pr_detail.jsp?year=2015&releaseID=2060682. Accessed August 3, 2015.


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翻訳担当者 山口真奈美

監修 畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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