大腸がん、膵臓がんに特定の遺伝子変異がKRAS G12C阻害剤の一次耐性に寄与
フィラデルフィア―KRAS G12C変異を伴う大腸がんと膵管腺がんは、KRAS G12C阻害剤の投与歴がなくとも、KRAS G12C阻害剤への耐性に関連し得るKRAS G12C以外の遺伝子変異を伴う場合があると、米国がん学会の学術誌Clinical Cancer Research誌に掲載された試験結果から明らかになった。
「KRAS経路は、細胞の成長、増殖、分化、生存を制御することで、細胞生物学において重要な役割を果たしています」と、本試験の主任著者であり、メイヨー・クリニック総合がんセンターの腫瘍内科医であるHao Xie医師(医学博士)は述べた。「KRASシグナル伝達は正常細胞では厳密に制御されていますが、KRAS G12C変異など、シグナル伝達が常に活発になる変異は、がんの進行につながる可能性があります。このようなKRAS変異は、多くの種類のがんで主な原因となっており、予後不良や化学療法抵抗性にも関連しています」。
Xie医師によると、KRAS G12C変異は大腸がん症例全体の約3%、膵臓腺がん症例の1%~2%にみられる。
ソトラシブ(販売名:ルマクラス)やadagrasub[アダグラシブ](販売名:Krazati[クラザティ])などのKRAS G12C阻害剤は、この変異を持つがん患者の一部には有効であったが、多くの患者のがんは、KRAS G12C阻害剤の投与歴がなくとも治療に抵抗性を示した。Xie医師のチームは、4つの異なる患者群から合計14,344人の大腸がん患者と5,438人の膵管腺がん患者の血中循環腫瘍DNAデータを分析することにより、これらのがんにおけるKRAS G12C阻害剤に対する一次抵抗性の原因となり得るKRAS G12Cと併存する遺伝子変異を特定しようとした。
研究者らは、がんにKRAS G12C変異がある患者において、全国大腸がん患者群の46.5%、全国膵管腺がん患者群の16.4%、メイヨー・クリニック大腸がん患者群の53.8%、メイヨー・クリニック膵管腺がん患者群の36.4%で耐性の可能性のある遺伝子変異がKRAS G12Cと併存していることを特定した。すべてのグループで最も多くみられた共変異は、G12C以外のKRAS変異であり、すべてのグループで少なくとも患者の35.4%のがんに観察された。KRAS G12C変異大腸がん患者では、KRAS以外にも、NRAS、BRAF、MAP2K1、EGFRの点変異と増幅が最も多く見られ、MYC増幅は膵臓がん患者の両コホートでみられた。
最も顕著だったものとしては、膵臓がん患者の全生存期間の中央値が、KRAS G12C変異と耐性に関連する共変異(G12C以外のKRAS変異を含む)を有する患者では4カ月であったのに対し、KRAS G12C変異はあるがその他の共変異がない患者では22カ月であったことである。KRAS G12C変異がない膵臓がん患者の全生存期間の中央値は25カ月であった。
「予後不良に関連するこれらのその他の共変異は、細胞適応および主要な耐性機序として機能し、 KRAS G12C阻害剤単独療法の有効性が限られていることの根拠となる可能性があります」とXie医師は述べた。「これらの存在は、大腸がんおよび膵臓がんにおける腫瘍の異質性のレベルが高いことも示しており、共耐性変異に対するKRAS G12C変異を伴う腫瘍のシーケンシングの重要性を強調しています」。
Xie医師はさらに、「KRAS G12C阻害剤は非常に有望ですが、これらのタイプのがんに対する万能薬ではありません。患者とその医師は、現在の限界を認識する必要があります」と述べた。
本試験の限界は、そのレトロスペクティブな性質と、腫瘍の遺伝子データを得た経緯が液体生検であることが挙げられる。液体生検には、腫瘍の異質性を反映するという利点があるが、腫瘍DNAの流出によって制限される可能性がある。
研究資金提供元の詳細については、原文を参照のこと。
- 監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院)
- 記事担当者 仲里芳子
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- 原文掲載日 2025/03/03
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