運動で大腸がんサバイバーの生存期間を延長

ダナファーバーがん研究所が共同で主導した研究により、運動が結腸がん(直腸がんを除く大腸がん)サバイバーの生存期間を延ばし、がんを患っていない人々と同等の生存期間に近づく可能性があることが明らかになった。

ダナファーバーがん研究所の新しい研究は、ステージ3結腸がん患者が治療後に定期的な運動を行うことで、年齢や性別が一致するがんを患っていない人々との生存率の差が縮小、または消失する可能性があることを示唆した。結腸がんは、世界のがんによる死亡の主要な原因の一つである。結腸がん患者は、年齢や性別などの背景が一致するがんを患っていない人々と比べて、早期死亡のリスクが高いとされている。

「この研究は、運動が患者の長期生存に重要な影響を与える可能性があることを示唆しています」と本論文の最終著者である、Jeffrey Meyerhardt医師、公衆衛生学修士は言う。同氏は、ダナファーバーがん研究所のChief Clinical Research Officerであり、Colon and Rectal Cancer Centerの共同ディレクターである。「治療後に定期的に運動することを勧めます」

本研究はCANCER誌(2025年2月24日号)に掲載された。

これまでの研究において、治療後に運動量の多い患者の生存期間が延長することが示唆されていた。本研究では、米国国立がん研究所(NCI) の支援を受けて実施された、ステージ3結腸がん患者を対象とした2つのCALGB(Cancer and Leukemia Group B)臨床試験(現在はAlliance for Clinical Trials in Oncologyの一部)のデータを分析した。CALGB 89803およびCALGB 80702の両試験では、患者は手術と化学療法を受け、任意で治療中および治療後の生活習慣に関する情報提供を行う選択肢が提供された。

2つの試験に参加した患者のうち、2,875人の患者が運動量を報告した。CALGB 89803およびCALGB 80702試験において、追跡期間を経て各全生存率が算出された。各追跡期間中央値は6年と5.9年であった。報告された運動量は1週間当たりの代謝当量時間(MET-hours)に換算された。Meyerhardt医師によれば、ほぼ毎日1時間程度歩く人は、1週間で約18MET時間の運動をしていることになるという。

研究者らは、治療後3年間生存した患者について、運動量が多い患者(週に18MET時間以上)の全生存率が、運動量が少ない患者(週に3MET時間未満)よりも、年齢・性別などの背景が一致するがんを患っていない人々の全生存率に近いことを明らかにした。例えば、CALGB 89803試験のデータ解析によると、治療後3年生存した患者のうち、運動量が少ない患者の全生存率が、背景が一致するがんを患っていない人々に比べて17.1%低かったのに対し、運動量が多い患者は3.5%低かった。同様に、CALGB 80702試験のデータ解析によると、運動量が少ない患者の全生存率が、背景が一致するがんを患っていない人々に比べて10.8%低かったのに対し、運動量が多い患者は4.4%低かった。

両試験において、運動量の増加は生存率の改善と関連しており、その効果は診断時の年齢に関係なく見られた。「運動を全くしないよりは、少しでも運動をする方がいいのです」とMeyerhardt医師は言う。「1時間の運動が難しければ、10分でも20分でもいいのです」

2つの試験のデータを統合した解析では、研究者らは3年後に再発なく生存していた1,908人の患者に焦点を当てた。運動量が少ない患者の全生存率が、背景が一致するがんを患っていない人々に比べて3.1%低かったのに対し、運動量が多い患者は2.9%高かった。

同様に、がんが3年以内に再発した患者においても、運動による全生存率の差の縮小が確認された。ステージ3の結腸がんでは、ほとんどの再発は診断から2、3年以内に起こる。このような場合、治療は非常に困難になる。運動量が少ないがん再発患者の全生存率が、背景が一致するがんを患っていない人々に比べて50.5%低かったのに対し、運動量が多いがん再発患者は33.2%低かった。

「再発があっても、運動量の多い患者の全生存率は改善していました」とMeyerhardt医師は述べた。「再発がなかった運動量の多い患者の全生存率は、年齢・性別が一致するがんを患っていない人々に比べて高かったのです」と付け加えた。

資金提供情報は、原文を参照。

  • 監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院)
  • 記事担当者 為石 万里子
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  • 原文掲載日 2025/03/28

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