FOLFIRI+ラムシルマブによる二次治療で、進行性大腸癌患者の病状進行が遅延し生存期間が延長

米国臨床腫瘍学会(ASCO)の見解:
「胃癌や肺癌への有効性が実証されている血管新生阻害剤のラムシルマブ[ramucirumab]が、転移性大腸癌に有効であることが今回明らかになった。現在、患者の大腸癌が進行した場合、FOLFIRI二次化学療法に対してベバシズマブとの併用の継続、あるいはアフリベルセプトかラムシルマブとの併用に変更することができる。一次治療やその他の治療におけるラムシルマブの大腸癌への有効性を調べるためにはさらなる研究が必要である」と本日の報道発表の議長でありASCO専門委員のSmitha S. Krishnamurthi医師が述べた。

一次治療時/後に病状が進行した進行性大腸癌患者1072人が参加した国際第3相臨床試験からの新たな知見により、FOLFIRI化学療法と標的治療薬のラムシルマブの併用はFOLFIRI単独の標準療法より生存期間を延長させること示された。ラムシルマブを併用した患者はFOLFIRI+プラセボの治療を受けた患者と比べて、平均して6週間生存期間が延長した。本知見から、ベバシズマブを用いた一次治療後に病状が進行した患者において、進行性大腸癌に対する新しい二次治療戦略、特に標準療法と血管新生阻害薬を併用するという概念が実証された。本研究は近日中にサンフランシスコで行われる2015年消化器癌シンポジウムにて発表される予定である。

「進行性大腸癌は不治の病であり、一次治療が効かなくなった後は特に治療が難しい。われわれの研究には成長が早い腫瘍をもつ患者も含まれているので、本知見は臨床現場で一般的に直面する患者とも関連する。二次治療において標準化学療法に対しさらに有用性を付与する上乗せ効果がある新たな安全な治療選択肢ができたことはとても心強い」とスペイン、バルセロナのVall d’Hebron Institute of Oncologyのディレクターであり、筆頭著者のJosep Tabernero医師は述べた。

ラムシルマブは血管新生阻害剤として知られる薬剤に属する。本薬剤は腫瘍へ到達する新しい血管の成長を阻害し、基本的に栄養を欠乏させることにより効果を示す。本薬剤は現在、FDAから胃癌と非小細胞肺癌の治療でのみ承認されているが、他のさまざまな癌でも研究が進められている。

オキサリプラチン+フルオロピリミジンからなる化学療法とベバシズマブを用いた初期治療(一次治療)時/後に病状が進行した転移性大腸癌患者を、FOLFIRI+ラムシルマブ群あるいはFOLFIRI+プラセボ群にそれぞれ536人ずつ無作為に割り付けた。FOLFIRI(フォリン酸、フルオロウラシルとイリノテカン)は大腸癌の標準化学療法である。

腫瘍縮小率は2群で同等であったが(ラムシルマブ群13.4%、プラセボ群12.5%)、ラムシルマブ群では無増悪生存期間および全生存期間が統計学的に有意に改善された(全生存期間は本研究の主要な評価項目)。病状進行までの期間の中央値はラムシルマブ群で5.7カ月、プラセボ群で4.5カ月であった。全生存期間の中央値はラムシルマブ群で13.3カ月、プラセボ群で11.7カ月であった。

本研究によりラムシルマブがFOLFIRI化学療法にさらなる有効性を付与することが明確に示されたが、臨床試験による正式な調査結果を得るまでは本知見を他の化学療法にまで外挿するべきではないとTabernero医師は述べた。EGFR阻害剤であるセツキシマブを用いた一次治療後のラムシルマブの有益性を調査するためにはさらなる研究も必要である。

進行性大腸癌の二次治療として有効性を示す他の血管新生阻害剤にはベバシズマブとアフリベルセプトがあり、レゴラフェニブは難治性大腸癌に有効性を示す。ベバシズマブとアフリベルセプトは化学療法との併用使用でFDAに承認されている一方、レゴラフェニブは治療歴のある転移性大腸癌患者への単独療法の適用で承認されている。

本研究はEli Lilly and Company社から資金提供を受けた。

翻訳担当者 下野龍太郎

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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