FOLFOXIRI+ベバシズマブの併用により、進行性大腸がんの長期転帰が改善

ASCO(米国臨床腫瘍学会)の見解

「患者の診断後の5年生存率を2倍にすることは重要かつ魅力的である。3種の化学療法剤併用に耐えられる患者に対しては、FOLFOXIRI+ベバシズマブの併用は重要な治療の進歩である」と本日の報道発表の議長であり、ASCO専門委員のSmitha S. Krishnamurthi医師が述べた。

転移性大腸がん患者を対象としたイタリアの第3相TRIBE試験の最新結果から、FOLFOXIRIとベバシズマブ併用は標準療法であるFOLFIRIとベバシズマブ併用より優れていることが示された。FOLFIRI+ベバシズマブ併用と比較して、FOLFOXIRI+ベバシズマブを用いた治療は約4カ月生存期間を延長させ、5年生存率を2倍に高めた。本研究は、転移性大腸がん患者の一次療法において、FOLFOXIRI単独療法がFOLFIRI単独療法より生存期間を改善する結果が示された先行の小規模第3相試験(GONO)の知見を支持するものである。本研究は近日中にサンフランシスコで行われる2015年消化器がんシンポジウムにて発表される予定である。

「この新たな治療アプローチにより生存期間の大幅な改善が得られ、それは予後不良の患者においてもそうである。これは本疾患の治療における目覚しい前進である。本結果により、大腸がん以外は健康な患者に対する最先端の治療選択肢として、FOLFOXIRIとベバシズマブの併用を選択する医師が増えると考えている」とイタリア、ピサのTuscan Tumor Instituteの腫瘍内科医であり、筆頭著者のChiara Cremolini医師は述べた。

大腸がんの一次療法に最も広く使用されている化学療法はFOLFOX(フォリン酸(ロイコボリン)、フルオロウラシル(5-FU)、オキサリプラチン)とFOLFIRI(フォリン酸、フルオロウラシル、イリノテカン)である。FOLFOXIRIはFOLFIRIに含まれる2種の細胞障害性薬剤に加えてオキサリプラチンを含んでいる。

本研究では、転移性大腸がん患者508人がFOLFIRI+ベバシズマブまたはFOLFOXIRI+ベバシズマブからなる一次(導入)療法に無作為に割り付けられた。導入療法が6カ月(12サイクル)まで予定され、その後、より強度の低い化学療法である5-FUとベバシズマブによる維持療法を病状が進行するまで実施した。患者の約80%において、がんは肝臓に限定されておらず、その多くは手術が適用でなかった。導入療法により腫瘍が縮小した後は、両群で同等数の患者が手術(根治的切除)を受けることが可能であった(FOLFOXIRI+ベバシズマブ群:15%、FOLFIRI+ベバシズマブ群:12%)。

患者の追跡期間の中央値は48.1カ月であった。FOLFOXIRI+ベバシズマブ群ではFOLFIRI+ベバシズマブ群より全生存期間の中央値が有意に改善されていた(29.8カ月 vs. 25.8カ月)。FOLFOXIRI群の患者の4人に1人(24.9%)が治療開始後から5年生存していると推定された一方で、FOLFIRI群では8人に1人(12.4%)であった。

FOLFIRI と比較してFOLFOXIRIは下痢および血球減少のリスクが増加したが、重篤な有害事象は増加しなかった。Cremolini医師は、多くの患者がFOLFOXIRIに耐えられるが、一方でこれは強い療法であり、すべての患者、例えば、76歳以上の患者や健康状態がよくない70~75歳の患者などには実施されるべきではないと指摘している。

今回の試験に続く第3相TRIBE-2試験がGONOグループによりイタリアで開始される予定である。654人の患者がFOLFOXIRI+ベバシズマブによる一次療法後、病状進行時にFOLFOXIRI+ベバシズマブを再導入する群、あるいは、病状進行時にFOLFOX+ベバシズマブによる療法後FOLFIRI+ベバシズマブを再導入する群に無作為に割り付けられる。

MACBETHおよびMOMAと名付けられた進行中の第2相試験において、一次療法の期間を短縮し(6カ月から4カ月)、維持療法の有効性を改善するための治療戦略が調査されている。MACBETH試験ではベバシズマブと異なる作用機序をもつ標的治療薬のセツキシマブとFOLFOXIRIの併用が調査されている。

本研究はGruppo Oncologico Nord Ovest(GONO)およびARCO Foundationから支援を受けた。また、F. Hoffmann–La Roche社から研究助成金を受けた。

翻訳担当者 下野龍太郎

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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